第25話 練馬ふ蓮's チャンネル

「みなさん、こんばんわー!練馬ふ蓮's チャンネルへようこそ!練馬支部所属Aランク探索者の蓮です!」


「どうも、皆さんこんばんわ。動画に引き続きゲストで来ました荒鷹です。」


 コメントが早速流れはじめる。動画のコメント欄やSNSで事前に告知していたこともあり、開始直後からそれなりに人が集まっている。ちなみに撮影場所は蓮のマンションだ。


「今日はですね、前回投稿した動画でチラホラと『何があったかわかんない!』ってコメントがあったんで、元動画をスロー再生しながら解説する配信をしていきます!」


「これについてはアレだね、俺達が悪かったね。」


 コメント欄でも「全く見えんかった」、「解説助かる~」等のちょこちょことコメントに反応しながら荒鷹が答える。


「あれはさ編集はプロの方にお任せしたんだよ、だから知識も技術もあるし、構成もしっかりしてて、動画として見れるようにしてくれたんだけど。

 いかんせん元ネタの撮影する側と発注する側の俺達に、なんも知識がなくてテキトーに撮って、テキトーに発注して、テキトーにオッケーって言っちゃったもんだからあんな風になりました、大変申し訳ございませんでした!」


 二人で揃って画面の前で頭を下げる。その中で「(^q^)コイツはいないの?」という質問に蓮が答える。


「あ~、もともと(^q^)コイツは本当に写る予定がなくて、速攻でネタが無くなったから、気を利かせてもらって出ただけなんだわ。

 一応、配信に参加するかって声かけたけど、断られたんでいねぇ。」


「まあ、アレで本当に何とか間が持ったよな。」


「あの後の肉祭りもウケたしなー。」


 コメント欄も「美味しそうだったー」「馬肉の食べれる店探しました」「生肉平気でしたか?」等と様々なコメントが流れていく。


「それじゃ、本題に移ってみようか。まずは荒鷹のからでいい?」


「おう、いいぞ。」


「じゃあ、後ろから撮ってたヤツから行くなー、一応どれも240fpsで撮影してたはず、出来てなきゃ(^q^)コイツが悪いってことで、どうかひとつ宜しく」


 荒鷹が汗血奮馬と立ち会ってスキルを発動させたところから、撮影された動画がスロー再生されていく。映像の方では荒鷹の姿が消え数フレーム後に馬の横に現れて、刀を抜き放つところが写っていた。


