第128話 翼竜襲来?

「リミッター?」


『そうだ。良いか?よく聞け。』


「あ、ああ。」


『龍族、エルフ、人族に限らず。これはどの人間にも当てはまることなのだが、人は知らず知らずのうちに自分の能力をセーブしているのだ。』


「……何故?」


『体が壊れてしまうからだ。』


「……あ、聞いたことがあるかも。」


『ほう、どういうことだ?聞かせてみろ。』


「えっとな……。俺の地球に居たときの知識なんだけど……。」


俺は龍眼に、俺の知識を共有した。


【安全装置(リミッター)】

「火事場の馬鹿力」という言葉を聞いたことがあるだろうか?


人間は生命に危機が及ぶと普段では信じられない力を発揮すると言う。


これはどういうことか?


人間には潜在能力というものが備わっており、従来よりも質的や量的に高い能力が内在しているとされている。しかし、それをフルスロットで出すと、肉体は過剰なパワー出力に耐え切れなくなってしまい、身体はボロボロになってしまうのだ。


それを避けるため、人間の脳にはあらかじめ安全装置(リミッター)がかけられていて、発揮できるパワーに制限がかかっている。

そこまで聞いた龍眼は満足そうな声を出した。


『大体同じだ。そのパワーというのは、魔力出力と考えれば良い。』


「魔力出力……。」


『そうだ。小僧、お前の魔力は尋常ではない。どういう訳かお前の魔力は、神と同等レベルなのだ。』


「え?それって捕食で?」


『いや、違う。考えてもみろ。お前が魔力測定をしたときには捕食を行っていなかっただろう?』


「……確かに。」


『吾輩は、こうして魔眼として会話できる前から小僧の動きを見ていた。お前は特異体質なのだ。』


「と、特異?」


『うむ。おそらくだが、地球という星に転生したことが良い方向へ進んだのだろう。』


「え……。でも、地球って魔法とは使えないぞ?」


『それが良かったのかも知れん。9世代から11世代まで魔力を使うことなく、魂の中で魔力レコードが熟成されたのだ。』


「熟成……。お肉みたいだな。」


『ふ……。うまいことを言う。そうだ。お前の魔力の才能が、使われない世代を得たことで熟成されたと吾輩は思っている。』


龍眼の説明では、こうだ。


■9世代から11世代まで魔力を使わない世代があった。(地球世代)

■それにより、魔力レコード(?)が熟成された。

■12世代目にあたる俺で、開花。

とのこと。


『吾輩の見立てではオステリアや、上位神クラスの才能を持っていると見込んでいる。』


「お、俺に魔法の才能が……?」


半分以上、諦めていたので嬉しい話だ。身体属性だけでは戦闘パターンに限りが生まれる。


俺はいっぱしの魔法使いになれるのかも知れない。


(は!……と言うことは!?)


俺は期待を込めて聞いてみることにした。


「じゃ、じゃあ。もしかして俺の魔法適性って増えるのか!?」


『間違いなく。1属性で終わるような才能ではない。カリアースを超えるぞ。』


「カリアースって全属性だったぞ。さすがにそれは……。」


『カリアースは全属性だったと言われているが、全属性ではない。』


「え?どういうことだ?」


『カリアースは重力、雷、時空属性は持っていない。全属性などではない。』


「じゅ、重力……!?それってユニーク属性ってこと?」


『うむ。まぁ、呼び方はこの時代ではそうなるのかな?この時代と吾輩の時代では、認識が異なる。吾輩の時代では、重力属性などは憧れの属性であったぞ。』


新情報が続々とで消化しきれない……。


『どうだ?興味が湧いてきただろう?』


「ぜ、是非お願いしたい!リミッターを外してくれ!」


『直ぐには無理だ。外すには注意することがある。』


「注意?」


『うむ。小僧の肉体は未だ未成熟。10歳という年齢ではリミッターを外すのは危険なのだ。』


「そ、そうなのか……。」


俺はガックシという感じで肩を落とした。


『そんなに落ち込むな。時間が解決することだ。それに今から訓練をしていけば、徐々に属性が増える。』


「まじでか!」


『う、うむ。食いつきが良いな。よほど、1属性が嫌だったと思える。』


「うぅ……。俺は言葉には出さなかったけど、コンプレックス感じては居たんだよ。」


『そんな感じは”おくび”にも出していなかったようだが?』


「そりゃあ……。最初は魔法が使えるだけで嬉しかったから……。でも時間が経つにつれて”あれ?俺って平凡?”みたく感じていたんだよ。」


『なら良かったわい。』


ぶっちゃけ、魔法属性が増えるかも?って思ったら興奮して一睡も眠れなかった。


やるぞ!ラノベでも、主人公は魔法を使いまくって無双していた。俺もそんな主人公になるんだ!

こうして、夜が明けた。


「どうした?ヤマト?目が真っ赤よ?」


リーランが俺が睡眠を取れていないことを心配していたが、そんなものは関係ない。俺は気力に満ちていた。


「良し!出発だ!」


「やけにヤル気じゃのう。左目を昨日失った奴とは思えんわい。」


出発しはじめると、俺達は聞きなれない音を不思議がった。


バサ……バサ!


「リリス?何だ?この音……?」


「これは……。」


リリスは少し緊張した声を発した。


「ヤマト?聖龍の加護は発動しているか?」


「そ、そりゃあ。ちゃんとやってる。この前失敗したばかりだからな。」


「おかしいのぅ……。」


しかし、リリスの不安は的中したようだ。


上空に巨大な翼竜が現れた。


一気に、俺達の緊張が走った。


リリスが叫ぶ。


「翼竜だ!戦闘態勢を取れ!」


しかし、俺は首を傾げる。


「あれ……?誰か乗っていないか?」


「うん?そうね。誰か乗っているような気がするわ……。」


巨大な翼竜の上にまたがる人物が、徐々に鮮明になる。


それは……。俺が良く知っている人物だった。


「ル、ルシナだ!」

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