第6話 誘っても興味がないようだ
空翔は夏楓が喜ぶと思って用意したバタフライピーティーを自分用に用意した。ハーブティーでもあるため、少し癖があったが、コーヒーよりは飲みやすいとご機嫌になった。
「そんなことまでしなくていいのに……高かったでしょう?」
夏楓は、空翔の注いだ紅茶を飲まずに冷蔵庫のペットボトルの水をコップにも入れず、飲み始めた。
「んー、喜んで貰えるかなと思って……」
「うん」
ぐびぐびと水を飲んでいる。少しモヤモヤした気持ちが空翔の中で生まれた。この気持ちを切り替えようと、話を変えた。
「夏楓、今度の休みに星見に行かない?」
「星?」
「うん、望遠鏡あるから」
クローゼットの奥の奥、ほこりかぶった望遠鏡を出してみたが、夏楓はスマホばかり見ていた。興味なさそうだった。
モチベーションをあげようと考えたが、一気に落ち込んだ。もう夏楓に話しかけるのはやめた。黙々と残していた台所の洗い物を始めた。カチャカチャと皿の音だけが響くのが嫌でワイヤレスイヤホンで好きな音楽を聞いた。
夏楓は、ソファに座って、テレビをつけた。たまたまつけたバラエティ番組のコントを見て笑っていた。何でだろう。イヤホンをしているのに、夏楓の笑い声でイライラする。首をブンブン振って、切り替えて、洗い物のほかに洗濯物などの家事に没頭した。それでも、夏楓は、空翔のことは気にしないでスマホをいじりながら、ずっとテレビを見ている。洗濯機のぐるぐるとまわる音が洗面所に響く。何か無性につまらなかった。
◇◇◇
翌朝、いつも通りに朝食を作り、アイロンで綺麗にしておいたワイシャツに袖を通した。最近、柔軟剤を変えた。石鹸の香りで元気が出た。頬をバンバンとたたいて、気持ちを切り替えた。
交差点の喧騒が耳に入って来る。夕方になると車が渋滞することが多くなる。帰宅者が増えるだから。仕事を一通り終えてデスクを整えていたら、上司から残業してほしいと言われた。書類申請の締め切りに間に合わないということでみんなで頑張ろうということだった。計画的に動きたいが、今日の今日の発注と提出で無理難題な話だ。今日中に仕上げなくちゃいけないらしい。致し方ない。空翔は喫煙所に行き、ポケットからスマホを出した。
「今日、帰り遅くなる」
職場からスマホで夏楓に電話した。
夏楓は、うんと言うだけで何も聞かない。
何時に帰るとか心配されない。本当ならば、残業はできるならしたくない。上司からの指示は断りにくいものだ。
どうして、こんなに会話する言葉が減ったのか。そんなに興味がなくなるものなのか。夏楓とは大学3年の時のテニスサークルで意気投合したのが懐かしい。テンション高めに盛り上がっていたあの頃に戻れたらいいのにと感じる。
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