第7話 デューダの過去
――――「これから、一緒に頑張っていくことになる仲間達だろ?貸しとか、義理とか、そんなの関係ないじゃないか!」――――
ひ弱だと思っていたトマリンに殴られた挙句、怒鳴られたが眼鏡インテリのデューダは何も言い返すことが出来なかった。
「君が手伝う気がないのなら、もういいよ。僕1人でみんなに教えて協力するから」
トマリンはそう言うと、振り返り他の生徒の方へ行った。
「みんな聞いてくれ!あの岩には攻略法があるんだ!!」
トマリンが他の生徒の全員に聞こえるように大声で話し始めるのをデューダは聞いていた。
(あいつ、本当に言いやがった・・・能力のない人間など塵も同然なんだよ・・・)
デューダはそう思うと同時に自身の過去を思い返していた。
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眼鏡インテリの男“デューダ・エグビオル”は、フーレ村に医院を構える医者の一人息子として産まれた。
彼が住んでいたフーレ村は、周囲を森で囲まれた住人2000人ほどの比較的小さな村であったが、和気あいあいとした非常に楽し気な村だった。
エクビオル医院では、村の流行り病による風邪などを主に診察しており、村自体に病院が少ないのも合いまって、毎日のように患者で賑わっていた。
そんなある嵐の深夜に、エグビオル医院のドアを叩く音が聞こえた。
「何だ?こんな夜遅くに・・・」
デューダの父親であり、医者でもある、ダドリ・エグビオルが扉を少しだけ開く。
「エグビオル先生!!ドレッドを助けてやってください、今にも死にそうなんです」
焦った様子で、一人の青年が叫んできた。この青年が抱えているもう1人の血だらけの青年の方がドレッドと呼ばれる男であることは容易に想像が出来た。
「わかった。早く入りなさい」
本来なら、もちろん診察外の時間ではあるが、緊急性を要することから断るわけにもいかずに、医院の中の施術室へ2人の青年を招き入れた。
(これは酷いな・・・右腕は肩から下が無くなっており、足に関しても裂傷が激しい。この傷跡から察するに、クランチベアーもしくは、ディボールウルフあたりの魔獣だろう)
「今から、緊急手術を行う。本来であれば麻酔をしてから行うが、事態は深刻だ。一刻も早く処置せねば助からん。君、ドレッドをしっかりと押さえていてくれ」
「わかりました。先生!ドレッドを助けてやってください」
「ちょっと痛いと思うが我慢してくれよ」
そういうと、ダドリ・エグビオルは傷口に消毒液をかけた。
「ぐあぁぁぁぁっっ!!!」
寝ていたドレッドという青年が叫んだ。と同時に、寝室で寝ていた7歳になったばかりの幼き日のデューダが目を覚ました。
「すごい大きな声がしたけど、まだ夜中だ。父上が何かしているんかなぁ。ちょっと施術室を見に行ってみよう」
普段は寝ている深夜2時という時間起きたこと、父が何かしていることに好奇心を覚え、様子を見に行くことにした。
施術室に着くと、扉が少しだけ開き、そこから光が漏れている。デューダは、おそるおそる隙間から中の様子を覗いた。
(なんだあの傷は・・・明らかに普通じゃない。)
普段見るような傷ではなく、もがれた右腕などや足から出血がひどく、重症であることは一目超然であった。
「うぇぇ」
吐きこそしなかったものの、吐き気のせいで声を出してしまった。
耳の端で、微かに声を聞き取ったダドリが扉の方に目を配る。デューダは一瞬、父親であるダドリと目が合った。
(やばい、父上と目が合ってしまった!?これは怒られるかもしれない。早く戻らなければ)
異様な光景に対して、父親が何か悪い事をしているんじゃないかという気持ちになったデューダはその場から即座に逃げ、自室に戻り眠りについた。
「とりあえずは、これで一命はなんとか取り留めたから、安心していい」
「エグビオル先生ありがとうございます。ほんとに何と仰ればいいのか・・・」
「礼は良い。私は医者だ。ドレッドの容体が戻るまで、入院させておくが良いか?
「はい、ありがとうございます。良かったなドレッド、本当に良かった」
一晩中かかった緊急手術を終えたダドリは、妻に今日の病院は休館にすることを伝えにリビングに向かった。
その途中、息子であるデューダと鉢合わせた。
「デューダ。ちょっと話たいことがあるから、来なさい」
デューダは昨日の事に後ろめたさを感じてはいたが、尊敬する父にそう言われ、着いていくより他なかった。
「昨晩、お前が見ていた事は知っている」
「いや、父上。あれは、たまたま声がしたから見てしまっただけで・・・」
「責めているわけではない。お前には遅かれ早かれ言う必要があった」
「え?何のことをですか?」
「この村の秘密に関してだ・・・お前にはそれを知る権利もあるし、知らなければならないことなんだ」
そういうと、ダドリは村の秘密に関してデューダに話始めた。
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