第7話 インスピレーション会議
「この部活にこんな茶菓子あったんですね」
私はエロゲ開発部という名前に似合わない。落ち着いた雰囲気の茶菓子たちを見て思った。
「まぁ、結構こういうのも使いますからねからね」
とライナが言う。集中力持続のための糖分接種にでも使うのであろうか。
「では、インスピレーションの発生を目的とした話し合いを始めようと思います」
オサノがそんな生真面目な感じで仕切った。
とても今までの彼の行動から見れば、不自然で仕方がない。
しかし、どう真面目を装っても、今から話す議題は当然、エロゲという一般的見たら不真面目な議題である。
「まぁ、ただ話すだけでもなんだ。ゲームでもしながら話し合うか」
ササノがそういいながらソフトとコントローラーを人数分取り出した。
その遊ぶソフトというのは『格闘魔法少女リュウクシノラムン』(実在しないゲーム)
いろんな属性を持った少女たちが魔法少女となって何故か戦う美少女格闘ゲーム。何故か全員、服の面積が異常に狭い。
「んじゃ俺はミルス使うわ」
「俺サク」
「私はサオリ使いますね」
「マイコ」
「みんな、決めるの早くないですか??」
私だけ置いてけぼりにされて、皆次々とキャラクターを決めていくので、思わずそう思ってしまった。
「みんなこのゲームやったことあるしね」
「それ、私が一方的に負けるやつじゃないですか」
そう、この場にてこのゲームの初心者は私だけなのである。
当たり前だ。こんな癖強ゲーム今まで実家暮らしであった私にあるものか。
*****
しかし、このゲームにて、私はボロ勝ちしてしまった。
「「な……なんでや……!!」」
オサノとササノはキバオウのようなことを言った。
別にディアベルは見殺しにしてねえよ。
「くそ……。俺はこのゲームを極めたと思っていたのに……。何でこんな初心者に負けるんだ……?」
確かにそれは気になるところだ。そしてふと、私は説明書を手に取った。
そこに書いてあることに私は驚愕する。
『ゲーム内のキャラクターの魔力はプレイヤーに比例します』
「何や、そりゃ」
「それ、どうやってるんだろう」
『コントローラーにその人の魔力を測る装置があり、それによってコンピューターが判断します』
「このコントローラー、そんな機能詰まってたんだ。
エロゲ開発部一同がこのゲームのシステムに感心していた。
……なんか、忘れているような。
「あ、シナリオ」
私のその声によって、エロゲ開発部一同は本来の目的を思い出した。
*****
「このエロゲの舞台はどこなんでしたっけ」
「魔法学園だな」
魔法学園か……。環境としてはかなり私たちに似ているな。
「あ」
とササノが何かに気づいた様子を見せた。
「どうした?ササノ」
「いや、いっそ俺たちをモデルにしてしまったらどうだ?状況とかは似てるし、タイトルはそのままに『魔法学園エロゲ開発部』みたいな感じで」
そんなササノの提案はオサノによって秒で反対された。
「駄目だ。俺は三次元を愛せん」
「俺もだ」
「私も」
オサノ、ササノ、ユウナは皆、同意見を言った。
こいつら……。
*****
というわけで、何のヒントも得られないまま部活が終了した。
「何とか、帰るまでに何か出ないかな……」
そう思いながら帰路についていた。そんな時……。
「ちょっ!ちょっ!ちょっ!危なーい!!!!」
「へぇ」
その声は頭上から聞こえた。そこには私めがけて急降下してきている一人の少女がいたのだ。
「うわ!『クッションバリアフィールド』!!」
私はクッション性のある
急降下少女はその防御障壁に吸い込まれ、一命を取り留めた。
「危なかった……」
「本当にすみません……」
少女は深々と頭を下げた。
「いいよいいよ、どっちも助かったんだし。多分魔力切れでしょ?」
「はい。カツカツで」
飛行魔法中に魔力切れはよくあることで、それによる死亡事故も多発しているとよく聞く。基本、魔導師が飛行魔法を使って、万一、魔力切れに合った際は、地面に衝突する瞬間、ほんの少し残っている魔力で、勢いを殺すため浮遊魔法をふわっとかけて、着地するのが普通なのだが、なかなかの技術を用し、落ち着いて対処しなければならんので、できなくて死亡するケースもよくあると聞く。
もしかしたら、彼女も落ちる際、かなり慌てていたから、私が弾力性防御障壁魔法を使わなければ、死んでいたのかもしれない。
…………あ。
ペコペコ頭を下げる彼女を見ながら、私はとあるストーリーが思いついた。
*****
物語の始まりは主人公が魔法学園に入学した時。
徒歩で登校していると、空から飛行魔法を使っていた女の子が落ちてくる。
そこを主人公が弾力性防御障壁魔法……。いや、自らが下敷きになることで、彼女は一命を取り留める。
それが、彼らのはじまり……。
それからの魔導師たちの甘く酸っぱい恋愛がどんどん思い浮かんできた。
そして、次第にお色気シーンもイメージでき、エロという部分も自然に作ることができた。
「どうだ!どうだ!これなら!」
私は書き切った自らの原稿を今一度眺める。
どうだ!いけるのではないか?!
少なくとも、私は書けた。
泣けるし、抜ける。素晴らしいシナリオが!!
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