第3章 帰還

第112話 10歳になった!

※※時は流れ2年と半年の月日が流れた※※


あれから3年弱……。地獄の訓練(訓練という名の調教)は過酷だった。 


魔法訓練で死にかけたことは1度や2度ではない。つーか毎日死にそうだった。


「長かったなぁ……」


遠い目をする俺。


どう大変だって?まず、日々24時間やらされていたのは、肉体強化という名のもとに、俺は3年間、体中にスプリングのついたギプスを取り付けられていた。


リリス命名「大魔法使い養成ギプス」


そもそも、魔法使いなのに、筋力的なトレーニングって意味あるの?!


さらに四肢には100kgの重りをつけられて生活。全部で400kg……。俺は捕らえられた猛獣かよ!


訓練の一環として、俺はキング・ゴブリンの群れに落とされたこともあった。あれは本当に死ぬかと思った……。キング・ゴブリンって確かSランカー討伐推奨だったよね?その群れに落とすとか、リリスは鬼だ。


魔法耐性強化のために、磔(はりつけ)にされたまま、リューグーの攻撃機で攻撃魔法を撃たれ続けたりしたこともあった。


実際、生きているのが不思議なくらいだ。


俺って、年齢的にはもうすぐ10歳。日本でいえば小学生くらいなはずだ。「これ虐待じゃないよね?!」と途中、何回か疑問に思ったよ。


ちなみに、このリューグーで魔法理論も学んだ。その辺りは、リリスのお得意分野だった。


そのお陰で、この数年で俺の座学はかなり進んだ。もともと、この体は地頭が良いのか、スイスイ知識を吸収していく。今なら魔法陣をかなり精密に描くことが出来る。


ただ、俺の属性が身体強化のままなのは変わらずだ。


しかし、身体強化は既にLv4に到達している。リリスも、この成長には驚いていた。


「普通なら天才と言わざると得ない、すばらしい……身体強化魔法使いとしては優秀じゃ。さらに魔法理論とかなり進んでいる。」という評価。


リリスがここまで褒めるのは余程だ。


実際、俺は魔法学なら王宮魔法使いの域まで達している。身体強化は、実力的には人族のSランクを超えるレベルらしい。10歳の子供がだぜ? 


しかし、剣技だけは一般的レベルに落ち着いている。教育を受けた10歳の剣技とあまり大差ない。


剣技にいたっては、これは完全にリリスが悪い。彼女は魔法使いに特化した訓練しかしてくれなかった……。


「しょせん子供の肉体。あまり上昇は見込めん。それより魔法の知識と技術をアップさせるべきじゃ」と、剣技に重点を置かなかったのだ。


リリスって剣が嫌いなんじゃないの?


一方、「スキル」については、かなり訓練と捕食をしたため。めちゃくちゃ増えた。スキルレベルも向上している。ゲールクロー『疾風爪』なんかは、目を瞑っていても出せる。


10歳になり、俺の身長も伸びた。今では身長も160cmある。10歳で160cmってかなり高いのでは??


まぁ、俺の2年半の成長結果はそんなところだ……。


今はリューグーの食堂(食堂という名のレストラン)で、俺とリーランとリリスは食事を取っていた。


俺とリリスは正面に向かい合うように、リーランは俺の横に座っている。


テーブルの上には、さまざまな料理がならんでいた。豊かな香気が俺たちの鼻腔をくすぐっていた。


俺は丸焼きにされた鳥料理にナイフを入れて、そのまま口に運ぶ。


「もごもご……うまい。俺の身長ってさ。平均より上だよな?」


リリスも食事を取っている……、リリスも普通に食事を取れることが判明している。普通に味も判るらしいので、リリスは食事を取ることを楽しみにしている。もはや普通の人間と大差ない……。違いと言えば、魔法を使えないことくらいか。


彼女は、完璧なプロポーションを椅子に押し込め、背筋良くパンを手にとり、口に運んでいる。所作が綺麗だ……。リリスは俺の質問をうけ、こちらに顔を向ける。


「龍人族の平均身長は185cmじゃ。それでも成長は早いほうじゃ。」


「ふーん。じゃあ、あと20cm以上伸びるかもな。」


「今のヤマトからは想像つかないけど……どんな容姿だったのよ……」


「ヤマト。口にものを入れながら喋らないでよ。もう。」


「ごめん……リーラン。」


「母上は、この数年でヤマトに礼儀作法を教えるのを忘れていましたわね」


「ふむぅ……まぁ、地上に出てからでも遅くはあるまい。」


そんな雑談をしながら朝食を楽しむ俺達……。


いつもの食事風景だ……。しかし、この食事風景もまもなく終わりを告げる。


ぶっちゃけ、このリューグーには想い出がいっぱいだ。


「地上か。俺の成長を見て、みんなどういう反応するかな。」


「ふむ。ぶったまげるに違いない」


リリスが、紅茶を口に運びながらそういった。


「え?なんでだ?」


「おヌシのその容姿じゃ。女子どもが放っておくまい。」


俺は首をかしげる。


「俺の容姿が?……」


「ヤマト、あなた自覚ないだろうけど。相当にキレイな顔をしているわよ?」


「え?そう?」


これは謙遜ではなく俺は真剣にそう答えた。毎日見慣れている顔なので、ほとんど無自覚なのだ。転生前は「イケメンだったら……」とか思ったりもしたこともあったが、実際イケメンになると「うわぁ……俺って超イケメン……」なんて鏡に惚れることもない。 そんな奴がいたら、そいつは病気だろう……。


「イケメンというか、ほとんど美少女よね……。」


リーランは、俺の顔みて「美少女……美少女」とよく褒める。それって褒め言葉なのか疑問だが……。


「いや、俺は男だから……。」


「普通に歩いていたら、ロング青髪の超絶美少女で男から声かかるんじゃない?おそらくお金出すから、絵をかかせて欲しいとか画家が申し出るんじゃない?」


そりゃ言い過ぎだろう。


「だから、俺は男だって……。」


「それに身長だって、これから大きくなるわよ。龍人族だけじゃなくて龍神族の血も入ってるんでしょ?龍神族って平均身長高いという書物があるわ。」


「へー。」


ということは、これから俺の身長はまだまだ伸びるんだな……楽しみだ。


しかし、リーランが俺を見る目が少し艶っぽいのは気のせいだろうか……。


たまに俺がフロ上がりに上半身裸で水を飲んでいると、顔を赤くしているのも気になってはいた……。


身体的には少年から青年に近づいているため、そういうことにも気を入れないといけない年齢なのだろう。


そんなリーランを見て、リリスが……。


「間違いがあってはならん。」


ということで、同室に二人きりでいることを禁止していた。ちょっと残念に思う俺であった。


「そういやさ……。俺の誕生日っていつだっけ?そろそろ10歳ピッタリになるはずなのだけど……」


すると、リリスが片眉を上げて答えた


「何じゃ。オヌシの誕生日ははっきりしておらん……しかし、逆算すると……そろそろ……。」


その時だった、船内にアナウンスが流れた


【船内龍人族の10年生存信号を確認しました。これよりセイルシールド頂上付近に戻ります】


「え!?もしかして今日!?」


「おぉ。そうじゃったか。これではっきりしたのぅ。」


(きた!……とうとうだ……とうとう10歳だ!)


そう!とうとう、この時がきたのだ!!


今日、俺はリューグーを出ることになった。


「とうとう会えるんだ!母上と父上に!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る