第5話 ラノベでよくある女子高生・ミーツ・オッサン 2

 まあ、なんとか間に合ったかと嘆息し、誠司はガラの悪い三人組に向き合う。


「よう、イエロー共面倒だから、さっさと抜けや。」


「何だてめぇ、ヒーロー気取りかよ。てめぇの手足斬って女どもを目のっぶfぎ」


 3人が得物を抜いたことを確認したら、あとは用は無い。真ん中で能書きタレてる阿呆の顔面に裏拳をぶち込む。

 阿呆はそのまま気を失って倒れるが左右にいた奴らが即座に反応する。右は誠司狙いの一撃、左は女狙いに駆け出す、誠司はやはりコイツ等熟れてるなと思う、どちらかの行動が成功して盤面が覆れば良し、仮に失敗しても他のヤツが稼いだ時間で逃げれば良し。実にクズらしい行動パターンで、真っ当なやつほどハマるだろう。

 だが、誠司は迷わない。今回の依頼は救助だ、影の塊がブレて左の男を追い抜き拳が振るわれる。男が気付いたのは拳が顔にめり込んだときだった、そして同時に意識を手放した。

 右の男は一撃が避けられたことで結果を見ずに逃走を選択する。だが十数歩もしないうちに後ろに気配が現れる、背後の影の塊に剣を振るうが剣が影を素通りした瞬間に顔面に拳が叩き込まれた。


 誠司は気絶した右男(命名誠司)の髪を掴むと元の場所に引き摺っていく、そこにはへたり込んだ女生徒達と阿呆2人が寝転がっている。右男を中男の横に転がし女生徒達の様子をうかがうと怯えたように誠司を見ている。


「まずはカメラを止めてくれ、話が出来ない」


 女生徒達は頷きあい、ドローンを操作し停止する。その様子を見て誠司も影を晴らす。


「自己紹介が必要だな、俺は練馬支部所属Cランクの小山誠司。君達の救助と、コイツ等の捕縛に来た。」


 ネックマスクを外して誠司は名乗りをするが、女生徒達の緊張感は溶けた様子がない。へたり込みながらも後ろの子達を守るようにいる先頭の子が睨んでくる。


「そ、その言葉、信じられるんですか?」


「さあな、受付嬢が君達の配信を見ていてな。俺はお願いされただけだ。そっちの子は怪我してるのか、ほれポーション使え。」


 ポーチから下級ポーションを取り出して差し出しても受け取らないため、手の届くところにおいて、左男を回収する。


「そんなこと言って、後からとんでもないポーション代請求する気なんでしょ!?」

「しねぇよそんなこと、緊急措置の特例は探索者ガイドラインにも書いてある、間に協会をたてたっていい、さっさと使って治してやれ。」


 誠司はどこのエロ同人だよと思いながら、三匹まとめたところでポーチから縄を取り出して後ろ手に縛り上げていく。


「な、なんですか、その禍々しい縄?みたいなの。」


 ようやく立ち直ったのか女生徒の5人は立ち上がる、怪我をしていた子についてもポーションで回復したらしい。さっきから対応していたリーダーっぽい子が話しかけてくる。


「あ~、縄に髪を編み込んだみたいなのあるよな、アレっぽいやつだ。あと触んなよ。」


「それ絶対呪われてるよねぇ。」


 斥候っぽい装備をした子がちょっと引いてる、おそらくこの子がサブリーダーだろう。


「使い方さえ間違えなきゃ、こういう時に便利なんだよ。」


 数分後に嬉しくない野郎のSM緊縛が完了し、普段なら絶対しないであろうダンジョン内でメッセージアプリから支部と連絡を取り合う。


「さて、そろそろ行くか。フォーメーションはいいな。」


 まだのびてる三馬鹿の腹に蹴りを入れて、誠司は振り返ると女生徒5人とも力強く頷く。若いっていいなぁと思いながら、足元から聞こえるヒキガエルが潰れた時より酷い声はスルーした。



 ロビーに帰還するために縄を打たれてる三馬鹿を先に行かせて、その後ろを縄の先を持っている誠司、その後ろにダンジョン部の1年の子がついてくる、2年はその両脇を固めて歩き始める。


