試した

朝起きたら、首が痛い。

あ、自殺。


失敗してた。



「自殺やめようって何回も言ったでしょ?」



え?

そんなこと言ってたっけかぁ

はは、は、はははは


「隈がひどいし全然寝ないしさあ、心配なんだよ、君」


見殺しにしたと思っていた。

なぜかは分からないけど、こいつ、死んでなかった。

よかった。

病院から電話かかってきた。生きてるって。

よかった。


それから毎日、ずっとこいつについてる。

だって、怖いから。

いつ死ぬか分からない。

壊れそうで怖い。だからさ、ずっと。ずっと。

それに、もう学校には行ってない。

こいつに、いつでも会いに行くために。

だって、それに、どうせ、こいつを虐めた奴らがいっぱいいるから。だからやだ。


「首の跡も隠さず朝一番でおはようされると、怖いんだけどぉ。まあ、来てくれて嬉しいんだけどさあ」


笑われて、俺も笑う。

嬉しいなぁ。笑ってくれてる。

あの時、虐められていた時、俺は見てるだけだった加害者なのに、それでも俺を受け入れてくれる。

ああ嬉しい。


「飛び降りるつもりだったけどさ、君が一瞬、拒絶するような顔するのが悪いんだよ?」


顔を近づけられて、ちょっと照れた。

可愛い。それでなんか、分かんないけど…かっこいい。


「ご、ごめん」


怯えた声だけしか、出ない。


なんで?


「ん?いや。いいんだ。君、僕の事好きでしょお?だからいいよ。これからずーっと一生僕の事ばっか考えて生きてくれればそれでいいんだあ」


重い。

押し潰されそうで怖い。

でも、両想いだから。

幸せだ!


「これからも、責任感じて自殺未遂ばっかしてさあ、動けなくなって。今世は、健全に正常に僕を愛してくれなくていいからさ」


俺は、こいつを抱き締める。

夢とは違って、暖かくって、ちゃんと感覚があって、こいつの香りがして、辛いのが全部飛んできそうだった。


「(僕に依存しちゃったけど、うーん、まあ、いいか。僕「永眠」したかっただけなのに、生きのこっちゃうし。はあ、でも、愛されてるしなあ。死ぬに死ねない)」


なんだか、嫌なこと考えてる気がした。

だから、抱き締めていた力を強くして、見つめる。


「ヴぅ、わ、わかったからあ…いた、あたた!内臓破裂する!」


ずっと、ずーっと、離す気はない。

来世なんて無いけれど。俺よりも先に、こいつを永眠させるわけにはいかないんだから。

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