第106話 艦内見学

「ちょっと、異常じゃね?このオーバーテクノロジー……。」


「龍人の最盛期の遺物じゃ。もうそのような技術者もいないがのぅ。」


リーランは笑いながら、リリスの言葉を訂正した。


「母上、このテクノロジーは我々の時代にもオーバーテクノロジーと言われていましたけど……。」


「そうじゃったかの……。」


「ええ、そもそも空を飛ぶ機体なんて、気球以外、達成していなかったではありませんか。」


「え……飛行機もなかったのか?もしかして。」


俺がそういうと、リーランは不思議そうな顔をした。


「飛行機?なんですか?それは?」


飛行機をすっとばして、この宇宙戦艦みたいなものを作ったリリスっていったい……。


俺は気を取り直して、艦内を案内してもらおうと思った。


「分かった……とにかくこの空飛ぶ龍人の里で3年弱過ごすわけだな、艦内を案内してくれ。」


「さっきから艦橋にしかおらんしのぅ、艦内を実際に案内しよう。」


リリスが艦長席から降り、艦橋から出るために円盤型エレベーターに乗ると、俺達を手招きした。


「ほれ、せっかくじゃ。歩いてみて回ろうぞ。」


「そうだな!」


「そうですね!母上」


俺達はリューグーの艦内を見せてもらうことになった。居住エリアに移動を開始し、リリスが案内をはじめた。


「まずは食堂を案内しよう。」


俺はでかい食堂みたいなところがあると想像したのだが、そこには……

いくつもの飲食店が立ちならぶ「街の一角」がそこにあった。


「な、なんじゃこりゃ……これは食堂じゃなくてレストラン街じゃん。」


俺は立ちすくみ、呆然とした。リリスはニヤリと笑いながら俺の肩を叩いた。


「レストランは7店舗ある、あらゆる国の料理が楽しめる。ちなみに調理……接客は自動人形(オートマタ)が料理をしてくれる。」


このエリア外にも、風呂や娯楽施設ブロック、学習ブロック。そういったブロック毎の施設が「ここは街か?」と見間違えるほどズラリと並んでいた。


「里という表現がおかしいと思ったけど、こりゃ街だわ。」


ちなみに天井は5階建てのマンションくらいの高さがあり、朝→昼→夜 と景色が変わる凝りよう。明るさもそれに伴って変わるので、まるで外にいるかのようだ。


生活に必要なものは、全て機械人形(オートマタ)に頼むと持ってきてくれる。製造工場みたいなものもあるので、シャンプーや洗剤、洋服も出来る。その製造までも、すべて自動人形がやってくれるらしい


ここのメインは住居ブロックだ。ドアがズラリと並んでいるフロアがあり、それの一つ一つが家構造になっているようだ。


「家?船室だろ?」


俺は狭い船室をイメージしたが……。部屋ごとに中を覗いてみると、俺は納得した。


「ひ、広っ……家具すご!?」


バカみたいに広い部屋になっている。高級マンションのような大きさである、ベッドルーム。リビングまで完備している。一つ一つが高級船室というレベルだ。家具もかなり高級品が備え付けられているようだ。


どれでも好きな部屋を選べと言われたので、俺は適当に選ぶ。


「じゃあ。ここで……」


すると、リーランは、その隣りの部屋を選んだ。


「じゃあ、私はここね!」


リリスは満足そうに頷くと、リーランに告げた。


「ではワシとヤマトは、一旦、部屋で着替えてくる。リーランも着替えるんじゃ、メシにしよう。」


すると、リーランが慌てた。


「ちょ、ちょっとお待ちください!母上!?なぜヤマトと同室なのですか!!」


「ワシとヤマトは、離れられないのだ(魂が同化しているから)。」


「は、離れられない!?」


「ワシとヤマトはそういう関係なんじゃ。あとで説明するから。とりあえず着替えてこい……」


「ど、どういうこと?」


リーランは唖然としていたが、お互い部屋に入り着替える。


(あれは絶対誤解している顔な気がする……)


部屋に用意してあった服は、八角形を半分に切ったような形の一枚布がおいてあった。俺はその布きれを手に取って広げてみる。


「これなんだ?タオルにしては大きいな……」


「それが艦内着じゃよ」


「へ?これが艦内着?こ、これ……どう着るんだ?」


(一瞬、ふんどしかと思ったぜ……)


「これはリュンガという着物じゃ。こう着るんじゃ」


リリスは自分の上着に手をかける。真っ白な肌が半分露出したため、俺は慌てた。


「ま、待て!服を脱ぐな!おい!」


「は?何をいっておる?」


すると、上着だけ脱ぐと下に来ていたシャツ姿のまま、リリスは着付けをレクチャーしはじめた。


「な、なんだ……」


ちょっとだけ期待しちゃった俺は、リリスに着付け方法を教えてもらった。これは巻きつけて着るタイプの地球でいうところの「トガ」のようなものであった。ふわふわした生地であたたかい。


リュンガ姿のリリスは、非常に神々しい姿だった。


(こいつは何着ても似合うな……。)


ちなみに俺も着てみた……。


「おぉ、ヤマト。似合っておるぞ。」


「サンキュー。リリスも似合ってるな。」


「どのあたりがじゃ?」


「え?」


そのあと、リリスにどのあたりが似合っているかという執拗な質問にうんざりして、俺は時間を浪費した。


(二度と褒めん……。)


着替えが落ち着いたところでリーランと部屋の外で合流。お互いの情報交換のため船の中の、レストランで食事をしながら話そうということになった。

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