第4話 被害妄想

 となりの席に座る美少女は、俺が『死んでくれないかな?』と思っているのだろうと、感じたらしい。


 これは、あれだ。

 まぎれもなく、被害妄想ひがいもうそうというやつだ。


「…………」


 俺は、彼女の直感ちょっかんに対する回答を口にした。


「死んでくれないかな――なんて、全く思っていない。嘘偽うそいつわりなく、だ」

「じゃ、じゃあなぜ……私をジッと見つめていたの?」

「そ、それは……」

「それは……?」


 それは、本音ほんねを言うと、彼女の容姿ようしがあまりにすぐれていたからだ。ようは、見とれていただけ。

 しかし、そんな真実をしゃべるとか、ずかしくて、とてもじゃないが出来できない。

 どんな返答をするべきか……。


 …………。


「な……」

「な……?」

仲良なかよくなりたいなー……と思ったからだ……」

「…………えっ?」


 その言葉は、誤魔化ごまかしだった。

 可愛かわいかったと直球ちょっきゅうに言えないいんキャラな俺のはなった、身代みがわり言葉。

 しかしこの一言ひとことが、これからの俺の学生生活のくるいの初手しょてであるなどとは、この時の俺はまだ想像もしていなかった。

 少女は、ほほわずかなあかみを見せる。


「ま……」

「ま……?」

「まさか――かねくれよ。俺たち、友達だろ――とか言って、カツアゲをする予定がある!?」

「――そんな予定無いわ」

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