第1話 魔法都市
木々が赤くなり始めた頃。私はこの街に来た。その街の名は「魔法都市ミミニアリスト」
街の中心部に世界最大の魔法学校、「ミミニアリスト魔法学校」が鎮座している。そのため、この街は魔術師の人口の割合が高いのだ。
そして、私は今日からこの街に来て、ミミニアリスト魔法学校の特待生として入学することとなったのだ!
「馬車に揺られ〜。我は行く〜」
「ご機嫌だねぇ、お嬢ちゃん」
馬車の馬を操っているじいさんが歌っている私に向かってそう言った。
この街とさっき行っておきながら、実はまだ到着はしていないのである。地元から馬車に揺られ、揺られ、二週間。やっと今日が到着予定日のいため、今こうやって話していたのだ。
「もしかして、お嬢ちゃん、その身なり、これからミミニアリスト魔法学校に行くのかい?」
「はい!」
「そりゃすごいねぇ、入試はどうだった?」
「いや、私、特待生なので入試なかったです!」
「特待生?!すごい魔術師様だ!」
おじさんはそう私を称賛していた。照れくさい。
二週間の旅路の間、かなりこのおじさんとも会話を交わし、結構仲良く話すくらいまでなっていた。
「よし、そろそろ着くよー」
「おお!なんか街が見えてきました!」
見えてきたのは木組みの家と石畳が立ち並ぶ古風な街であった。
綺麗でザ・魔法使いの街とも言える街だ。
「降りる準備してな」
「あ……」
私はそこで、自分の周辺を見て開き直った。
その馬車は完全に『私の空間』と化していたのだ。
「自分の家みたいに散らかしてるな……」
「すみません……。すぐ片付けます……」
*****
一通り片付け終わり、私は手紙の筆を進めていた。
地元に残っている母へ「到着しました」を伝えるための手紙である。
———無事、家に着いて落ち着いたら郵便に出しに行こう。
そう思いながら、文を綴った。
やがて、馬の足音も鈍った土のとこから石の音へと変わった。
そのことにあと数分もならないうちに降りなければならないと察し、筆記用具も片した。
*****
「ありがとうございました!」
「ああ!勉強頑張れよ〜」
そうして、おじさんの操作する馬車は去っていった。
さて、心機一転、これから新生活だ。とりあえず、部屋に行こう。
住屋については母さんが契約して、借りてくれた。本当に頭が上がらない。
というわけで、まずはそこに向かって、荷物を置こう。
そして、大家さんや近所の皆様に挨拶、そこから学校に向かっても遅くはないだろう。
「さて、アパートはどこだ?」
そうして地図を見てみる。
しかし、魔法都市ミミニアリストの地図はごちゃごちゃしてて、位置情報など全くもって分からなかった。
「どうしようかな……」
私はしっかりと迷子になった。
*****
そこから、数時間が経過した。
自分のアパートの位置が分からずじまいで、まだ街中をうろうろしていた。
魔法学校の位置は分かるのだ。何故なら、そこは滅茶苦茶でかいから。
というわけで、私は重い荷物を持ってミミニアリスト魔法学校へと向かった。
私の入学は明日からである。つまりはまだ私はこの魔法学校の生徒というわけではないのだ。学生証も制服も持っていないし。
まあ、しかしここには用事があるのだ。不法侵入にはならない。
まず、学校側にも「入学前日に顔を出してください」と通達が来たからな。
そして、ミミニアリスト魔法学校長室に到着することができた。
そこには何やらいい年したおじさんがでんと座っていた。年としては馬車のおっちゃんのほうが上だろうか。
「あ、これはこれは、よくお越しくださいました。……何やら大荷物で」
「あ、これはちょっと事情がありまして……。あはは」
私たちはお互いに苦笑した。
「事情ですか?いったい何が?」
「あ……。借りたアパートまでに道筋が分からなくて」
「住所はどちらでしたっけ?行き方ぐらいは教えられると思いますよ?」
「それは……。助かります!」
私は目の前にある机に乗り出した。
「本気で困っていたのですね……。
*****
「というわけで、明日のことについての為に本日お越しくださったわけですが」
「あ、はい」
目の前の卓上にはいろいろな学校の為のグッズが置かれていた。
「とりあえず、本日お渡しするものをお伝えします。まずは制服、生徒証、あとは学校指定の鞄、別に自分のモノでも構わないのですが……。あとは一応、学校指定の杖もありますね、結構生徒間でもこの杖は支給品にしては魔力補助が良く重宝されているのですが、既にそのようなご立派な杖をお持ちのようなのであればそれでも構いません」
「あ、そですか」
長い説明が終わった。
「それでは翌日、登校したら、まずはこの部屋までお越しください」
「あ、はい、よろしくお願いします」
そうして、入学前の学校長との面談は終わった。
*****
「なんて分かりやすい地図だぁ……」
私は学校長が作ってくれた地図に感激した。
市販の地図の何倍も分かりやすかったのだ。
彼……。副業で地図製作者になっても稼げるのではないか?
とりあえず、私は部屋に荷物を置いて、リラックスした。
外はもうとっくに夕方だ。そして、明日から私はミミニアリスト魔法学校の生徒だ。
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