摩擦しない日常【第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト二十首連作部門】

suzu

摩擦しない日常

紫陽花にわたしを例えたあのひとはいまも本を読むのだろうか


太陽を赤色で描くこどもだった 普通の会社員になった



パトラッシュが横にいないからしかたない 食べて寝て起きて働く


捨てられるパーツがここしかなかった ベリーショートの理由聞かれて


心臓が痛い気がする 皿洗いだけはできないような気がする


月曜と痰吐きおじさんへの憂鬱 消毒してくれ太陽


自分勝手を司る神経が だれかに喜ばれたいと言う


どちらかといえば心の健康に 二夜連続のチョップドサラダ


はねるとこきっちりはねる字のままに彼女は正しい 正しいひと


しんどいな。わざわざ声に出して言う その声でまだいけると思う


血縁のいなくなったまちへゆく そうだ前回も秋晴れだった


「この仕事、向いてないんです私」をかわしてマルゲリータひときれ


おひさまにあたためられたつやつやの犬の眉間をそっとなでたい


手を引いてもらわなくても歩けます ヒールを雪にぶっ刺しながら


15年ぶりに眼鏡をえらんでる そりゃ変わるよね顔も視界も


冷静になればもう充分なんだ まだ頑張れるかどうかじゃなく


チョコを買う 深呼吸する ツンとくる 自分をわりと好きだってこと


まえをゆく彼女のかかとにばんそーこ貼るための念力がほしい



トレンチと地球色したスカーフに似合うようにと背筋をのばす


摩擦するあなたやきみがいなかった日常のさき 昇進はした

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