第8話 自己紹介【教師暴走編】

 鎌野かまの先生せんせいは、口を開ける。


「まずはそれぞれ、自己紹介じこしょうかいをしよっか! 軽くね、軽く! 野郎やろうどもの自己紹介は特に軽く、そして短くね! 女の子の方が個人的需要が高いから!」


 男女平等だんじょびょうどう価値観かちかんは、どこぞへ置いてきた様子の、真似まねしちゃいけないタイプの女性教師――鎌野かまのさやは、出席番号1番の生徒から、自己紹介を始めるよううながす。


「お、俺の名前は――!」


 といった具合ぐあいで、自分の名前を教え、趣味しゅみ特技とくぎを伝えたりする時間が、進行していく。

 一部の女子の番が回ってきた際には――


百合ゆりってとうといことは、ご存知ぞんじで?」

「え、え……っ?」

繊細せんさいな感情表現を等身大とうしんだい描写びょうしゃする百合作品は、まさに至高しこうの人間ドラマだわっ! 百合は、異世界ファンタジーに並ぶ、一大いちだいジャンルになるべき存在だと、先生は思っているのよっ!」

「せ、先生……?」

「あら、何かしら?」

「少し……引いてしまいそうです」

「の、ノーマルタイプ……!? でも、ノーマルタイプの少女を、百合路線に導くのが、王道おうどうなのよ……!」

「この人、クビにならないかな?」


 危ない担任の暴走が原因で、流れがグダったシーンも多々たたあったが、それ以外はトントン拍子びょうしで自己紹介が進んで行った。

 そしてついに、俺の出番が回ってくる――。

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