第19話

できる限り抵抗してやる。

やばいと思ったらなのを叩き起こそう。

元はと言えばなののせいでこうなっているんだから。

.....そう考えるといつまで寝てんだコラ。



虎と目を合わせる。



マジで勝てる気はしないな。

よし、負けそうになったら佐伯が引くぐらい、なのに泣きついてやる。


そう思って手のひらに溜めていた物を解放しようとした瞬間に勢いよく扉が開いた。


「...ナナさん!?」


ナナさんと目が合う。

ナナさんはホッと安心したような表情になった。

そして佐伯の方に向き、話を始める。


「佐伯さん!佐藤君は大丈夫な人です!解放してあげて下さい!」


うぅ。

ナナさん、そんなに俺のこと信用していてくれただなんて。

感極まって泣きそうだ。


そして胸ポケットから姿を現した妖精もフォローに入る。


「こいつがパートナーを傷つけたりなんてするはずないわ!」


やばい。

こんなにも優しい奴だったなんて。

俺はこんなに優しいやつにチェンジだなんて言っていたんだな。

後でしっかり謝ら―—


「だってこんな童貞臭のするこいつがパートナーを傷つけるような度胸なんて持ってるわけないわ!!」

「おいツンデレ妖精、お前あの虎の口の中に放り込むぞ?」


チクショウ!

誰が一度も彼女が出来たことがない童貞だ!!

女の子と手すら繋いだことねぇよ!!チクショウ!!









「いやぁ、一時はどうなるかと思ったけど良かったよ。君がちゃんとした青年で」

「....あざす」


一応テストしていたことも聞いたし、何故テストしていたのかも聞いた。

そう考えると少し恥ずかしい。

ちょっとカッコつけた感じ出てたし!?

やだナナさんこっち見ないで!


「...キモッ」

「ナナさんすぐそのパートナーを佐伯さんに押し付けよう」

「何言ってんのよ!ナナのパートナーなんて全世界探しても私にしか務まらないわ!」


うわぁ、こいつほんと堂々としてんなぁ。

偶に入るあのツンデレモードは何なんだよ。


「気持ち分かるなの。なののパートナーもゆうやしかいないの」


いつの間にか起きていたなのがそう言う。


「良かったわね祐也好いてくれてる女の子いるじゃない...プッ」


多少は嬉しいけど

ロリコンなら大喜びしてただろうな。

後、最後笑ったの聞こえてんだよ。



「君たちは仲が良いな。プライベートでも交流があるのかな?」

「「なんでこんなやつと」」

「......仲良すぎないか?」



耳が腐ってる佐伯さんは置いといてツンデレ妖精とプライベートで交流はありえないだろ。

ナナさんならいつでも大歓迎です!


「ほんと?じゃあ機会があれば遊ぼうね!!」


やった~機会があればナナさんと遊べる~。

機会があれば.....社交辞...いやこの先を述べるのはやめておこう。

クッソ!!あのツンデレ妖精腹抱えて笑ってやがる!!!


「まぁ、誤解も解けたことだから私とも仲良くしてくれると嬉しいかな」

「あ、はいこちらこそよろしくです」



何かあるかもしれないと言われ連絡先を交換した。

スマホアプリ『NINEナイン』に家族と過去働いていたバイト先の先輩の連絡先しか入っていなかったが一気に二人も増えた。

それも可愛い二人の女性と。


ナナさんの方を見る。

何やらツンデレ妖精と話しているようだ。

耳を澄ませるとツンデレ妖精の声が聞こえてくる。


「なんであんな童貞野郎と交換したのよ!!ストーカーされたらどう―—」


ツンデレ妖精を捕まえる。


「何すんのよ!!セクハラよ!!私に欲情―—」

「虎、お口開けて?お腹空いたでしょ?俺動物にエサやるの夢だったんだぁ」


中々動物園ってひとりで行けないからな。

今度なのと動物園行ってみるか。

っと、その前にここでエサやりの練習経験を積んでおこう。


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