第133話 再出発と帰還
ヤマト達は、カタナール村をすぐに発たねばならなかった。
家族の遺体を庭先に並べたまま出発することに、ヤマトは最後まで躊躇していた。
しかし、直ぐにここから離れなければならない。もし、村人に発見されればヤマト達は、王国から殺人犯として指名手配されかねない。
だが、リリスの言葉で渋々行動に移すことになった。
「このほうが、村の者達が発見しやすく。弔ってもらえるじゃろう。」と。
その言葉で決心がついたヤマト達は、翼竜がいる場所まで撤退した。
しかし、目的地がはっきりしない。
復讐を誓ったヤマトだが、すぐに魔界に行けるわけもない。帰るべき場所を失ったヤマト達には、行くべき場所がなかった。
リリスの意見で、大都市か中規模以上の町が良いとのことだ。
「魔族がヤマトを狙い続けていることはハッキリした。寒村は発見されやすい。避けたほうが良かろう。」
「しかし、母上。困りましたね。ここから一番大きな都市に移動するにも大分距離があります。」
すると、ルシナが思いついたように提案をした。
「ならさ。エルフの国においでよ。王様に事情を話せば、きっと匿ってくれるよ!」
確かに、エルフの国であればちょうどルシナもいる今の状況はベストだった。
「いいのか?ルシナ?迷惑かかるかも知れないぞ?」
「もともと、王女様の命令でヤマトを捜索するように言われてるんだから、絶対大丈夫だよ。」
「でも……。」
ヤマトは、かなり躊躇った。
自分がエルフの国に行くことで迷惑がかかるんじゃないか?と、危惧したのだ。
しかし、リリスがそこはカバーした。
「ヤマト。今回、実家が襲撃されたのは。オヌシが”居ない状態”で襲撃されている。つまり、魔族はオヌシの居場所を特定出来ていない証拠でもあるのじゃ。」
「では、他の村とかに……。」
「先ほども言ったが、それは話が別じゃ。大都市に隠れるのは前提での話じゃ。」
「…………。そうか、分かった。じゃあルシナ?お願いできるか?」
ヤマトが、そう言うとルシナは嬉しそうに頷いた。
「もちろんだよ。じゃあ、ボクのドドリゲスにまた乗って。エルフの国に案内するよ。まずは魔獣の森へ飛んで、それから転移門でブルーサファイアへ転移するよ?」
「……迷惑かける。」
翼竜に乗り込んだ一向は、再び魔獣の森へ目指した。
空に舞い上がり、カタナール村から離れていくヤマト一向。
ヤマトは、何度も振り返り。故郷を記憶に焼き付けようとした。
まるで、父と母がまだ故郷で待っているような錯覚を覚えていた。
もう……、そのようなことは無いと判りつつ……。
/////////魔界:ベルゼブブ領 魔人ラスターの屋敷//////////
魔人ラスターの屋敷は、王都ベルゼティの南に位置しており。馬車で1時間もかからない。
名家の出身でもあるラスターは、大きな財力+実力で繁栄してきた。その屋敷は、王族に引けを取らない。
屋敷を預かるのは、タイン。ラスターと同じく、人型魔人で上位魔人でもある。
タインの特徴は、白髪に頭から出ている二本の角だ。
容姿はすでに老齢ということもあり、白髪と白い髭から、名家に使える老執事と言った感じだ。
しかし、このタイン。かのベルゼブブから「是非、我が部下に」と何度も引き合いが来るほど有能だ。
事務処理能力もさることながら、各政治中枢ともつながっており。
ラスターをここまで押し上げた影の功労者と言っても間違いない。
それに老齢とは言え、その力は上位魔人そのもの。すさまじい戦闘能力を持った魔人であった。
幼いラスターの教育係だったということもあり、タインは心底ラスターに忠誠を誓っていた。
その日、タインはラスターの執務室の掃除をしていた。有能な執事でもあるタインからすれば、一つの塵も許せないのだ。
主人であるラスターは、地上界に降りている。すぐに帰還するかに見えたが、もう数年戻っていない。
(そろそろ、私が助力に向かうべきですかね……。)
そんな老婆心を持ちながら、タインは机の拭き掃除をしていた。
その時である。
「……!」
執務室の中に、電気スパークが走る。
バチ!
「これは、魔次元転送……!ラスター様が、ラスター様が戻られる!」
魔次元スキルとは、転移門を使わずに地上界から魔界へ転移することが出来る、上位魔人だけのスキルだ。
ラスターが、今まさに地上界から帰還しようとしていた。
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