乙女同盟

猗鴉蛙吾

乙女同盟


制服の余れる丈に三年みとせ後の我が身を想うあるいは願う


新緑にひとつまじれる病葉に我が身重ぬる教室の窓

午後ひるすぎの長閑けさ破る雀蜂老嬢教諭勇ましく舞う

紅花を唇にそとこすりつけ夏野の隅に初化粧

中庭の花の名求め図書室の図鑑手繰れば頁に折り目

無線手の「どうぞ」の如くAMENと唱う我らを赦せよ神よ

寮監のおとに怯えつ結びたり永久不滅の乙女同盟


射干玉の黒髪長き乙女らが命短しと駆け急ぎ行く

いける為切り落とされし花の柄に人・間・性とラベルを貼りぬ

学祭の「オペラ座」稽古NG続き哀れブケー氏幾度も死す

花占の「好き」と「嫌い」を搔き集め屑籠へ遣る手つきぞ悲し

初恋の砂糖細工は燃え尽きてあとに残りしカラメル苦し

無防備に微睡む君に衣かけぬ(天国行きも叶う善行!)


入梅に逢瀬デートの予定潰されて呟く名さえ雨はかき消す

古七夕デネブより彦星アルタイル織姫ベガの距離求むかいなく渡れ夏天の川

夕映えを校舎の影よ縫い留めよ今この瞬間を永久にま永久に

薄荷味ばかり残つた罐を振り微笑む君の檸檬の吐息

うかつにも二人寝過ごす雨上がり雲よ湧き消せ伊香保ののじ

雪の降るもあると知る一人寝の寮室君はいずこにありや


惜春の涙は止めどなく流れ拭いし袖の丈ぞ足らざる

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乙女同盟 猗鴉蛙吾 @aaaa_tanka

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