第105話 リューグー浮上

リューグーの開発の発端となった、龍人ランク―の説明を受けた俺は衝撃を受けていた。


「そ、そんな話が……。」


(このリューグーに、そんな悲しい誕生秘話があるなんて……。)


俺はリリスの弟であるランクーの壮絶な人生を聞いて、身が引き締まる思いだった。このリューグーは、そんな男達の想いや願いが込められて創られたんだな……。


(そういえば、カリアースは子供達を人質に取られて、神々に殺されたって言ってたな……。)


これは推測だけど、ランクーの生き方を見たカリアースは、同じように死ぬことを選んだんじゃないのかな。


 まさに、子供達のために盾となって、殺されたランクーのように。


「ぐす……。」


リーランは、その話を聞いて思い出したのか、涙ぐんでいる。


リリスは艦長席にいるため表情はうかがえないが、彼女とは魂が同化しているせいで、リリスの悲しい感情が俺に流れ込んでくる。


(リリス……。)


俺はリリスの座っている艦長席を見上げた。


(それにしても……。)


そんな開発経緯があったリューグー。改めてみると、龍人とはすごい。


高い魔導技術を持った種族だとは聞いていたが……これは俺がいた前世の技術よりもさらに先を行っているようだ。


その国の王であったリリスは、すごい人物なのだろう。


「うむ……ではリューグーよ。艦内説明をしろ。スクリーンに映しながら随時説明せよ。」


リリスは艦長席で長い脚を組み。リューグーに命令する。もはやコンソールを触ってもいない。すべて会話で操作できるようだ。さっきまで何やらカチャカチャやっていたが、もうそのフェーズは終わったようだ。


『了解、マスターリリス』


ブン…….



驚いたことに天井全体が巨大スクリーンになった。何か見たことがない古代文字のようなものがスクロールしている。待機画面のようだ……。


「うぉ……すご……電子ディスプレイ。」


俺は驚いた。まさか、この世界に来て電子ディスプレイが見れるとは……すると、リリスが首を傾げた。


「電子?なんじゃそれは、これは魔力素子ディスプレイじゃぞ。」


「魔力素子……、逆にわからない。」


「魔力素子とは、物体のXコアの周辺に存在しているコアエネルギーでじゃな……これを変換して現地上界で扱える魔力と近い素子に……。」


「ああ!もういい!いいって!」


俺は何を言っているのか分からないので、リリスが喋るのを無理やり止めた。


「なんじゃ……、ここからが良いところなのに。」


「そういえば、お前って研究者の面ももっているんだよな。」


聞いた俺がバカだった。


リリスは、コホンと咳払いをした。リリスの座っている指揮官席が高いので、どんな表情をしているのか分からない。おそらくドヤっているのだろう。


「まずは外観を見せたほうが良いじゃろう……映せリューグー。」


『了解、マスターリリス』


ブン……。


スクリーンに出てきたのは巨大な宇宙戦艦だった。いや……宇宙には飛ばないんだろうけど……。基本的に水上艦をそのまま宇宙に浮かべたような外観だが。砲門がびっしり配置されているところから、まさに戦艦なのだろう。


「艦体上部中央に塔型艦橋を有し、カラーは白を基調としておる。」


ところどころブルーのラインが入っている。かなり尖ったデザインだ。かっこいい。


『外観です。では、エリアごとに映像を映しながらエリア説明に入ります。』


画面が次々に切り替わっていく。、俺はランク―・ドラガラムの話を聞いて悲しくなっていたが、このリューグーへの親密度が高まったような気がした。リューグーへの興味津々だ。


人口知能であるリューグーが詳しく説明してくれた。むちゃくちゃ万能戦艦だった。まるで楽園船のようだ。なんでも揃っていて、生活もできる。


「すごい。畑まであるのか」


『以上がリューグーの説明になります』


リューグーの声は可愛い声で、幼い少女のようにも聞こえる。顔だけだけど。


『マスターリリス、浮上準備が整いました。浮上開始して宜しいでしょうか』


「うむ。浮上せよ」


「ふ、浮上すんの?どこかにつかまらないと……。」


俺は衝撃に備えようとした。


「不要じゃ、そのまま立っておれ。」


「え!?でも?」


キュィィーン!!!


一際高い電子音が艦内に響いたかと思うと、俺の体に対象のGが上からかかる。ちょうど、エレベーターが上昇するかのような感覚だ。


『上昇完了しました。高度12000mです。マスターリリス。』


「え!?もう!?だって、ほんの数秒しか……。」


「うむ。そのまま周回モードに入れ。」


『了解しました。マスターリリス』


キュィィーン!!!


また、軽いGが俺の全身にかかるが、これは例えると電車に乗ったときのような感覚ですぐに元に戻る。


『マッハ1で航行中。重力バランサー正常。直進3000km以内に障害物はありません。周回モードに入ります』


可愛い声でとんでもないことを言うリューグー。


「ま、マッハ……って、そんな速ぇのかよ……そんな感じしないけどな」


「うむ……これで安心じゃ」


シュン!!


高い艦長席から、転移して降りてくるリリス。俺は驚きすぎて口を開けたものを閉じるのが大変だった。


「あ、あきらかにオーバーテクノロジーじゃねーかよ!」

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