第107話 リューグーのレストラン
レストランで、俺はメニュー表をみて仰天した。
「こ、このベアホークのステーキって?」
ベアホークって本で読んだことがあるぞ。超美味しい肉を持つホーク種。グルメ家の中では幻の動物と言われている。
絶滅種で手に入れるのは不可能なはずだ。それなのに普通にメニュー表に載っている。
「ああ、それは……ベアホーク味に限りなく似せているのじゃ。肉の食感もそっくりじゃぞ。」
肉を似せている……?俺の居た地球でも、大豆から肉を作る技術があったけど、そんな感じかな……。
「まじか……。」
「他にも食いたい放題じゃ。好きなだけ注文しろ、ヤマト。」
「まじか!」
「ドリンクも好きなだけ良いぞ!金はかからん。」
「まぁじかぁぁ!!」
「ヤマト……、うるさいわよ……。」
俺は調子に乗って、沢山のものを注文した。
出てきた食事は、自給自足の材料で作ったとは思えない味だった。
「肉、野菜、調味料など、すべてこの艦内で作り出しているものじゃ。」
バクバクバク……。
がっつく俺……俺は最近ロクなもの食べてないから、もはや飢えた動物状態だった。
「このオリンシア貝のクリームスープも絶品だな!!」
オリンシア貝は、これまた幻の貝である。噛むと旨みが果てしなく出てくる。特有の甘みは何の食材とも合うと言われている。そのオリンシア貝を使ったスープは絶品だった。
うま!うま!と、食べまくる俺をみて、リーランは笑ってみていた。
「もご……もご……、リーラン?どうした?」
俺がリーランに話しかけると、リーランは嬉しそうに答えた。
「ふふふ。その食べかた……カリアースにそっくり。」
「そう?」
「カリアースも沢山食べる人でね。ヤマトもそうなのね。」
「ヤマトとカリアースは一致する点が多いのじゃ。食いかたも確かに似ておるな。ふはは。」
うず高く積まれた皿の数を見て、俺も笑った。
(確かにいろいろカリアースの話は聞くけど、親近感はある。)
俺がそんなことを思っていると、リーランが口を開く。
「ヤマト、母上。そろそろ教えてください、なぜ母上は死んだのに、こうして生きているのか。それにヤマトのことも……。」
リーランは、俺のことをまっすぐ見つめて俺の言葉を待っているようだ。俺はリリスに視線を送る。
「どうやって説明しよう。リリス……。」
俺が転生したところから話すのが良いのだが……。
俺が相談すると、リリスは笑った。
「そうじゃの。オヌシの転生から今までを順を追って話せば良いじゃろう。時間はあるのじゃから。」
「そうか。分かった。」
「それにオステリアは神じゃから会話が聞かれる可能性も否定できんが……。このリューグー内には干渉できんはずじゃ。」
リリスの説明によると、神界からの干渉をブロックするバリアがこの船には組み込まれているようで、ここでの会話がオステリアに伝わることはないらしい。
「そんな機能まであるのか、この船は……。」
「もともと神や魔王と戦争をしていたからのぅ。この船はその最新鋭艦じゃ。」
「へぇ。」
俺は感心しつつ、リーランに説明をはじめた。俺が転生者であること。なぜリリスが俺と魂が同化しているのか、魔獣の森やエルフとのやりとり、龍王とのやりとりなど。そして、残してきた俺の育ての親であるマリーシアやリカオンのことも、すべてをリーランに教えた。
リーランは美しい顔を目を閉じて聞いていた。
「そうなの……辛いことを乗り越えてきたのね。ヤマト。」
「……。」
俺は何も言えなかった。
確かに辛くないと言えば嘘になる。しかし、リーランやリリスの人生から比べるとそこまで悲惨と言うわけでもない。
「母上も死んでしまっているのは変わらないのね……。」
自分の養母であるリリスが生きていたと喜んだのもつかの間、今いる存在は霊魂みたいなものであるということに寂しさを覚えたようだ。
「リーランや。」
「それにヤマトも龍人族ってことではないのよね?」
「ステータス上は、混血みたいだ。」
「そう……。純粋な龍人族は私一人なのね。」
「……。」
俺とリリスは、リーランを慰めるような言葉が見つからなかった。
しかし、リーランは自分で納得したのか。
「カリアース……。カリアースと同じ名前のあなたと出会えたのも何かの縁ね。わかったわ。説明ありがとう。ヤマト。ごめんなさい、暗くしてしまって。」
しかし。リーランは、ヤマト・カリアースが死に。リリスも死んでいる事実が変わらないことに落胆しているようだ。
(リーラン……無理しているな……。もしかしてカリアースのこと好きだったのかな)
リーランの表情から、そこまでは読み取れない……。
そこでリリスが待ちきれないという風に、リーランに説明を求めた。
「さてこれからこちらが色々きく番じゃが……まず聞きたいことがある。リーラン……。」
「何でしょう。母上?」
「これから魔王はまた下界の侵略と虐殺を始めるじゃろうか?」
「……数年は無理でしょう、魔王はかなり弱っていました。回復するのにかなりの時間を要するでしょう。」
「なるほど……ではとりあえず安心というわけか。」
「はい……母上。」
「ワシは魔王戦争のときに死亡してしまったが、あのあと一体何があったのじゃ?何故魔王と共にリーラン、オヌシは現れたのじゃ?伝承どおりなのか?」
そうだ。魔王とセットでリーランが出てきた。一緒に封印されていたのは想像できるが、ちゃんとリーランの口から説明を受けていない。
「……おおむね合っております。レシータ巫女が私を利用したのです。」
「レシータ巫女……。」
リーランは頷いた。
レシータ巫女とは、神々が地上界援助のため強いスキルを授けた人族の女の名前だ。以前リリスに聞いたことがある。魔王戦であえなくリリスは戦死し、その後レシータ巫女が英雄と共に魔王を封印した歴史がある。
封印と結界の力を神レベルまで持つ人族、「レシータ巫女」。
やはり関係があるようだ。
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