第111話 新しい生活と落下 ※第2章 魔王復活 完※

//////ヤマト視点に戻る//////


そうして、俺達はリューグーの第一艦橋に戻った。


すでに機械人形達が動きはじめていた。


20以上ある席に座り計器をチェックと操作している。異様な光景だ。


このリューグーは基本的には、人工生命体であるリューグー一人で運転できるようだが、ある程度、人手も必要なようだ。艦長席にはリリスが座っている。


忘れてはいけないのは、稼働エネルギーとして下にいると言われているホムンクルス達が自転車を漕いでいる点ね。今度労いに行ってみよう。


中央にある巨大ディスプレイには、パープルカラーの髪の美しい少女が映っているのだ。


しきりに、機械人形たちに命令を下している。


この美しい少女は、人工生命体である「リューグー」だ。なんでも幼いときのリリスを模写したものらしい。


(リリスって、子供のときから美少女だったんだな……)


でも、このリューグーちゃんは、全身を投影すると萎える。体が筋肉ムキムキの男性のものだからだ。


艦長席に座るリリスは長い脚を組んでいる。前から見たら、さぞ魅力的なポーズなのだろうが、するどい目を画面に向けながら指示を飛ばしている。


「進路および、周辺の魔人レーダーに異常ないか?なければ、ステルスモードに移行するのじゃ。ロック制御1番から350番まで解除。砲門は閉じたままでいい」


リューグーはリリスの命令を受けて頷く。


「コード1212。アドミニストレーター権限によるリューグー周回モードに完全に移行しました。ステルスモードに加えて人口雲を纏います。許可をください。マスター。」


リリスは満足そうに頷く。


「うむ。許可する。さらに人口雲装置を起動。ズレ軸を自動補正モードに移行、固定とする。」


リリスは艦長席から降りると、「ふう」とため息をついた。そして俺達に告げた。


「もう安全じゃ。ワシたちは3年の時間を得た。」


「3年か……。3年後に俺は両親に会えるんだ。」


ヤマトの表情は暗くなかった。むしろ笑顔だった。


未来への目標がある限り、人はいつでも笑えるのだ。


ヤマト達の旅は、はじまったばかりだった。

と、思っていたら……。


「さ。修行を始めるぞ。ヤマト。」


リリスは、何事もなかったかのようにヤマトを別室へ誘った。


「え?何々?トレーニングルームでもあるのか?」


その別室は船底にあった。


「ここは?」


周囲には何もなく。無骨な鉄の壁があるのみだ。


リリスが叫ぶ。


「リューグー!ハッチを開け!」


『はい、マスターリリス。転出ハッチを開きます。』


そういうと、部屋に一角が


ガコン!と落ちると、外が露出した。


ブアアア!!!


気圧の変化から、外に飛ばされそうになる俺。


「うわあああ!!お、落ちる!た、助け!」


とっさに近くにあった手すりに摑まるヤマト。


「何をしておる。降りんか!」


「な?ど、どういうことだぁぁ!!」


突風の中、ヤマトは叫ぶことで会話を成立させようとした。


「3年の時間を無駄に出来ん。捕食をするのだ。」


「はぁぁぁ?もう船に乗ってしまったじゃん。何言ってんだぁぁ!?」


「ああ……。それなら問題無い。」


「ど、どう言うこと?」


心配そうな顔になるヤマト。つーか、助けてくれと言う顔だ。


リーランは何か思い当たるのか。「かわいそうに……。」という表情をしている。彼女は彼女で、手すりにつかまり。振り落とされないように必死だ。


「リューグーには転出入送機能がある。魔獣の森に寄ったら、都度落としてやる。1日1魔物を狩ることを目標としようぞ。」


「ま、待て!そしたらリューグーに戻れなく……。」


「大丈夫じゃ。自動回収機能もある。狩りが終わったら、回収してやる。」


「じょ、冗談だよね?ね?」


ヤマトが懇願するような顔をすると、リリスが笑った。


「冗談は嫌いじゃ。」


ガン!


リリスはヤマトの手を蹴り上げると、外に投げ飛ばされる。


そして、自由落下がはじまった。


「ふざけんなぁぁぁ!!」

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