第126話 解明いろいろ

龍眼を得たので、出発前に使ってみようということになった。


完全に玩具を手に入れたノリである。


「ど、どうやって使うんだろう?」


「知らんわい。魔眼待ちは特殊じゃし。とにかく何かやってみぃ?」


「な、何かって……?」


「リキむとかじゃなかろーか?」


「そんな、トイレじゃあるまいし。」


バカな会話を繰り広げる俺達。


リーランは呆れている。


とりあえず、俺は左目に魔力を込めてみることにした。


「ふん!!!ふぬぬぬぬ!」


俺は期待をこめて、皆に聞いてみた。


「ど、どう?何か変化ある?目から光線出てたりさ」


「いや、まったく変化なしじゃ。」


「え?うそ……。」


「本当よ、ヤマト。」


「え?リーラン……。ちゃんと見てよ。ほら、軽く目が光っていたりもしない?」


「元からボンヤリ光っているけど、それ以外は……。」


「むしろ、アホみたいじゃぞ。ヤマト。」


「う、うるせーよ!」


俺は目に魔力を込めるのを止めて、溜息をついて肩を落とした。


「なんだよ、シルバーアイになっただけ?しかも光ボンヤリ光っているのって、生活に支障あるし!」


「そんなはずは無いのじゃがな……。」


リリスは顎に手をおいて考えだした。こうなると、話しかけてもロクな返事は返ってこない。


「つまんない……なんだよ。銀色の眼はかっこいいけどさ。」


「古龍がそれだけのために龍眼を授けるとは思えないけど……。きっとすごい力があるんだよヤマト……。わかんないけど。」


そのとき、再び誰かが語りかけてくるのを感じた。


『力を入れても。無駄。イエンムトよ。』


「!?」


間違いない。先程も、そんな気がしたのだが驚くべきことに、龍眼が俺に語りかけてきているようだ。


「お、お前は何者だ!」


リリスとリーランが突如しゃべりだした俺を不思議そうに見ている。


「どうしたのじゃ?気でも触れたか?ヤマト。」


「え?またグリーンドラゴン?」


リリスとリーランは、顔を見合わせている。


(お、俺だけに聞こえるのか……!?)


「魔、魔眼が話しかけているのか!?」


『そうだ。吾輩は龍眼。古龍グリーンドラゴンより、オヌシを助けるよう命令されておるゆえ。』


「ちょ、ちょっと待て!お前、眼のくせに喋れるのか!?」


『そうだと言っておる。イエンムトよ。』


「イエンムト!?俺はヤマトですけど……。」


リリスとリーランは、さすがに咎める。俺が何やらブツブツと喋っているのだ。そりゃそうだ。


「どうしたのじゃ、ヤマト?」


「お腹でもいたいの?」


リーランとリリスに声をかけられて、俺は振り返る。


「いや、龍眼と会話中……。」


「「え?」」


驚く二人をそのままに、俺は会話を続けた。


『イエンムト。こうして会話出来るとは夢にも思わなかったぞ。息災で何より。』


「だ、だから。俺はイエンムトじゃねーって。」


『今生は、何という名前なのじゃ?』


(な、なんだ?まるで俺が何度もこの世界に生き返ったかのような……。)


「ヤ、ヤマトだけど。」


『ほう……。家名は?』


「ドラギニス……。ヤマト・ドラギニス。」


『ほうほう。良い名じゃな。』


「どうも……。」


何も居ない空間と会話を続けるヤマトに、リリスとリーランは苦笑いをしていた。


(俺って、あれだな。電話越しにペコペコするオッチャンみたいだな。)


『して、状況を共有したい。今までことを全て話せ。イエン……ヤマトよ。』


「……え?」


戸惑う俺。


どこまで龍眼に話して良いものだろうか。


リリスに視線を送る。


「どうしたのじゃ?」


俺は全て状況をリリス達に話した。


二人は驚いていた。


「しゃ、喋る魔眼とは珍しいのぅ。」


「は、初めて聞きました。母上。」


「ワシも文献で読んだくらいじゃ。」


「ところで、龍眼が情報共有したいから話せって。言ってるけど?どうする?」


俺は、この会話を龍眼が聞いているだろうことは予想していたが話した。自分の眼だけに、隠し事は不可能だし。


「話せば良かろう?」


「え?いいのか?」


「問題ない。魔眼とは宿り主の絶対的味方。裏切らぬ。」


「そ、そういうものなの?」


「ああ……。それにこの先、自分の眼に隠し事は不可能じゃ。腹をくくれ。」


「わ、分かった。」


俺は自分の眼と対話するという不思議な時間を過ごした。


そのかわり、龍眼も重要な情報を与えてくれた。

『ふむぅ。そんなことになっておるのか。吾輩は理解したぞ。ご苦労。』


「お、俺は龍眼の話のほうがビックリだ。」


俺の話はさておき。龍眼が話してくれた内容は、龍神族の歴史だった。


それは壮絶だった。


龍眼の名前はパラメン。


生前は、龍神族の王様だったと言うのだ。


今は滅亡して久しい龍神族の最後の国王。第20代龍神族王:パラメン。銀龍王パラメンと呼ばれていたようだ。


パラメンには一人娘が居た。それは白龍と呼ばれる。


そして白龍の夫は黒龍。

龍神族の歴史については、

※※ 参照:第49話 世界創生神話 ※※

話をまとめると、以下だ。


■はじまりの精霊。

■龍神族王:銀龍王パラメン

■白龍:パラメンの娘。

■黒龍:白龍の夫。

イエンムト:白黒龍の息子(パラメンの孫)。


そのうち、パラメン(銀龍)と白龍と黒龍の3つの魂が、イエンムトの魂と融合。

はじまりの精霊が、イエンムトと融合。

最強の魂が完成。

しかし、副作用としてループ転生が発生。さらに、イエンムトは捕食をすることが義務付けられる人生が待つことに……。


俺は、龍眼が話した内容を全てリリス達に共有した。


「な、なんと!」


「そんな悲しい歴史が……。」


俺とリリス、そしてリーランは、その話を聞いて驚きを隠せない。


「そ、それで……。”『称号』:三つの龍を宿すもの”って、そのことだったんだ。」


「はじまりの精霊!それがヤマトのことなのか!道理で、根源精霊との混血と表示されるはずじゃ。」


「ちょ、ちょっと整理するとさ。俺の魂には、龍神族・はじまりの精霊。が混じっているということか?」


すると、龍眼が会話に参加してきた。


『うむ……。そして、オヌシの今生の転生先は龍人族。それが混じって3種族の混血種として誕生したということだ。』


こういうのって、ハーフじゃなくてミックス?そういうの?


リリスと俺は顔を見合わせた。


謎スキルの捕食・種族・称号。それらを俺が保持しているのか、謎が解けた気がした。


ぶっちゃけ消化し切れないっす。


そこでリーランが、たまらない!という感じで質問をしてきた。


「ヤマト!龍眼に聞いてもらえない!?」


「どうしたんだ?リーラン?」


「…………っ。」


リーランは何か躊躇っているようだ。


「?」


やがて、リーランは決心したように口を開く。


「カリアースは……、カリアースは……!もしかして、ヤマトの前世なのでは?」


「……!?」

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