第116話 遭難
あれから、もう1時間は歩いている。
しかし……。俺達はある問題に直面していた。
「ま、迷ったな……。」
「じゃな。」
「うん。そうね。間違いないわ。」
頷き合う3人。
遭難しかけていた。
セイルシールドの丘はすでに樹海と化しており、まったく方向感覚が掴めない状態だったのだ。
頂上までは良かった。まっすぐ登って行けば良いのだから……。しかし、下りで問題が浮き彫りに……。
数年前に通った道が分からない。
ウロウロしているうちに、元に戻ってしまってたりする。つまり遭難しかかっているのだ。
「リリス、何とかならない。?俺、全然検討がつかないんだけど……。」
「ならん……。」
「こうなるとお前が頼りなのよ。こーぐるぐる同じとこ回ってるとさ。」
「うるさいわい!判らんもんは判らんのじゃ!しかし、こっちが西じゃから計算上座標は……。」
何やら計算をし始めたリリス。長くなりそうだ。
「……リーランは?」
リーランは苦笑いをした。
「私に期待しないでね?私は方向音痴なの……。」
「お前、地図の読めない女なのか?」
「うるさいわよ。仕方ないじゃない!」
「お前ら似たもの親子か!※」 ※リーランはリリスの養子。
ギャーギャーワーワー、うるさい状態で下山している俺ら。
もはやピクニックである。
さらに彷徨うこと2時間……。
完全に道に迷った……。遭難と言っても良いかも知れない。
「疲れたな……。」
「そうね。」
俺達の基本スペックはかなり高い。スタミナも相当にある。ただ、疲れたのだ。身体的と言うよりも精神的に来るものがある。
「そろそろ夕方だし、陽も落ちてきたな。」
「はぁ……。幸先悪いのぅ。」
リーランが、俺たちがウロウロしていて一向に進まないのを見て苦笑いした。
「母上、そろそろ野営の準備をしたほうがいいかも知れませんね。」
「そうじゃのぅ……。」
リリスとリーランは夕陽をバックに相談を始めた。
リューグーから持ってきた野営グッズを取り出すべく、スキルを発動しようとした時、何気なくリーラン達を見た。
俺はそれを見て驚いた。
「おぉ……。」
(うわ……なんかすげーな……。)
驚いた理由は、その二人の姿がとても美しかったのだ。
(……「絵になる」な。)
まるで、絵画から女神が二人飛び出してきたようだ。夕焼けをバックにとても美しい。
ポヶーっと俺は呆けていた。その時だった……。
「グオオオオォォ!!!!」
ドン!ドン!
地響きのような叫び、地面を揺るがすかのような大きな足音が響いた。
地響きが近づいてくる。
「な!?なんだ!?」
「な、何か近づいてくるわ。ヤマト、母上!警戒して!」
「この足音は……。」
リリスは俺をジト目で見てくる。
「ジィ……。」
「な、何だよ。リリス。そんな目で見て……。照れるぜ……。」
「照れるな!オヌシ……まさか聖龍の加護も忘れてないじゃろうな?あれで竜遭遇率を下げられるはずじゃ。まさか展開し忘れて……。」
俺はハッと気がつく。そういえば……。
「あ……しまった。加護を展開し忘れていた。」
そのときの俺は、相当間抜けな顔をしていたと思う。そして急いで加護を発動した。
「加護:竜支配(龍王の加護)!オン!!」
一瞬、俺の体がポワっと光る。
「ふぅ……。これで安心。」
「アホウ!今さら遅いわい!」
「だ、だって仕方ねーじゃん!2年半振りなんだぜ!?」
「と、とにかく。ミスリルソードを出しておけ。地竜の可能性が高い。身体魔法の準備もじゃ。」
「わ、分かった」
俺はリューグーの中から持ってきたミスリルソードを、ディメンション・ボックス(次元格納箱)から取り出す。
キラリと夕陽を反射するミスリルソードは、手に持つと驚くほど軽い。確かに、地竜の鱗を切り裂くにはミスリルソードは必須だ。
(ただ……。俺、剣技は全然なんだよなぁ……。)
ドン!ドン!ドン!!
足音が大きくなり、すぐ近くにいる気配を感じる。
「むちゃくちゃデカい魔物だ。ちょー怖いんだけど……。」
「ふむ、これはヤバイかも知れん……どこかのアホのせいで地竜と遭遇するはめに……。」
「うるせーよ!リリス!」
「ちょっとぉ!静かにしなさいよ、二人とも!!」
ギャーギャー騒ぐ俺達に、とうとうそれは姿を現した。
ドガン!!
目の前の木がなぎ倒された。まるで爆発が起きたかのような音に俺は驚き、視線を上げる。
「な!?」
現れたモンスターをみて、俺は驚愕した。
そしてリリスが叫ぶ。
「地竜だ!」
『 地竜 』
竜種の亜種。姿は恐竜に近い。知能も低く人語は理解しない亜竜。リリスに言わせると「トカゲのようなもの」とのこと。しかし、トカゲのように可愛いものではない。当然のごとく肉食で、野生の地竜は非常に危険。姿形は、地球にいたとされるティラノサウルスに似ている。手足は太く短い。ちなみに翼もなく空は飛べない。主な攻撃手段は牙と尾だ。長い尾に営利な鱗が変形しかのような三角形の硬質な「刃」がついており、これに叩かれると、鎧など貫通して吹き飛ばされてしまう。また、この地竜が厄介なところは、牙、尻尾 この二つを避けたとしても、防御力が非常に高くまず剣が通じない。通常、地竜を倒すには30人以上の冒険者が必要とされており、まず単独では倒せない。
「あわわわわ!!ほ、本当に出たぁ!!」
「お前のせいじゃろ!!アホ!!バカ!!」
「う、うるせー!!お前だって忘れてただろ!!」
「ふ、二人とも!!喧嘩している場合じゃないわよ!!来るわよ!」
「!!」
突如、地竜と俺の戦闘がはじまった。
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