まあ、そういう夢だった
新聞の一面を飾るのは、少年二人の心中事件でした。
「ひどいっすねぇ、これ」
そう呟く。
ワタシは殺人事件専門の探偵っす。
探偵とは名乗ってますけど、まあどちらかというと警察に近いっすけど。
『そうだね!自殺かあ、おバカだね。でも、一人は生き残ったんだあ。かわいそう…ってこれ、前捜査した事件じゃないか!』
かわいい相棒がふよふよ浮きながら、そうやって言う。
ワタシは、或る異能力を持っていてるっす。
「幽霊と対話することができる」能力。
そのお陰で、事件現場である廃ビルにいる或る幽霊に、事件の内容聞き、知ることが出来たんす。
或る地縛霊さんが、話した内容は以下の通りっす。
二人の少年、廃ビルの屋上、話していた。
可愛らしい少年と、イケメンさんな少年が話していた。
可愛い少年は、中性的な格好をしていて。
そして、イケメン少年に、男だと打ち明けたらしく、イケメン少年は、困惑した表情をしていた。
可愛い少年はそれを拒絶と受け取ったのでしょう。
廃ビルの屋上から飛び降りようと、足を進めていたらしい。きっと、覚悟は決まっていたんでしょうね。
それで、飛び降りた。はずでした。
イケメン少年は、可愛い少年の手を掴んで、引き上げようとした。
…ま、だめだったんっすけどね。
可愛い少年の方が、イケメン君を引っ張って落としたらしいっす。
で、二人で落ちて片方は死亡、片方は重体だそうっす。
「生き残った子は多分、後追い自殺するでしょうねぇ。そんな気がするっす」
『んー、生き残ったのはどっちなの?』
「助けようとして落ちちゃったほうっす」
イケメンくんの方っすね。
一度あの子に話聞きに行ったっすけど。なんだか。ずーっと、なにかをぼやいてましたし…
多分、もう、どっちにしろ普通に生きるのは無理っすね。きっと彼は自分が見殺しにしたという夢にとらわれるか、心中した想い人がまだ生きているという妄想に刈られるのでしょう。
『そっかあ』
ワタシの相棒は、そう言いかけました。
そして思い出したかのように、ワタシの方を向きました。
『あ、そうそう!最近、サトリのすまほ?を勝手にいじって、ゆー◯ゅーぶ?っていう動画配信さいと?でね、スゴーいささる曲をみつけたの!』
なんでいじってるんすか勝手に。
幽霊とかって実態無いはずでは?
『あのね、「永眠」って曲なんだけどお、めっちゃめちゃいい曲!』
ほほう?
「気になるっすね、それ」
ワタシは相棒が持っているワタシのスマホに近づき、動画を再生しました。
すると写ったのは…
「…あ、これ、心中事件の……」
あの二人だ。
嘘っすよね?
誰かがこうなることを予測していた…?
そんなことあり得ないはず。
それかこれは、…死んだどちらかがこれを望んでいた。
それを描いたものでしょうか。
結末は少し違くて、
一緒に落ちるんじゃなく、掴んだ手を、落ちた側が振りほどいていみたいっす。
『…こ…ひと…し』
ん?
あれ、今、
なにか聞こえた気が。
電子音に混ざって何かが…
『この人殺し』
え?
『サトリ、今なにか言ったあ?』
「いや、なんも言ってないっすけど、今のは霊の声に聞こえ」
…電話です、電話です、電話ですよ!早よでろ!
「電話…っすか…って、トゥール、着信音勝手に変えないでって言ったっすよね!」
『えー、いやぁー、そのぉー。でもねでも、そんなの今どうでもいいもん、ほら早くでなよ!』
急いで通話ボタンを押す。
「も、もしもしぃ?」
『もしもし、悟利?』
相手は落ち着いた声の人。
ワタシの、上司。
「ハイ、どうしたんすか?」
『心中事件の子が自殺した。今さっき。即死だ』
「え?」
『自殺するとは分かってたことなのだけれどね、君に事件の担当をしてもらっていただろう?その話、まだ続きそうだ。今の事件の被害者だけ書類にまとめてくれたまえ。追加分もだ』
「分かりました」
『それじゃあ、頼んだよ、悟利。頑張ってくれたまえ』
ツー
はあ、なんか、あっけねぇっすなあ。
まあ多分、二人仲良く死んだんすから、いいんじゃないっすかねえ。
『両方、地縛霊コースかな?あそこの廃ビル、また今度遊びに行こうね!』
「いいっすよ。…さて、書類をまとめないと」
そうしてワタシはコンピューターの前に座る。
さすがに相棒からワタシのスマホは没収したっす。
そのスマホで、さっきおすすめされた曲を再生しながら、ワタシは、彼らの演劇をまとめることにしたました。
永く眠るであろう彼らに、どうか、幸福を。
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