「へぇ~、自分じゃ意識したこと無いけど、こんなふうに見えるもんなんだな。」


 コメントでも「速すぎへん?」「なんかスキル使ってるの?」と色々予想が出る。


「荒鷹これ、言っていいの?」


「隠すぐらいだったら動画で使ってないから構わんよ、<縮地ショートジャンプ>を使ってる。」


 一気にコメント欄が盛り上がる。


「へぇ、こんなふうにうつるんだ。」


「なんで間のフレームに写ってないんだろうなぁ」


「俺にもわからん」


 荒鷹や蓮も初めて見るだけに興味深げな様子に、コメント欄もノリノリだ。

 そんなこんなで別カットだったり、アクションカメラ視点を流していると部屋のインターフォンが鳴る。


「誰か来たみたいだわ。」


「なんか頼んでたっけ?」


「いや、記憶にねぇな」


 そういいながら蓮がドアフォンに向かうと、2~3分ほどして両手にビニール袋を持って戻って来る。


(^q^)コイツが差し入れ持って来てくれた。」


「お、マジか。すげぇいっぱい入ってんじゃん。」


 二人がビニール袋を漁り、それぞれ今日はノンアルではない金と銀の缶を取り出すとカメラの前に差し出しながらプルタブを開けた。


「「乾杯!」」


 コメント欄の方では一緒に乾杯する者もいるが、誠司はどうなったか気にする者もいた。


(^q^)コイツは帰ったよ。差し入れ持ってきただけだってよ。」


「もともと出ないって話だからな、またなんか企画を考えれば機会はあるだろ。」


 と配信に出ないことを伝え、それからは酒を片手にのんびりと動画解説を再開する二人。例えば蓮の動画をスロー再生すれば。


「お前バッチリ映ってんじゃん。」


「うるせー、俺のは<加速アクセラレーション>だからいいんだよ!」


「馬も使ってるから迫力あるよな。」


 動画を見ながらコメントに返していく、例えば「馬をカチ上げたのはスキルか?」「刀は使わないのか」とあれば


「アレは普通に力と技、馬相手ぐらいだったら力押しで余裕だし」


「俺は雑に使いたいから刀は無理、荒鷹はよくやるぜ」

「お前の片手剣カトラス、斧かよってぐらい厚いもんな」


 と武器談義で盛り上がり、誠司の動画に移っては


(^q^)コイツの<縮地ショートジャンプ>の距離が意味不明なんだけど。」


 同じ<縮地>を使う荒鷹が呆れて言う。


軽戦士系おれたちの場合、移動系スキルって接敵だったり、緊急離脱のために使って、あとは自分で間合いの出し入れしながら戦うわけじゃん」


「まあ、そうだな。」


「アイツ基本ボッチだし斥候系で一撃離脱ってなると、これくらい必要なのかもな。」


「まあ、そうだな。あいつボッチだもんな」


 等と、好き放題言ってコメントで同情されたりもした。



 一通り戦闘動画を見終わりまったりとする二人とコメント欄。


「んで、どうする。焼き肉の方も見てく?」

「リクエストが有ればでいいんじゃね、見たいとこや質問があればコメント宜しく」


 幾つかのリクエストや質問がコメントで流れるが、その中の一つをピックアップした「解体はスキルでやったんですか?」だ。


「まず解体について、アレはスキルじゃなくて純粋な技能だ。手順さえ覚えれば誰にでも出来る。」


「まあ、恐ろしく使い道がないけどな。日帰りならそのまま持ち帰ればいいし、そもそも解体バラす時間がもったいないし、下手な奴がやれば肉も皮も駄目になるからドロップのが安定する。その時間でさっさと次を探したほうが余程儲かる。」


「キャンプにしたって、一日探索して、戦ってクタクタになって、さて今から獲物を解体だ!なんてやりたくねぇし、他のメンバーにもやらせたくねぇ。だったらドロップ確定させて、肉が出れば食っちまったほうがストレスがない」


「ちなみに俺は覚えてねぇ」「俺もだ」


 コメント欄でもなんとなく残念な雰囲気が流れるが、じゃあ何で誠司が覚えているのかと問われると。


「俺達が知るか。」

「案外、男の浪漫とか言って覚えたんじゃないか。」

「ありそ~」


 と、笑い。コメントで一番美味かった肉はと聞かれると


「俺はやっぱ、久々の生レバーが美味かったわ」

「レバーも良かったけど、俺はハツ刺しのクセの無さと歯応えが良かったなぁ」


 と答えて、生肉食って大丈夫?みたいなコメントには


「まあ、俺達は鍛えてるから。あと普段は必ず火を通して食ってるからな、お前らはいきなり試そうとすんなよ」

「ダンジョン内だと最悪ポーション飲めばいいみたいな所もあるしな」

「みんなはちゃんとしたお店で食ってくれ」


 と注意し、他のゲストは出る予定はあるかと言われると。


「あ~、ウチのメンバーが動画の焼き肉見て、「美味そうなもん独り占めするな」って言われて蹴られたから、あるかも。」

「俺んとこも言われた。「今度は呼べよ」って。」


 などと愚痴をいい、その後も適当にコメントに答えていく、気がつけば二人の周りに差し入れで持ってきたビールやチューハイの缶が並び、袋の中は空っぽになっていた。


「お、もうなくなっちまったか。それじゃあ今日はお開きにするか。」

「何だかんだ、いい時間だしな。」



「それじゃ、みんな今日は見に来てくれてありがとう。次も楽しみにしてくれ!」


「「バイバーイ!!」」


こうして蓮達の初めての配信が終了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る