第130話 ルシナの提案

ルシナは微笑んでいる。そして、俺の無事を本当に喜んでくれていた。


心配してくれていたのが伝わる。


実に5年弱振りだ。俺もルシナに会えて嬉しい。


「それで?修行は終わったの?」


「え……うん。」


そうだ。


俺はルシナには一部しか話していなかった。ルシナには必要最低限のことしか話さないで別れたんだ。


あの時の俺は、誰にも居場所を知られないでいる必要があった。


ルシナは本当のことを知りたがっていたが、「話したくない。」と言う俺達の気持ちを理解してくれて、そのままにしてくれた。


この様子では、エルフ王国にもすべてを報告していないのだろう……。


誠実な相手には、誠実に対応すべきだ。


俺は決意した。


「……っ!」


俺はリリスと目を合わせる。


「リリス……。いいよね?」


「ああ。ルシナであれば、大丈夫じゃろう。」


「え?何?どうしたの?ヤマト。」


「あのね。ルシナ。話していないことを今話すよ。」


俺は、ルシナに今までのことを正直に話した。


転生したことや、すべてを……。


そんな大事な情報をホイホイ話して良いのか?って悩んでいた。


でも……。もうルシナに隠し事はしたくないって思ってたからだ。このことは、リリスと以前から話して決めていたことだ。

「……という訳なんだ。ルシナ。隠し事をしていてごめんね。」


ルシナは俺の話を聞くと、めちゃくちゃ驚いていた。


「りゅ、龍神族……。そして龍人族でもあり、はじまりの精霊でもあるの!?」


これでもか!と、言うほど目を大きくして驚くルシナを見て、俺は噴き出してしまった。


「わ、笑いごとじゃないよ!ヤマト!」


「あはは。ごめん、ごめん。」


しかし、疑われるかな?と、心配していたけど。


ルシナはすべてを受け入れてくれたようだ。


「信じてくれるの?」


「信じるも何も、何か納得した感じすらあるよ。」


「そう?」


「そうだよ。ヤマトは小さいときからクローベアーを倒したり、スキル使ったり……。いろいろ非常識だったからね。」


「ひ、非常識って……。」


「それで、その人が……。龍人族のリーランさん?」


すると、リーランは微笑みを浮かべながら前に出てくる。


「はじめまして。エルフのルシナさん。リーランです。」


「は、はじめまして……。」


ルシナが、アタフタしている。


「落ち着いてよ、ルシナ。」


「あはは……。リリスも綺麗だけど、リーランさんもすっごい綺麗だなってさ。」


「いやだ。そんなこと無いわ。」


リーランは珍しく照れていた。


(いやいや。ルシナも超美少女でしょ。年齢的には”少女”ではないかも知れないけど……。)


見た目は、日本で言うところの10代の高校生くらいに見える。


(ルシナは自分の容姿をあまり気にしないタイプなのかな?これは一言言っておかないと!)


「いやいや。ルシナだって超綺麗じゃん。自覚ないの?」


「……っ!」


すると、驚いた顔をするルシナ。


「……え、ボ、ボクが綺麗?」


「うん。綺麗。めちゃくちゃ綺麗だよ

。」


すると、みるみる顔を紅くするルシナ。


まるでトマトだ。


「ど、どうしたの!ルシナ!」


無言で顔を伏せてしまったルシナに声をかける。


それを見ていたリリスとリーランが、呟く。


「そういうところあるわよね。ヤマトって……。あなたこそ無自覚系?」


「ど、どうして!?」

ルシナと他愛もない会話を楽しんだ。


しばらく間を空けて、ルシナは俺に申し訳なさそうにお願いをしてきた。


「あのね……。出来れば実家に帰ったあとでいいから、エルフ王国に来て欲しいんだ。」


「え、エルフ王国へ?」


「うん……。その……それの問題で。」


ルシナは、俺の腕にハメられている”月の糸”を指さした。


「あ……。これね。」


これはエルフの王女様に貰った”月の糸”だ。


とても貴重なもので、エルフ王族しか身に着けられないものらしい。


これを着けていると、体調が良くなるので俺は”ピッ〇エレキバン”と、俺は呼んでいる。


「わかった。実家に帰ったら、エルフ王国へ顔を出すよ。」


「ありがとう……。助かるよ。いろいろ問題が勃発していて、ヤマトが着てくれると本当に助かる。」


「そ、そうなの……。」


何だか行くのが怖くなってきた俺であった。


俺達は実家に帰る旅を続けることにした。


ルシナに別れを伝えた。


「ありがとう。ルシナ。会えて嬉しかったよ。」


「うん。本当に良く無事で帰ってきたね。ボクも嬉しかった。」


「それじゃ。俺達は先を急ぐから!いつか、エルフの国行くよ。」


「…………。」


しかし、無言なルシナ。


俺は首を傾げる。


「どうしたの?ルシナ?」


「あのさ。もし良かったら、送っていこうか?」


「え!?」


驚く俺。


「うん。ちょうど翼竜で来ているし。乗っていく?」


「まじで!?」


俺も驚いたが、それを聞いてリリスも喜んだ。


「おお!それがええ!翼竜であれば、すぐじゃ。」


リリスの反応に、ルシナは喜んだ。


「うん!4名くらいであれば、ボクの愛竜でいけるよ!」


俺もその提案に飛びついた。


「是非!是非お願いするよ!」


ちょっと憧れあったんだよね。空を飛ぶのって!!


かっこいいし!ドラゴンライダーって感じじゃん!


超嬉しい!


「じゃあ、ここに翼竜を呼ぶね。あっちに置いてきたんだ。」


「う、うん。」


俺はドキドキしながら、ルシナの行動を見守った。


「かもぉぉぉん!!ドドリゲェース!」


「え……?」


何それ、ドドリゲス?


ネーミングセンス最悪じゃん。


俺は軽く引いた。

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