第12話 4月1日 裏の裏
朝7時半、身支度が完了した頃にチャイムがなる。玄関を開けると同期となる
「矢野森さん、おはようございます。」
「小野鳩さん、おはようございます。」
探索者組合練馬支部に就職した私達は社宅を出て、職場へ向かう。初出社に私は少しドキドキしている。職場までは徒歩5分すごく近い。
「矢野森さんって出身はどちらですか?」
「あ、山梨の甲斐市です、甲府の隣にあるんです。でも大学はこっちで…。」
「そうなんですか、私は埼玉です。」
「埼玉なら大宮とか戸田とかもあったんじゃぁ。」
「秩父が地元なので、こっちのほうが通いやすいかなって、結局社宅を借りちゃいましたけど。」
社宅に引っ越して一週間ドタバタしていたから小野鳩さんと話す機会があまりなかったけど、ようやく出社の約束だけ取り付けて二人で歩いている。
雑談をしながら歩けば練馬駅はすぐだ。練馬駅で降りた人たちの少数が北側へ向かって行く、その人達は思い思いの格好をしており、スーツ姿はほぼいない。
「なんか、すごく場違いな感じがします。」
リクルートスーツに身を包んだ私達のほうが異質な感じがする。
「そうですねぇ。」
おっかなびっくりになりながら私達はその人達について今日から職場となる探索者協会練馬支部の入口をくぐった。
中に入ると受付側に探索者の人達が集まっており、反対には見覚えのあるリクルートスーツ姿の3人が所在なさげに立っている。私達もそちらへ向かう。
「おはようございます。」
互いに挨拶をして、同じように並ぶ。眼の前は受付を済ませてダンジョンへ挑む探索者ばかりだ。
「凄いですねぇ。」
「そうですねぇ。」
ポツリと盛れた言葉に同期の一人が答える。
私達はこれからこんな人達を相手にしていくのかと思うと、そんな感想しか出ない。人の流れをぼーっと眺めていると職員の上着を羽織った人がこちらに向かってくる。
「今年の新規採用の方ですよね、今担当の者を呼びますので少々お待ちください。」
職員の人はそう言ってカウンターの方に戻るとどこかに電話をする。少しするといかにもな感じの女性がやってくる。
「皆さんはじめまして、総務部総務課の
一人一人にネックストラップに入ったカードを渡される。私もカードを受け取り間違いがないチェックする。私の顔写真と職員証と入ったにカードに、改めて今日からここで働くんだって気持ちになった。
「では、こちらへ。そのままセキュリティーゲートを通過してください。失礼します。」
「ああ、今年の新人かい。いいよいいよ、先に行きな。」
井内さんがゲートの列に割り込むが、意外とあっさり譲ってくれる。他の探索者も私達が新人と聞いて注目してくる。ちょっと恥ずかしい。
そのまま会議スペースらしき部屋に通されると、何人かの職員が待っていた。
「皆さん、記載をお願いしていた書類の提出をお願いします。不備があれば確認次第こちらから連絡します。まずは皆さんの配属先に行っていただき職場の雰囲気を感じていただきます、全体のOJTはその後を予定しています。
それでは職員用の上着とベストを配布します、受け取りましたら申請したサイズであっていることを確認してください。
また上着とベストはどちらを着用しても構いませんが、いきなり選べというのも無理かと思うので、今日のところは上着を着用してください。」
水が流れるように話す井内さんに私は精一杯ついていって、上着とベストを受け取る。
「皆さんの配属先の主な教育担当となる方をお呼びしております。所属と名前が呼ばれた方は返事をして前へ。」
「購買部購買一課 小野鳩円香さん、購買部購買二課
「「はい」」
「購買部購買一課 吉野信子です。二人ともこれからよろしくお願いします。」
大人の女性といった雰囲気の人が小野鳩さん達の前に来る。
「あの私は二課では?」
「その事も含めて説明するから安心して。」
炭井君はちょっと焦り気味だ、それはそうだろう二課配属で一課の人しか迎えに来なければ不安になる。
「受付部受付課 矢野森雪芽さん。」
「はい」
「受付部受付課の向井湊です、これからよろしくね」
私の前には可愛い人が来た、多分同年代なのかな、怖そうな人じゃなくてものすごくホッとしている自分がいる。
「じゃあ、矢野森さんは午前中は受付業務だったり書類作業なんかを見ていてね。わかんないことあったら気軽に聞いてくださいね。」
明るく言う向井さんの言葉を真に受けた私が馬鹿だったと知ったのは、それから数十分後のことだ。
大部屋からの受付への移動の最中、向井さんが話しかけてくる。
「矢野森さん、矢野森さん、雪芽ちゃんって呼んでいい?私のことは湊でいいよ。」
「はい、もちろんです。私からは湊さんで。」
向井さん、いや湊さんが明るい人で良かったなって思う、私だったらこんなふうにはいかないから。
「あの、受付業務ってどんな仕事ですか?」
「迫りくる探索者さん達をバッタバッタとなぎ倒してゲートの向こうに送り出す仕事だよー。たまーにボスキャラもいるよ」
湊さんがアチョーといいながら拳を突き出しているけど、絶対その表現は間違ってると思う。周りの探索者さんたちも優しい目で湊さんを見てるし。
「ボスキャラと言うとナンパとか因縁つけられたりとか…。」
「う~ん、そういうのは周りの
じゃあ、何がボスキャラなんだろう。
「課長ー、新人の矢野森さんを連れてきましたー。」
湊さんがいかにも仕事の出来そうな男性へ声をかけている。男性は席を立つとこちらへ向かってくる。
「はじめまして受付部受付課の寺島です。早速挨拶をしていただきたいのですがいいですか?」
「はい、大丈夫です。」
「皆さん、傾聴!窓口に入っている方も一旦手を止めてください。探索者の方々、申し訳ありません少々お待ち下さい!本日より配属される新人の方にご挨拶をいただきます。」
課長の一声にフロアに居る人達の目が一斉にこちらへ向く、課長はそのまま「どうぞ」と譲ってくれるけど、探索者の人達までこっちを見ているのはちょっと怖い。
「本日より配属されました矢野森雪芽です!精一杯がんばりますのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたしますぅ~。」
精一杯の勇気を出して声を張り上げて挨拶するけど、最後に使い果たしてしまらない形になってしまった。でもフロアの人達も探索者の人達もみんな拍手をしてくれたことで私はここで頑張れるかもって思った。
そのあと道明時先輩を紹介してもらったり、練馬支部出勤初日は忙しく過ぎていきました。
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・探索者の男女出会い事情
探索者はその性質上、男社会と思われがちだが意外と男女比は悪くない多いところで6:4少ないところでも7:3程度である。協会職員についても練馬では6:4、これは交替勤務の関係上夜間に対応できる人材を採用した結果であり、上野のように4:6と逆転している支部もある。
またダンジョン周辺ではナイトワークを始めとする水属性・風属性の商売が発展する傾向にあり、実態としてそこまで男女比は乖離していないと思われる。そう探索者諸兄に女性との出会いが決して無いわけではないのだ。
・ハイパー豊島園
一度は閉園の危機を迎えるものの、その後なんだかんだで存続することになり、その時に改名している練馬区の遊園地、豊島区には無い。その際に名前を一般公募したことでも有名になる、その際の候補の一例としてスーパー豊島園、豊島園
あんまり登場人物を増やさないようにしたい…、なんでヒロインじゃなくて新人の話書いてんだろうなぁ、しかも半分ぐらい書ききれてないし
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