第129話 ルシナ驚く

///////////ルシナ視点/////////////////////


それは、ボクがお昼を食べているときだった。


飛竜隊の訓練を終えて、かなり疲れていたけど。このお昼のときはテンションが上がる。


長机に軍の兵士達が、ズラリと並んでいる。


歩兵隊、弓隊、いろんな部隊が集まっている。


皆、楽しそうだ。


そうだよね。お昼ってテンション上がるよね。


「いただきます!」


ボクはパンを手に取ってかぶりつく。


むしゃむしゃ……。


ジョッキに入れたお茶も喉に流し込む。


ゴキュゴキュ!


(はー。至福の時。)


無我夢中で食べていると、目の前の弓隊の男性が呆れたような顔をして話しかけてきた。


「ルシナさん。美人なんですから、もうちょっとお淑やかにできません?」


「もごもご…もご。何?」


「いえ、何でも無いです。」


その時だった。


「…………!」


ゾルゲールの笛の音が聴こえた。


ボクはイスを倒しながら立ち上がった


「来たぁ!!」


周囲のエルフたちが、「何事?」と、私を見つめてくる。


やばい……、超目立ってしまった。


あの笛は特注で、ボクにしか聴こえないんだった。


「あ……何でもないです。エヘヘ。」


変な愛想笑いを浮かべながら、休憩所を後にする。


そして、そのまま廊下を駆けた。


ボクは胸が高鳴っていた。


「とうとう、ヤマトが帰ってきたんだ!無事だったんだ!凄い凄い!」


飛竜隊斥候部隊長たるボクは、翼竜宿舎に許可なしに入れる。


「すぐに出れる。」


翼竜達は高い塔の上で飼われている。ボクは塔を駆け上がる。


「あ!出動ですか?隊長!?」


部下達が、突然入ってきたボクを見て驚く。


「いや!違う!ちょっと魔獣の森まで飛行テストしてくる!」


「え!?」


驚く部下達を捨ておき、愛翼竜に飛びのり塔の上から滑空する私。


風と一体化する前のこの感覚は、いつ感じても素敵だ。


すぐに転移門に到着すると、エルフの国を飛び出して魔物の森へ到着!


上空からヤマト探しのはじまりだ。わくわくする。


そのまま、1日かけて魔獣の森を飛ぶ。


「どう?感じる?ドドリゲス!?」


ボクは愛翼竜であるドドリゲスに語りかける。言葉が判るはずがないけど、何となく彼(ドドリゲス)とは通じる気がするのだ。


「キュー!!キュー!!」


「この近くなのね?ドドリゲス!」


ボクは、目に魔力を込めると「ホーク・アイズ(鷹の眼)」というスキルを使った。このスキルがあるから、ボクは翼竜使いでも群を抜いて成績が良い。精霊魔法・風属性魔法も得意だけど。ホーク・アイズは斥候向きだ。


すると、前方2キロ先に旅人らしき人影が見えた!!


「あれだ!やった!見つけた!!おぉぉぉーーーーい!」


ボクは力の限り手をふる。魔獣だと思われて攻撃されたら笑われ者だしね。


5年弱。ようやくヤマトに会える。あの青髪で女の子みたいな顔をして、でもシッカリしていて、たまに生意気な男の子。ヤマトに会える!


無事でよかったと安心する気持ちと、わくわく感で心臓がバクバク言っていた。


目的地の少し手前の開けた場所に着陸させて。翼竜ドドリゲスにポンポンと、ねぎらう。


「よく頑張ってくれたね、ゆっくり休んでて。」


そして、ヤマト達の元へと走った。


ヤマト達の元へと到着したら、すぐ違和感に気がついた。


「あれ?」 


1・2・3……。一人多い。


リリスはいる。いつものとおり凄い綺麗だ。腕を組んで偉そうに立っているのは、平常運転だ。


でも、あのピンクの髪の毛の女の子は?それにブルーの髪の女の子は?

あれ?ヤマトは?


そのブルーの髪の女性はとても目立つ。


セミロングの髪の毛、眉目はまるで彫刻の女神のよう。アゴのラインなんて、はっきり言って芸術だ。でもまだ子供だ……。美人と言うより。


(超美少女……。)


そんなイメージを持った。


もしかして、ヤマトの彼女?


いやいや、ヤマトはまだ10歳のはずだ、恋人とかは早いだろう。


やばぃ……混乱してきた。


すると、そのブルーヘアーの美少女が声をかけてきた。


「ルシナ!久し振り!!」


え?なんかあの女神が話しかけてきた!


やばい接近すると、超綺麗。


ザ・女神!キングオブ・ゴッデス!


「あの〜。どちら様ですか??」 


いきなり敬語になってしまったボク。


でも本当に分からないんだもん。


その青髪の女神は、一瞬キョトンって顔をして笑った、こ、これはたまらない。綺麗すぎる。


この美少女は一体?


「な、何言ってるの!ほら!俺だよ!ヤマトだよ!じゃあ、これなら分かるかな?」


その女神は、片手で輪をつくると口元に持っていった。


これはエルフの感謝の印だ。昔、ヤマトに教えて上げたエルフの礼儀作法だ。


「え?ええ!?もしかしてヤマト!?」


すると、彼女……。もとい、ヤマトは頷いた。


「ええ!?」



////////////ヤマト視点に戻る////////////


ルシナだ!!向こうから走ってくるのはルシナだ!


(おおぉ……。相変わらず綺麗だ。金髪の美少女は絵になるな!)


金髪のゴージャスなロングヘア。キリリとした目。でも口元に幼さを残す絶妙なバランス。エルフの美しさを、完璧に表現してる。


身長は……あれ?縮んだ?


いや、俺が少しおっきくなったんだ。それでも、まだ全然ルシナのほうが大きいな。おそらく175cmはある。エルフって背が高いよね……。


あれ?ルシナが俺の目の前まできたのに、キョロキョロして話しかけてくれない。


どうしたんだろ?


「ルシナ!久し振り!!」


ルシナは、ギョッとした顔をみて俺の顏をマジマジと見つめている。


な、なんだ……?


こんな美人に見つめられると、ドキドキしちゃうんですけど?


すると、ルシナが恐々と言った体で質問してきた。


「あの〜……。どちら様ですか?」


「へ?」


へ?え?


ああ!そういうこと!?


俺が大きくなったから、分からない?


だったら、これならどうだ!!


「じゃあ、これなら分かるかな?」


俺は昔ルシナにならったエルフの挨拶をしてみる。片手で輪をつくると口元に持っていった。


すると、ルシナの表情が驚愕に変わっていく、


「ヤ、ヤマト?え、えぇ!?」


どうやら、やっと俺だと分かったようだ。エルフなのに表情豊かだよねルシナって。


相変わらずだ。


でも分かってくれて良かった。


つーか、そんな変わったか? 俺。

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