第23話 みんなでやれること
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ダンジョン部部長 駒沢灯里
今日は色々学ぶことが多かった、私は家への帰り道を歩きながらそう思った。
ダンジョン部に入って最初の1年は武器の先生に教わりながら先輩たちと一緒に無心に武器を振るう毎日だった。
2年になってダンジョンへ入れるようになると、いろいろな魔物の攻略動画を見て自分たちに出来そうなことを広げながら、先輩の後について行く日々だった。
3年になった時に私達はダンジョンに入れなくなった。なんとか手段を模索する中、先生たちとの交渉で小山さんの引率があればダンジョンに入ることへの許可を得ることが出来た。
出だしでちょっとしたトラブルはあったものの、久々のダンジョンに私もみんなもやる気を出すなか、小山さんの一層を探索するという言葉はちょっとガッカリした。
事前に色々話しながら、みんなで準備を進めてきたのに一層なのかと。もっと先に進むんじゃなかったのかと。
でも、小山さんが見ているダンジョンの景色と、私達が見ている景色の違いを思い知らされた。
魔物を狩って核石を得る、それがダンジョンだと思ってたし、それが探索者だと思ってた。実際そういった探索者の派手な戦闘動画が多くウケている。
勿論それだけが全てじゃないけど、吹けば飛ぶような立場の
その手段を選んだことを間違っていたとは今でも思っていない、ただ私達の視野が狭かった。
ダンジョンは私達が思っていた以上に経験の宝庫だった。小山さんはあまり難しいことは言わない。こういうやり方でやってみろ。コレが採れれば売れる。
もちろんコツを教えてくれといえば教えてくれて、最初からうまくはいかないけど、失敗しても「あとは慣れの問題だ」そう言ってたいして気にしない。そうやって出来ることを少しずつ増やしていく一日だった。
それに小山さんが言っていた、スキルは色んな経験の中から生まれると。きっとこういうことを積み重ねていけば、私達にもスキルが生まれるかもしれない。
私達に知名度が必要だけど、私達にインフルエンサーのような派手だったり、攻略解説みたいな配信はできない。
でも今日みたいにみんなが笑っているような配信なら出来る。そういう私達を知ってほしいって思っていて、それをいいなって思ってくれる子達が集まってくれるような部活に私はしたい。
ダンジョンを出て、買い取りブースへ行く。今日の成果をみんなの分をまとめて出すと思った以上にお金になった、みんなで分けてもちょっとしたお小遣いになるぐらいだ。
小山さんがここでウサギ皮を何枚か買い戻しを指示した。なんでだろって思ったら「ドロップの皮は鞣しがいらないからな、そのまま使える。ポーチや弾のケースを作ってみるといい、外でも出来る。」といいながら昔使っていたというレザークラフトの工具一式を渡してくれた。
「なんでこんなもの持ってるんですか?」
「昔、二十歳前ぐらいにオンラインゲームにハマった時期があってな、気合い入りすぎて自作でコスプレまでしたんだ。その時に揃えた。あと、探索者始めて食えない頃は
って私の疑問に、恥ずかしそうにしながら答えてくれた。私達にとって小山さんは大人で何でも知ってて頼りになるおじさん。
そんな人にも若い頃があって、探索者でうまく行っていない時があった。当然といえば当然かもしれないけど恥ずかしそうにしているおじさんがちょっと可笑しかった。
後日、みんなでレザークラフトの動画を見て勉強してから、自分たちの小物を作るところを動画を配信したところ、結構いいねをもらえた。それでダンジョンの中でも外でも、もっとやれることはあるって思えた。
1年生の子はダンジョンは入れない、そんな制限を受ける中で、私達がダンジョンで培ったものを次の子にバトンを渡さないといけない。武器を振るだけがダンジョン部じゃない。もっともっと多くのものを残せるようになりたい、そう思える一日だった。
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●用語解説 買い取り編
・買い取り…購買が査定した金額で協会が買い取り、探索者に支払われる。買い取りの中にも詳細査定や、オークションと言ったものがあり、後日支払われる場合もある。
・買い戻し…購買で査定された金額と同額の金額で探索者が購入した処理が行われ、受付で受け取ることになる。特徴としては外部への持ち出しが可能になる点。一般的には肉や皮を始めとした素材・食品等を探索者自身で利用したい場合に行われる。
・差し戻し…買い取りブース内で探索者に手に戻ってくる。一般的には武器防具関連や外部への持ち出し禁止なアイテムに対して、探索者自身が手元に置くことを選択した場合に行われることが多い。
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