第109話 魂の謎

リリスが俺を転生させたのはオステリアではないと、言い出した。


「うむ。悪魔バフォラットが気になることを言っておった。」


「何だっけ?」


「うむ。”神崎の魂に気が付かないとは滑稽だ。”と……言っておったのじゃ。」


「ああ。そんなこと言っていたな。」


「母上。悪魔は人を欺きます。」


「いや。それは重々承知しているのじゃが……。いくつか気になってのぅ。」


「何かあると?」


「うむ。前から変じゃと思っておったのじゃ。ヤマトを転生させたのは誰なのか?と……。」


「それはオステリアが濃厚だと思っていたけど、そうじゃないのか?」


「それとも、あの邪神が何か狙っているのでしょうか?母上。」


リリスとリーランは、オステリアのことを女神とは呼ばずに”邪神”と呼ぶ。それは一致していた。


「うむ。ワシもその可能性が高いと思っておったのじゃが。その可能性が低くなったと思っておるのじゃ。」


「低く?」


「そうじゃ。どうも悪魔バフォラットは、オステリアからの依頼で動いているようじゃった。それだけは間違いなさそうじゃ。」


「確かに……。悪魔が神の命令を聞くことは稀ですけど……。」


「そうじゃ。ましてやバフォラットは純血の悪魔族。そうそう容易く動くような悪魔ではない。」


「では……。」


「安易な推測は危険じゃが。それでも今回、オステリアがパフォラットに関与したはずじゃ。これは間違いない。」


「何故ですか?母上。我らには判りません。」


「うむ。良く聞け……。」


「うむ。幾つか理由がある。まず1つ目として、バフォラットがワシらを発見した事実。……それそのものに違和感がある。」


「たまたま偶然じゃないのか?」


「いや、いくつかそうではないとする点がある。その前に魔人10体が居たな?」


「ああ。居た……。」


あの白い肌の魔人を思い出すと、寒気がする。


「あれも変じゃ。あの直後にパフォラットがきた。恐らく、バフォラットは魔人を尾行していた。」


「悪魔が魔人を尾行?」


「そうじゃ。そうでなければ、説明がつかん」


「確かに…。」


「魔人が地上界に降りてくるタイミングを監視出来るものなど、神以外にいない。それにバフォラットはオステリアの名前を出していた。」


「やはり、オステリアが悪魔をけしかけたと?」


「うむ。間違いない。それに魔人は上からの命令で動いていたのじゃろうな。そこも重要じゃ。」


「魔王の?」


「うむ。エングルド以外の違う魔王、もしくは配下じゃろう。」


「確かに、その魔人の群れはおかしいですね。母上の言うとおり、魔族の誰かが動いているのでしょう。」


「魔族は何故ヤマトの居場所が判ったのでしょう?魔王はそれほど力を持っているのでしょうか?」


「おそらく偶然じゃろう。」


「ぐ、偶然?」


「うむ。あの魔素の満ちている森でヤマトを探す事は不可能じゃろう。数だけは優位な魔族。索敵部隊は優秀じゃ、数や魔界からのゲートが使えることを武器にヤマトを偶然見つけ、そして動いたのじゃ。連鎖的にそれをオステリアが察知したのじゃ。」


「なるほど、魔族の動きであれば神側で、ある程度補足出来そうですね。」


「それだけでは無い。この事実そのものが、これはオステリアが、転生に関与していない証拠じゃ。」


「ど、どうしてだよ?」


「もし、オステリアが転生させた張本人であるのなら。ここまで魔族の関与を許すはずがない。」


「確かに……。」


リーランは納得しているようだ。


「え?どうしてそうなる?」


「ヤマト。神と言うのは、そこまで愚かではない。転生させた者を”使徒”として使うのは常識なのじゃ。何か狙いがあって使徒を地上に派遣するのじゃ。その時に魔族の関与が無いように加護を渡すはず。」


「使徒……。」


「そうじゃ。もし、ヤマトが使徒であれば、何かオステリアから命令があったはずなのじゃが。現在まで何も無い。」


「確かに、オリテリアからの接触は、あの転生前の一度だけだ。」


「つまり、オステリアは自分で神崎……つまりヤマトの魂を呼び出しておきながら何も命令していない。且つ、地上界に居るヤマトを何度も危険な目に遭わせている。」


リーランが「もしや……、」という顔をしている。


「気がついたようじゃの。リーラン。これらはオステリアのコントロールからすべて外れておる。と考えれば自然じゃ。」


「で、でも。なら何故?何故……俺を一度神界に呼び出しているんだよ。」


ここから先は長くなるので、リリスの結論から言うと、以下が判ったらしい。

■転生させたのは恐らくオステリアでは無い。

■魔族の中でも魔王クラスが俺を狙っている。

■オステリアは、それを察知。バフォラットへ依頼した。

■神と魔族がヤマトを狙うのはヤマトの魂に謎があるらしい。


「何故、魔族や神がヤマトを狙うのでしょうか?母上。」


「それは……。分からん。材料が少ない。」


しかし、リリスは多少思い当たることがあった。それは、ヤマトの不思議スキル捕食だ。


あの捕食スキルは異常過ぎる。


リリスは思う。


(あのスキルを狙って?)


しかし、それだけのために魔族や神が動くには動機としてまだ足りないような気がした。


「いずれにせよ。ヤマトには謎が多い。これからが正念場じゃ。」


ヤマト達はリューグーに乗って新しい旅に出る。


その先に何が待ち受けようとも。

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