第157話 取り次ぎ
ヤマトは聞き間違いかと思い、念のため確認した。
「決闘……決闘と言いましたか?」
キラスティは、ニコリと笑う。
さわやかな笑顔とは裏腹に、中身は辛辣だった。
「そうだ。決闘だ。力でお互いの主張を認めさせるのだ。」
「……!」
いきなり、とんでも無いことを言うキラスティにヤマトは目をむいた。
(……意味が判らない。)
例え、決闘で勝ったとしても……ヤマトが賊ではない証拠にならないのではないだろうか。
まったく意味が判らない。
首を傾げるヤマト。
当然、アズームのほうも断るかと思ったのだが……。ヤマトが視線を向けると、何故かアズームは乗り気だった。
「決闘!望むところだ。やろうとも!」
「えぇ!?」
慌てるヤマト。
「ちょ、決闘なんてやらないですって!」
もめ事を回避したいヤマトは、首をブン!ブン!と振って拒否した。しかし、アズームは挑戦的だ。
「ふはは!怖気づいたか!ならば、お前は賊確定だ!警備兵を呼べ!」
「ど、どうして、そうなるのです!?エルフって。大人しい種族なんじゃないの!?。」
すると、キラスティは笑った。
「ははは。それは勘違いだ!エルフにも色々いる!ならば、決闘しかないな?うん!さぁ!行こう!魔法学園の決闘場が良いだろう!さぁ!」
急かすキラスティ。ヤマトの腕を掴む。
「ちょ、待っ……」
そんなこんなで、ヤマトは何故か決闘をすることになってしまった。
ヤマトの中のエルフのイメージが崩れ落ちていった。
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いくつかの塔を横断し、王城をひたすら歩いた。
横断する際に、「なんだ?なんだ?」と、ギャラリーも着いてくる始末。
中には偉そうなエルフ文官なども混じっているようだ。
「ふ、増えていく。」
ヤマトが後ろを振り向きながら、不安そうにしていると……。
たどり着いたのは、エルフの誇る魔法学園入り口。
『ブルーサファイア魔法学園』だ。
魔法学園は王城内にあるとは言え、中庭を抜けた別区画に存在していた。
大きな城門が設置されており、その奥は見えない。
(この王城はどんだけ敷地あるんだ?)と、ヤマトは呆れた。
城門に接近してくると、城門兵が叫ぶ。
「止まれ!学園に何用だ!……うん?キ、キラスティ軍団長!?」
連れだっているのは、キラスティ、ヤマト、アズームと見物したいエルフ達が10名ほどだ、大所帯になったものだ。これだけ大人数で押し寄せたら、それは警戒される。
しかし、城門兵はキラスティのことを知っているようだった。それはそうだろう。キラスティは軍の人間なのだから。
「キ、キラスティ軍団長。どうして学園へ?」
「いや、決闘をしたくてね。申し訳ないが、学園長に訓練場を使いたいと伝えてくれないか?」
「け、決闘?キラスティ軍団長がなさるのですか?」
「はっは!私も、そんなに若くない。ここにいるアズームと、ヤマトだよ。」
そう言われて、城門兵はヤマトとアズームを見やる。
「この二人が……、あ、一人は学園入学前の生徒ですね。良く知っています。しかし、この子は……?まだ子供じゃないですか。」
ヤマトを見て首を傾げる兵士。
それはそうだろう。ヤマトの見た目は、10歳まんまだ。子供が魔法学園の生徒と決闘等、聞いたことが無い。
ここで、ヤマトは疑問に思った。
(あれ?俺って名乗ったっけ?)
まだ、一度もキラスティに自分の名前を名乗っていなかった気がしたのだ。
まず城門で許可を得る必要があった。
しかし、キラスティはかなり権力を持っているらしく。
「学園長にとりつげ、ごにょごにょ……」
後半の言葉は、耳打ちで聞こえなかったが、血相を変える門兵。
「キ、キラスティ様、それは本当ですか!?」
「間違いない、おそらく姫様の……。」
そう言うと、チラリとヤマトに視線を送るキラスティ。
その視線に従うように、門兵もヤマトを凝視する。
「?」
訳が分からないヤマト。
「で、では、そのように伝えてまいります!暫くここでお待ちを!」
門兵の一人が駆けて行く。
何やら慌しかった。
「……。」
「……。」
待っている間、非常に気まずい雰囲気が流れた。
睨むアズーム。凝視する門兵。
(迷子になったばかりに……。)
不安と後悔のヤマト。
すると、突然胃城門が開く。
「!」
誰かが立っている。
「ふぉ、ふぉ!キラスティよ、久しいの。」
奥から、威厳たっぷりの長い白髭をたくわえた老エルフが現れた。
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