 少し歩いていると森の奥から探索者の男二人が走ってくる。


「それ以上近づくな!要救助者の護衛とイエローの護送中だ、近づいた場合は敵対行為とみなす。」


 誠司の鋭い言葉に、男二人はその場で停止し、両手を軽く上げる。


「俺達は敵じゃない、騒がしい声が聞こえたから駆けつけたんだ。」

「ああ、護衛と護送だと大変だろ。なにか手伝えることがあったら言ってくれ。」


 二人とも割とイケメンだ、装備も二層にしては整ってる。まあ使えなくはないかと思う。


「そう思うんなら、回り込んで前に行ってくれ。」


「わかった。」


 男二人は大きく回り込んで三馬鹿の前方に出る。


「なあ、あんたも後ろの子たち守りながらじゃ大変だろ、縄引くだけなら俺達でやろうか?」


 そのまま、森の中をしばらく歩いていると男の片割れが提案してくる。


「…悪くないな、頼めるか。」


「おお、任せてくれよ!」


 近付いてくる片割れに、誠司が縄を持つ手を差し出す。


「甘ぇんだよ!」


 片割れが抜き打ちを放つ、もう一人の方も三馬鹿を繋いでいる縄に斬りかかる。


「その程度のなまくらコイツが切れるわけ無いだろ。」

「えっ。」


 誠司は腕を引いて縄を剣に引っ掛ける、それだけで片割れの剣は止まってしまった。

 あまりのことに片割れ自身が止まってしまう、その瞬間脇腹に衝撃が走り吹き飛ばされていた。

 もう一人は縄に斬りかかるが全く切れる様子がなく、苛立ち何度も斬りつけている、縄が一向に切れないこと三馬鹿も口々に罵倒している。


「クソ、なんで切れねぇんだよ!」

「早くしろ、クソ野郎!」「テメエ、なんでそんなもんも切れねぇんだよ!」「童貞じゃねえんだからさっさと切りやがれ!」


「ずいぶん楽しそうな会話してるな、俺も混ぜてくれ。」

「「……」」


 残った男にも丁寧に拳を見舞って差し上げる誠司に三馬鹿は大人しくなる。失神した男を引きずって縄の先に戻り、脇を押さえてうずくまっている片割れと一緒に縛り上げる。野郎のSM緊縛◯ン◯ン電車の完成だ。全く嬉しくない。


 誠司は女生徒に合図を送ると、こっちに頷いてくれた。多少は距離感が縮まったみたいで嬉しい。

 縛り上げた2人も蹴り起こして一層に向けて歩き始める。


「さて、今度こそ本当に帰るとするか。」


 一行は暫く森の中を歩くが◯ン◯ン電車の速度が一向に上がらない。


「もう少しだが気を抜かずにいけ。お前らはもっとさっさと歩け。」


「こっちは怪我してんだぞ、もっと丁重に扱え!」


 フラフラと歩いていた片割れが叫ぶと、三馬鹿の足が止まりコチラを振り返る。その表情は完全に怯えていた。


 ダンジョン犯罪というのは立証が難しい、弱肉強食のダンジョン内において、とかく証拠が消えてしまい現行犯でしか対応できないということもある。

 近年はダンジョン内でのWiFiやスマホの利用可能、携帯キャリアの開通やドローン技術によりなんとか記録は残せるようになったが、それでも力が物を言うダンジョン内において犯罪者は殺されて当たり前、捕獲なぞされた日にはマヌケ以下の扱いだ。

 そういうやつに限って人としての発言権など無いことを全く理解してないから詰まる所こうなる。


 誠司は片割れの後頭部を掴むと手近な木に顔面を叩きつけた。その一度で片割れの鼻と前歯は折れて血をダラダラと流している。


「丁重に扱ってやったぞ、満足か。」

「…はい」

「なら歩け。」


 三馬鹿が歩き始めると、片割れもようやく心が折れたか素直に歩き始める、相方も青ざめた顔をしてついて行く。

 女生徒はあまりの事に怯えたのか誠司との間が若干開いてついてくる様になった。


 途中安否確認の連絡やらを女生徒達が取りながら歩くこと1時間、ようやく一階へ渦の前に到着した。


「お前らポーション持ってるなら飲んでいいぞ。」

「縛られてて飲めねぇよ。」

「それもそうか、全員持ってるか?予備のあるやつは。」


 片割れの相方だけポーションを持っておらず、予備を三馬鹿が持っていたため後で回収するように言い含めて誠司は手持ちのポーションを野郎共の口に突っ込む。


「よし、じゃあ出るぞ」


 誠司たちは渦をくぐり抜けた。




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 ウィオジャーレンの黒髪縄くろかみじょう

 ああ、私は貴方を何時までも想い、私は髪を伸ばし、私は髪を編みましょう

 私のおもいが貴方に届くまで、私のおもいが貴方に届くまで、私の憎しみおもいが貴方に届くまで、何時まででも髪を編みましょう

 いつの日か私のおもいが貴方に届いたのなら、貴方を私の憎しみあいで包み込み共に永久の海に沈みましょう

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