第2話 担任教師
「アイオン君!さっきの凄かったね!剣技解放 せんこうば!シュパぱぱーん!」
「いや、せんこうじんな・・・語尾が“ば”だとダサイだろ」
「えへへ(笑)それもそっか」
「真一、どうしてあの時反撃しなかった?」
一瞬の間があった後、アイオンが僕に問う。
「え、ええと。何というかさ、僕は魔法が使えないんだよね・・・」
「何だって!?じゃあどうやって対魔獣学部に入れたんだ?」
「うーん・・・」
------1ヶ月前の面接時------
「次の方お入りください」
その言葉を聞き、僕はおそるおそる面接会場のドアを開いた。
「よ、よろしくお願いしますっ!!僕の名前は泊真一!!通称、トマリンて呼ばれてます!!好きな食べ物はリンゴとブドウ!!将来の夢は誰かの役に立てる魔導士になることですっっ!!」
緊張しながらも、何とか大声で自己紹介を終えた。
面接官と思わしき、スーツ姿の男性と、白ひげにマント姿のthe魔法使いというような格好の老人が、唖然として僕を見ていた。
氷雪魔法“エンブリザード”を使用したかのように、場の空気が凍りついていた。
その空気を見かねたスーツ姿の男性が、口を開く。
「ご、ごほん。・・・は、はい。元気の良い自己紹介ありがとうございます。こちらからの、お願いとはなりますが、泊さんの魔法を何か見せて頂けないでしょうか?」
「え、はい?それを今後学ぶんじゃないんですか・・・?僕は魔法はまだ何も・・・」
まさかの問いに僕は動揺した。普通の公立中学校に通っていた僕が魔法なんて出来るはずがなかったのだ。
「えええ、魔法が使えないんですか!?」
「お恥ずかしながら・・・」
その様子を見ていた老人が1人考え込んでいた。
(うむ、泊とか言ったか?こやつ相当なツワモノかもしれんのう・・・)
(まず、こやつの身体から微塵も魔力素が感じられない。この儂ですら魔力素を感じられないほどにまで封じ込めるとは、恐ろしいガキじゃわい・・・
このような場においても自身の魔法を明かさない徹底ぶりと、魔法を見せない正当な理由作りをするアドリブトークスキル、そしてそれを裏づけるような超人的な演技力・・・
資料を見る限り、学力テストの方は満点なのも頷けるほどの頭脳というわけじゃな
齢80近くになる百戦錬磨の儂ですら、この若造に騙されるところじゃったわい。
こやつの魔力素を消す技術さえあれば、魔獣にも十分対策しうる!!)
「採用じゃ!!トマキチといったか?お主を対魔獣専門学部に配属させる!!」
老人が部屋内に響きわたる大声で言った。
「え、副学長良いんですか?この学生は魔力すら持っていないんですよ!!」
焦った様子でスーツ姿の男性が止めようとする。
「ええい、だまっらっしゃい!!儂が良いと言ったら良いの!!!」
「ふぇぇぇぇ」
そんなこんなで、僕は王立ヴァルキュリア魔法高等学校に受かった。
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「ってなことがあってね」
僕はアイオンに面接であった事を話した。
(えええ、うちの学校は大丈夫なのか?)
アイオンは戸惑った。
「あれが、シュタッド家の秘蔵っ子、アイオン・シュタッドってわけですか。噂通りの実力というわけですね。あの剣技もさることながら、僕の目でも追うのが精一杯のスピード、そして僕の次くらいには整った容姿。彼には今後とも注目せざるを得ないですね」
眼鏡インテリイケメンが呟いた。
ガチャ
「はいはい、全員、着席着席ーっと」
長身の男がそう言いながら教室へ入ってきた。
どうみても生徒のようには見えないその風貌から、担任教師であることは明白であった。
その後に続いて、眼鏡で気が強そうな女性も一緒に入ってきた。
教師らしき男が辺りを見渡してから口を開く。
「あーあ、君たち盛んなのはいいことだけど、初日から喧嘩はやめてくんないかな。
こっちは報告書を書かなくちゃいけないんだよ・・・それがまためんどくさいの何のその。
今度、俺の許可なく戦闘するようなことがあれば・・・」
「殺すぞ」
その瞬間、教室の空気が凍り付く。この男の言葉がハッタリではないことを全員が察した。
そして、教師らしき男はさっきの空気とは一変しひょうきんな様子となり、続けて
「まぁ今回は若気の至りということで多目にみてやるよ。この俺の太平洋のように広い心に感謝をしてだなぁ・・・
ん?若干1名倒れてるのか!リツコちゃん、そいつをよろしく!」
「わかりました!では、回復魔法“ヒールレイ”」
女性の手から黄緑色の光がでると同時に、意識を失っているスキンヘッドの男を包み込んだ。
「んてて。俺は寝てたのか??いや剣技の打ち合いで吹きとばされて・・・」
スキンヘッドの男が目覚めた。
「よぉおはよう。お前見かけに寄らず弱いのなぁ(笑)とりま早く席に戻れな」
そう言うと、スキンヘッドの男の頭をポンポンと叩いた。
「てめぇ、何しやがんだ!」
スキンヘッドの男がキレて斬りかかる。
シュポ!!
「入学祝いに花束をくれるのか?顔に見合わず、粋な計らいをしてくれるじゃないかぁぁ」
スキンヘッドの男の大剣が、花束に変わっていた。
どうやら教師らしき男が魔法を使ったらしい、それも一切のモーションも見せずに。
「とまぁ今日は入学式で浮かれているところもあると思うから、オリエンテーションの一環として全てを許そう。ただ、今後俺に逆らうような言動をすれば即退学とするから、そこんとこはよろしく。あと、自己紹介がまだだったな。」
「俺の名前は、ウィルバット・レクス、ウィル先生とでも呼んでくれ。そしてこっちの強面眼鏡は」
ボカ! (ウィルバットが殴られる音)
「ご紹介に預かりました。副担任のリツコ・アザシロです。今から皆さんにウィル先生から大事なお話がありますので、心して聞くようにお願いいたします。」
先ほど殴った女性とは思えない丁寧な口調で話した。
頭をさすりながらウィルバットが口を開く。
「まず始めに伝えて起きたいことは、ここ対魔獣学部の卒業率は例年、入学時の2割ほどということだ」
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