第4章 ブルーサファイア魔法学園編

第151話 下山開始

※※ 第4章 ブルーサファイア魔法学園編※※


/////ヤマト視点/////


転移門を通ると、目の前に広がる空間に俺は驚いた。


先ほどまでいた場所とはまるで違う光景が広がる。目の前には、連なる山脈が見えている。空は青くどこまでも広がっていた。


気持ちの良い風が俺の頬を優しく撫でた。まるで、エルフの国が歓迎しているかのような錯覚を受ける。


(ここは……。)


登山好きにはたまらない光景だろう。地上何百mという、とても高い山の展望台のような場所に俺はいるようだ。


「山の上?」


立っている場所を観察をすると、この展望台は100m四方になっているようで結構大きい。 ちょっと先に下に降りる階段が見える。


俺は立って微笑んでいるルシナに質問をした。


「エルフの国って山にあるの?」


ルシナは笑った。


「あはは。まさかぁ。ここは転移門の連結先。もし門が突破されていきなり王都に出たら大変でしょ?」


「なるほど。」


「さあ。この展望台からは遠いけど、エルフの王都ブルーサファイアが見えるよ!こっちにおいでよ。ヤマト。リリス。リーラン!」


そういうと、ルシナが展望台の端のほうまでスタスタと歩いていく、俺もその後ろをついていくと……。


俺は眼下に広がる光景に驚いた。


ここの展望台は相当に高いので、どんなものでも小さく見えるはず。しかし、視線の先に広がる光景から王都の全容が一望出来た。


地平線の先まで続く城壁と街並み。広大な土地にある巨大都市だということがわかった。


「ま、まさか。あれが?ブルーサファイア?」


さらに目を凝らして見てみる。俺の視力はとても良い。安い望遠鏡並みの視力を持っている。


ルシナが頷く。


俺はごくりと喉を鳴らして、さらに目を凝らす。


「ホーク・アイ『鷹の眼』」!」


スキルを使って街の内部を見ようとすると、微かに見えてきた。


都市の中はかなり高度に発展しているようだ。どこまでも続く街並み、地球で言うヨーロッパ諸国にあるような美しい建造物が立ち並んでいる。その街並みはすべて中心に向かっていて、大通りが放射線状に伸びている。都市整備は行き届いていそうだ。


街全体には、めちゃくちゃ高い城壁がぐるりと城を囲んでいる。警備も厳しそうだ。


「……街の外にも城壁があり、中にもさらに城壁があるな。」


「うん、あの二重の城壁に守られていて、内側の城壁が王宮と王城になっているんだ。」


「……そこに王様がいるんだな。」


「いるよ。」


「しかしデカい王都だな。こんなのが幾つもあるの?」


「エルフの大都市は全部で10あるよ。中規模であれば250。かなり多いよ。」


「こんなのが10も……。凄いな。エルフの人口って少ないんじゃないのか?」


俺知識によると、エルフの人口はとても少なくなっていて、人族の20分の1以下と聞いている。


「うん。エルフの人口は年々減っていて、今では廃墟になっている都市もあるにはあるよ。それでもかなりの数のエルフがいるよ。今見えているのはエルフの王都さ。」


リリスも手を額に当てて、遠くを見る仕草をしている。


「うーん、あれで王都か?ワシがいたときより小さくなっているのぅ。」


「あれで!?」


ルシナが頷く。


「うん。魔龍戦争でかなり破壊されたからね。その時に遷都したって聞いているよ。」


「なるほどのぅ。ワシが生きていた頃とは違うということか。もともと龍人族の王都よりも小さいスケールじゃったがのぅ。さらに小さくなったと言うわけか。」


あれだけ大きい都市をみて小さいとかリリスの国ってどんだけ大きかったんだろう……。


その国の王様だったんだよね。リリスって……。


俺はチラリとリリスを見てみる。その視線に気がついたリリスは、こちらをみて首をかしげる。


「なんじゃい?」


「い、いや……。」


俺は誤魔化すようにルシナに質問をした。


「じゃあ、翼竜で王宮まで飛んでいくの?ルシナ?」


しかし、見渡すとルシナの翼竜はどこにも居ない。転移門を潜ったところまでは確認したのだが……。


「ええぇ?行くわけないじゃん。ここからは歩いていくよ。ドドリゲスも帰したよ。」


そのまま飛竜で王宮までいくのかと思ったら、歩いて行くとのこと。


「なんで?」って聞いてみたら、ルシナが呆れた顔をしながら答えてくれた。


市民も翼竜をみると、野生魔獣かどうか区別が難しいんだそうだ。だから迂闊に飛竜で王都にはいると大混乱に陥るらしい。


「下手したら撃ち落とされちゃうんだ。毎年、何人かそれで死んでるんだ。アハハ。」


「……すげー危ないじゃん。」


「だから、そういう事故を起こさないためにも王都に入るときは歩いて入る決まりがあるんだよ。出て行くときは、そんなルール無いんだけどね。」


「……この世界にも交通ルールがあるんだな。ルールは大事だな。」


「当たり前じゃが、ヤマトには新鮮じゃな。」


「ふふふ……。これからゆっくり覚えていけば良いのよ。ヤマト」


「あ、ありがとう。リーラン。」


会話していると、ルシナが急かすように俺達を促した。転送門のところから左脇に階段がある。


「さあ。まずは山道に行こう!山を越えないと、夜になっちゃう!」


「う、うん。」


階段を降りると、途端に山の中に入ったようだ。太陽が隠れ、山道が続くのが見える。


山道への入口に立ち、ルシナが笑いながら待ってくれている。


あそこから山をさらに下るようだ。


「ほら。急ごう」


「わかった。」


こうして、俺達は下山を開始した。


(どんな国なのだろう……。)


エルフの国への希望で、俺は少しワクワクしていた。

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