第18話 ネリマの休日
先日、誠司と蓮と荒鷹の三人で動画を撮る話になったが、実のところアレから何も進んでいない。丁度あの後2チームとも練馬ダンジョンに潜ることになったためだ。
まあ、急ぐものでもないし良いかと誠司は思っている、何しろ済まさなきゃいけないことは他にもある。例えばそろそろ武器をメンテナンスをしなければいけないことだ。
誠司は、そういえば
その後、部長の
誠司は呆れながらも武器のメンテに行くこと、その前にランチに連れて行くことを書き込む、後は灯里が上手くまとめてくれるだろう。
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こどもの日 練馬駅前 昼前
誠司が練馬駅前に着くと、ダンジョン部全員が揃っていた。
「早いな、待たせたか?」
「いいえ」「待った~」「おそ~い」「時間通りです」「ジャージじゃない」
部員達から思い思いの言葉が出てくるが、誠司は真面目に取り合っても仕方ないとスルーして、予約していた店へ先導する。
「今日はジャージじゃないんですね。」
「人と会うのが決まっていれば、それぐらいは気を使うわ。」
「それにしても、オジサン細マッチョー」
「ムキムキ」
「体が資本の
今日の誠司はグレーの春ニットにVネックシャツ、ジーンズだが、ニットがスリムな作りだったため体の線が出ている。それが女子高生達にはウケるらしい、腕の筋肉をさわったり、突いたりしてくる。
そうこうしていればすぐに店につく、外観は以前の店と同じタイル柄だが、あちらが風呂場のタイルなら、こちらはモザイク柄でおしゃれ度はぜんぜん違う。その時点で部員達の反応も違う。
扉を開ければ店員の「いらっしゃいませ」という声が響く。誠司は予約していたことを告げ、席へ通される。
「コースで頼んであるが、食べたいものがあったら好きに頼んで良いぞ。あと店には伝えてあるが当然酒は禁止だからな。」
「それはわかってますが、オジサンも飲まないんですか?」
「この後、武器をメンテに出すからな。酒のんで街中歩くわけにもいかんだろ。」
「まあ、そうですね。」
隣に座った真紀恵が話しかけてくる、誠司は今日は絡んでくるなと思いつつ、酒のんだ状態で武器持って街なかを歩けないと返す。
厳密に言えば現行の銃刀法でも、探索者ガイドラインでも装備を所持した状態で飲酒をすることに制限はない。ただモラルとしてなるべく慎もうという空気はある。
あの
そうこうしているうちに前菜が運ばれてくる。前回とはまた違った様子で盛り上がる部員達を見ながらオッサンは炭酸水の入ったグラスを傾ける。
コースが進んでいくと、アレやコレやと食べたいものが出てくるらしい。みんなでメニューを開きながらワイワイ楽しんでいる。
「ねぇねぇ、このトリッパってなに?」
「牛の2番目の胃のことですよ、それと豆のトマト煮込みです。」
「おいしいの?」
「柔らかいのに歯ごたえがあって私は好きですね。」
「がんばるぞー」「ガンバルゾー」
「ガルバンゾですよ」
料理を取り分けたりメニューのアレコレに答える真紀恵、誠司は追加で頼んだピクルスを齧りながら隣りから眺めている。
「意外と面倒見良いんだな。」
「それは心外です、私はなるべく良くあろうとしてるつもりです。」
誠司の言葉に、真紀恵が笑いながら答える。その所作はどう見てもいいとこのお嬢さんだ、なんでダンジョン部にいるのかと疑問に思う。
「なあ、なんでダンジョンに潜るんだ?」
「…今貴方がそれを聞きますか?」
困ったような顔をする真紀恵に、誠司も今の質問は流石に不躾だったと反省する。
「そうだな、酒が飲めるようになったら聞かせてくれ。」
「その時を楽しみにさせていただきますね。」
成人年齢の引き下げや、探索者拡大目的という建前で、探索者に金を落させる目的で飲酒可能年齢も18歳に引き下げられた。流石に昔ほど無理に飲ますことは無くなったが、探索者の間では未だに飲みニケーションは健在だ。
お互いその時を楽しみにさせてもらうところで会話が終わる。
「真紀恵ー!そっちのパスタ取ってちょうだい。」
「はいはい。」
