Qe

二葉らむ

Qe

飛行機に乗れたら空は遠くなる忘れてしまった足の裏側



前日譚長いとゴムに見えてきて電気をつけたり消したりしてた



上がらない花火が上がるという国で噺家たちが迷子の夕べ



すんなりと渡れてしまった交差点で遅れてふり向く異邦人



昔よく遊んだ空き地に建てられたフェンスが虎に変わる夜



ボリュームを握るその手に触れたときようやく始まる音楽だ



どうでもいい天気の話なんだけど ― 曇り硝子わずかにひらいた



チョコの箱ひらけばチョコの匂いして捨てられずにいる小さな私



知っている壁の模様がこみあげて滲んでいった往復書簡



銀色のフォークにパスタ巻かれてく映画の見られる街に来ている



履きなれたエアソールが泣いているふり返るたび羽に隠れる



Hi dear, 元気な時ほどクがケに見えてしまう図書館にいるね



液量はこのままでいいですか?カフェ店員の笑顔離れない



胃カメラは飲まずに生きていけたらなスクロールする大江戸線



瞳はダイヤでいっぱいでどうしようもなく斜めになる額縁



いつもより余裕があって目をやれば目から飛び込むテナント募集



いくつもの光を抱いたビルディング母の言葉も覚えはじめて 



私から泡が生まれて消えてゆく休憩時間をかぞえるサイダー



過ぎてゆく1/1は地続きで互いに向けて祈り続ける



耳鳴りのやまない部屋へたどり着き深夜ラジオは眠りに落ちた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Qe 二葉らむ @futaba_lamb

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画