第108話 リーランと情報共有
「私は母上に封印された後、不思議な空間を漂うことになりました。」
「うむ……。ワシが無限結界にリーランを封じたからのぅ。あそこは悠久の時を漂う場。ワシが創り出した新たな界層言っても良いじゃろう。」
「はい。とても不思議な……。眠っているような……、夢を見ているような。そんな感覚を数千年も漂うことに……。」
すると、リリスが申し訳なさそうに告げた。
「本当に申し訳ないことをした。仕方がない処置とは言え、リーランをそんなところへ……。改めて謝るぞい。」
「そんな……。謝らないでください。母上。そのおかげで私はこうして生き残ったのですから!」
「…………しかし。」
「母上は丁寧に説明して下さいました。さらに私も納得の上でのことです。」
「すまぬ。リーラン。それにしてもじゃ。無限結界が数千年も破られずにおったことに驚きじゃわ。」
「はい。おそらく魔王の魔素が漏れていたことで、魔獣の森とセイルシールドの丘が魔活性化したことで、大自然の結界が出来たことも原因でしょう。」
俺はそれを聞いて納得した。
確かに、あそこの森の魔物の強さは半端では無い。あの魔物達が自然と結界への侵入を阻む結界の役割を果たしていたのだろう。
「私はしばらく外の様子を見ていました。多少でしたが、意識を外に向けることが可能なのです。」
「何と……。結界内から外の様子が感知出来たのか?」
「はい……。しかし限界もありました。距離は森の南部まで、感知する時間も限られています。」
「リーランだから出来たのかも知れぬのう……。」
リリスは思い当たることがあるらしく。何かを言いかけていたが、口を閉ざした。
リーランは続けた。
「魔王によって母上が殺されたあと……。レシータ巫女は仲間をあつめて戦いはじめました。しかし、やはり魔王の力は強く……とても敵いませんでした。」
「仲間とな?」
「加護をもつ数名を各種族から集めたのです。人族、エルフ族、ドワーフ族から5名をです。」
俺は俺は口を挟んだ。
「5大英雄のことだろう。人族の伝承にあるぞ。たしか…」
・炎の魔法使いガーネル(初代ラスタリス王)
・水精霊高いのラクォーネ
・竜殺しバンダイン
・閃光剣ハーネス
・黒岩盾のサーモン
「この5名だったな。」
「英雄だか何だか知らんが、龍人がすべて結集して敵わんのじゃ。いくら神の加護持ちでも無理じゃ……。」
「はい。おっしゃるとおりです。母上ですら敵わぬ相手を誰も倒すことは出来ません。世界は死を待つのみでした。」
俺はそこで口を挟んだ。
「ちょ、ちょっと待て!その英雄加護持ちの奴ら5人より、リリス一人のほうが強いってことなのか?」
すると、リーランが笑った。
「当たり前でしょう?ヤマト。龍人は別格よ。その中でも母上はさらに別格中の別格。5人が束になっても敵わないわよ。」
「そ、そうなのか……。そんなリリスって強かったんだな。」
「自慢じゃないが、ワシはカリアースの次に強かったからのぅ。ふほほほ!」
偉そうに胸を張るリリス。ちょっと腹立つ。
(でも、そんなリリスのさらにその上をカリアースは行っていたのか……。どんだけ強かったんだ。)
リーランは、軽く咳払いをして話を続けた。
「その後、レシータ巫女が私の力を結界内から引っ張り、そして魔王を封印するためのエネルギーにしたのです。」
「……あの女め……。おそらく、魔王を封印する際、リーランの魂を利用したんじゃろう。」
良く分からないが、どうもレシータ巫女は魔王を封印するのに、リーランの魂を利用したらしい。
しかし、魂を利用したり、魔王を結界に封じたり、レシータ巫女の技術は凄いものがある。
「仕方ありませんわ。世界が滅亡するかの瀬戸際でしたから。」
「……やってることは最悪じゃわい。」
俺はそのときの状況をしらない、リリスやリーランの気持ちを知ることはできないだろう。
「レシータ巫女は、私のエネルギーを利用しました。しかし、封印する際に巨大なエネルギーを必要としました。ちょうどリューグーが地中に封印されていましたので、レシータ巫女は、そのエネルギーと、私の魂エネルギーを使い、魔王を誘い出して封印しました。」
リリスは「なるほど」と、膝を打った。
「ど、どういうこと?」
「つまり。レシータ巫女だけの力では手に負えないから、リューグーの永久機関エネルギーとリーランの魂を利用したんじゃ」
「ふ、ふーん……。」
判ったような、判らないような……。まぁ、俺が考えても仕方ないだろう。結果として、そうなんだから……
「そして、あの場にすべて一緒に封印されておったのか。」
「はい。母上。それなら2000年以上が経ちます。」
「……。」
「……。」
(何だか暗くなってしまったな……話題を変えよう)
「リリス。リーラン。もう過去の話はこれくらいにして、これからのことを話そうか。」
その発言にリーランは、笑顔で応えた。
「そうね、大事なのはこれからだものね。」
リリスは、気になることを共有しておきたいと言い出した。その顔は真剣だ。
「どうした?リリス?」
「うむ。今回のことでハッキリしたことがある。」
「何ですか?母上。」
「あの女神オステリアがヤマトを転生させた者ではない、と言うことじゃ。」
「「え!?」」
俺とリーランは、驚いて顔を見合わせた。
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