真紀恵は小皿にパスタを部員に取って渡す。誠司がグラスの中身を飲み干すと、すかさず真紀恵が聞いてくる。
「おかわりいかがですか。」
「…ジンジャーエル頼む。」
将来コイツの旦那になるやつは尻に敷かれるだろうな、そんな予感がする。
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誠司と部員達は最後に思い思いのドルチェを楽しんで店を出る。
「「「ごちそうさまでしたー!」」」
「おう。今から支部へ行って武器を取りに行くぞ。」
来た道を戻りながら練馬支部へ向かう。
「そういや、お前らの装備のメンテはどうしてんだ?」
先程からずっと隣りにいる真紀恵に聞いてみる。
「あの、ある程度までの装備は支部のコンビニでメンテしてくれますし、学割もありますのでそちらを利用してます。」
「マジかよ、知らなかった。」
衝撃の事実である、天堂に偉そうなことを言っておきながらオッサンも何も知らなかった。
まあ、それでも良いのだ、これから学院の先生方が学びフォローできる体制を作れば自分には関係のない話になるのだからと言い訳する。
「装備取ってくるから、ここで待っててくれ。」
練馬支部に入ると、受付の反対側の壁際に部員達を待たせて、
14時過ぎの受付前はダンジョンへ出入りする人が少なく閑散としている。
「武器のメンテをするから持ち出し申請を頼む。」
探索者カードを差し出すが、湊はむくれて受け取らない。
「む~、わたし小山さんのジャージ以外の姿、初めて見ました。」
「今日は仕事じゃねぇし。」
「休みの日はジャージじゃないんですね!」
「いや、ジャージだが。」
「どっちなんですかー!?」
「休みの日にアポがあったから、ジャージじゃねぇだけだ。」
湊が仕方無しにカードを受け取って、受付を進める。
「私との飲み会はジャージだったくせに、やっぱり女子高生好きなんですか!?」
「人聞きの悪いことを言うな、アポ無しで飲み行くのに服装なんか気を使えるか。」
ただでさえ練馬支部に入った時から
「じゃあ、今度約束したらジャージじゃない格好で飲みに行ってくれます?」
「まあ、それぐらいは普通にやってやる。」
小首をかしげながら聞いてくる湊に、誠司はそれぐらいならと約束する。
「絶対ですよ!」
「ああ、だたサシ飲みは勘弁してくれ。」
誠司としては前回のようなリスクは最初から避けておくべきだと判断して、介護要員を最初から用意する方針にした。
「わかりました!受付完了です。持ち出し申請は専用窓口からお願いします。」
「あいよ。」
誠司はセキュリティゲートを通って、装備を回収し持ち出し専用窓口へ行く。そこで手続きをしてゲートの外で受け取れば完了だ。
意外かもしれないが武器防具関連は基本的に手続きは、持ち出し物品、持ち出し目的、持ち出し先を申請して不備がなければ、装備を封印したうえで割と簡単に持ち出すことが可能である。(ただし一部物品や、持ち出し禁止物は除く)
これはメンテナンスや遠征などで各支部から頻繁に持ち出されることがあるからだ、ただし装備運搬中の探索者には職務質問への対応の努力義務が設けられている。
また、支部間の配達サービス(有料)も存在する。
誠司は武器の入った袋を担いで、部員達のところに戻る。
「オジサーン、湊さんとはいつもあんなんなの?」
「ふふ、一人で遊びに行ったことが奥さんにバレた旦那様みたいで、面白かったですよ。」
「勘弁してくれ」
絵美や真紀恵をはじめ部員達からからかわれながら、誠司は練馬支部を後にする。
後にこの時のことを見ていた探索者から「オッサンJKハーレム事件」と呼ばれるようになることをまだ誰も知らない。
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メニューについてはVin● e Lavo 練馬店様のものを参考にさせていただきました。
ちなみに今回のタイトルはネ↑リ↓マ→と発音してください
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