第12話 金銭枯渇

 イベント絵が少しばかり出来てきたようだ。

 正直、私でも分かる。これはエロい。私でも、何か、興奮してきた。


「私の画力を崇めよ」

「出た。ライナのイキリ」


 どうやらライナは創作物を生み出してしばらくは調子がノリにノルようだ。面倒くさい。


「今のライナは自分をキリストか何かと勘違いしているからな」

「何となく、ライナの写真を印刷して、踏みたくなりました」


 いわゆる、『絵踏』である。彫刻であれば、尚良い。


 そんなわけで、ゲーム制作は順調に続いて……。


「お金が無くなりました」

「「「「「は?」」」」」


 エロゲ開発部は一応「部活」という立ち位置には学校的にはなっているため、それなりの活動補助金が出るのであるが……。何故、今になってお金がないのだろうか。


「理由はこれらのせいです」


 オサノは腕を広げた。それが何を意味しているのか。


 その腕が指すものとは、部室中に広がるグッズ諸々であった。


「これ、部費から出てたんですか……!」

「うん、取材料っていう名目で」

「経費ですか……?」


 何だそれ、小説家かよ。


「というわけで、手っ取り早く金を稼ぐ方法を募集します」

「バイトですかね」

「馬鹿。まず三か月しかないのに、チマチマバイトなんかやってられっかよ」

「ギャンブル」

「ちなみに、ササノ、お前ギャンブルの結果は?」

「カジノ、競馬、等諸々ボロ負けです」

「俺もだ」


 どうやら彼らに賭け事のセンスはないようだ。


「では、冒険者向けの依頼クエストを受けるのはどうですか?」


*****


 この世界には冒険者という職業がある。

 冒険者とはギルドから募集されている依頼クエストをこなしながら気ままに世の中を冒険し、生きる自由度の高い職業であり、魔導師も度々冒険者を本職にする者もいるようなので、ミミニアリスト魔法学校の学生の最終的な進路としても選ばれる職業である。


 ちなみに、そのギルドの依頼クエストを受けるには冒険者資格が必要であれば、多少の身体能力か、魔力量加え、魔術実力があれば容易に入手することが可能だ。


 しかし、私は思う。冒険者など、名としてはそういう職業になっているが、ただのしがないフリーターではないか?と。(元ネタ:佐藤和真さとうかずまさん)


 そんなことは、まぁどうでもいい!!今は金だ!


*****


「ところで、皆さん冒険者資格は持っているんですか」


 ちなみに私は持っていない。ずっと田舎暮らしで田舎に冒険者ギルドなんてものはなかったからだ。


「ちなみに、俺は持っていないぞ」とオサノ。

「俺もだ。取る意味がないからな」とササノ。

「持ってないよ」とライナ。

「未取得」とユウナ。


 取得者0人。


 というわけで『ミミニアリスト冒険者ギルド』へと私たちは出向いた。

 魔法都市ミミニアリストは魔法都市の為、このギルドに集う者は魔導師が多くを占める。勿論、冒険の過程でこのミミニアリストを訪れた魔導師以外の冒険者もいるが。


 とにかく、私たちは『冒険者資格取得受付』へと向かった。

 そこには、立派なお胸を所持した受付嬢が立っていた。不思議と応対してもらっている男どもは頬を赤らめ、股間を抑えているように見えた。


「へっ!あんな乳袋に反応してしまう哀れな男どもめ」

「同じ男として、情けないな」


 我らの部活の男はそうでもないみたいだ。

 股間はビンビンであるが。


「部長たち~。身体が正直ですよ~」


 ライナがジト目でオサノたちをからかった。

 オサノたちは自分の股間の状態に気づいた後、とっさに隠した。


「むむむ……。俺たちの性欲を沸き立たせるとは……。やりおるな、あの女」

「早く行きますよ~」


*****


「はい、皆さん冒険者資格の取得でよろしいですね?」

「イエス」

「はい。ではこの石に手をかざしてください。これから、個々の能力値を測ります」


 そう言いながら、受付嬢は青白く光る、丸っこい石を取り出した。


「じゃあ、まずオサノからいくか」


 オサノが石に手をかざすと、青白い石は輝き始めた。

 そして、石からステータスが表示された。

魔法

「えっと……。魔法学生の魔法剣士の一般的にな値ですね」

「”一般的”だってよ」


 一般的という何とも言えないコメントを受付嬢からもらったオサノをササノはそうやってからかった。


「まぁ、ステータス的にジョブは魔法剣士かなぁ……」


 ちなみに、魔法剣士というのは剣と攻撃魔法を扱う感じの人である。


 次仁ササノが手をかざした。


「攻撃魔法の能力値に長けていますね」

「つまり、俺はウィザードだな……」

「格好良く言うな」


 そして、ライナ。


「一般的な感じですね」

「受付嬢さん。ちょっと適当になってません?」


 というわけで、ライナは剣を持った。

 ユウナはライナと能力値はほぼ同じだったので同様である。


「そういえば、オンノは?」

「楽曲制作で忙しいからパスだとのこと」

「なんだよあいつ……。金銭枯渇が大変だというのに」

「楽曲も大切だろ」


 というわけで、次にノゾミル。


「わぁ……。すごい、すべての能力値が見たことない数値しています!」


 どうやら、私の凄まじいステータスがバレてしまったようだ。

 困ったな……。このままじゃ、部活、ギルドの皆さんから喝采が……。

 俺TUEE展開になってしまうぜ。


「まあ、そうだろうな」


 部活の皆さんの反応は薄いものであった。


「みんな……。反応薄くない……?」

「だって、ノゾミル推薦特待生だろ?そんぐらいの魔力量は想像できるわ」

「さいですか……」


 こうして、私たちは冒険者資格を取得した。(オンノ以外)

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