第104話 ※資料 ランクー・ドラガラム(後編)

ランクーの問いに、返事とばかりに剣撃が四方から飛んでくる。


しかし、ランクーは全てをいなす。


剣の才と言えよう。高速での剣さばきは達人の域に達していた。


リリスは魔法。ランクーは剣技で龍人族最高峰にいた。


しかし、相手は四人。さすがのランクーも余裕がない。


「ぬぅ!面倒!」


ズア!!


ランクーは、禁術:強化魔法リミットブレイクを使用した。


「!?」


バシ!!


強化魔法によりパワーアップしたランクーは、4人のうちの1人の仮面を剣で吹き飛ばした。


仮面が外れた、その襲撃者の顔と耳をみてランクーは動揺する。耳が龍人族独特の尖った形状のものだったのだ。


「り、龍人族?」


なんと守るべき龍人の子の屋敷を龍人が襲っているのだ。


「な、なぜ同族が。」



驚いたランクーは一瞬の隙を作ってしまった。


ザク!!!


動揺した隙を、襲撃者は見逃さずランクーの右腕を剣で突き刺す。


「ぬぅぅ!」


キン!キン!


何とか、追撃を弾きながらバックステップで逃げられたが、右腕を使用不能にされたランクーは、ただでさえ数で不利な上に、片手では複数人と戦うのは不可能であった。


(まずいかも知れぬ。)


ランクーの死は決定的であった。


「ランクー殿!お待たせした!はぁ…。はぁ……。相手が龍人でした。かなり手強かった。」


逃した襲撃者一名を倒したのか、2階にいたもう1人の護衛官がかけつけてきた。彼も傷だらけであった。


「よ、よく来てくれた。」


「ランクー殿!その傷は……!」


ランクーをみて仲間は驚く、ランクーはすでに満身創痍であった。腹に致命傷を抱えていた。


「ら、ランクー殿………。」


ランクー達の不利は変わらない……。


状況は最悪であった。


ランクーは叫ぶ。


「何故、龍人族が同族の子を狙う!!」


ランクーが叫ぶと、含み笑いの返事が返ってきた。


「キリヌス家の跡取りがこの屋敷にいるだろう、依頼主には邪魔なのだよ。」


「な、なんと。王座争いに邪魔だから同族の子を狙ったのか……。」」


「うるさい!死ね!」


ギン!ギン!!!ゴァ!!


魔法と剣の応酬。善戦むなしく駆けつけた護衛官は死亡。


ランクー1人になってしまった。


それでも互角にしばらく戦い続けたが、やがて魔力切れを起こす。


「もはやこれまで」と、ランクーは子供達の家の入り口に仁王立ちをする、


襲撃者たちは笑った。


「ふははは、通せんぼか。」


「子供達はやらせん。」


「ほう……。」


「誰も通さん……!」


「では、試してみよう……。死ね!!!」


滅多刺しであった。しかし、ランクーは数十箇所切り続けられても沈まないことに襲撃者は恐怖した。ランクーは真っ赤に染まった衣服で襲撃者を睨む。目だけは爛々ととしていて、襲撃者たちはそれにも恐怖した。


「……。首をはねても立っていられるか見てやる。」


襲撃者一人がランクーの首を両断せんと振りかぶったときだった。


「!?」


ドン!!


風のように現れた男が、ランクーと襲撃者の間に着地した。


「な、何だ!お前は!」


突然現れた男に動揺するが、相手は一人。


「……。」


無言でこちらを睨む男は、青い髪に細い体。容姿は素晴らしく美しい。


襲撃者は、その男が女か判別できていない。


どう見ても強そうには見えない。


「何者か知らぬが邪魔をするなら殺す!」


すると、その男は呟いた。


「やれるものならやってみろ。」


「何を!!」


斬りかかる襲撃者たち。


しかし、男は面倒くさそうに呟いた


「遅ぇよ……。」


ズバ!ズバ!


「な!?」


その男のスピードは尋常ではなかった。こちらが斬りかかるために剣を振りかぶった瞬間に、男は高速移動して襲撃者の真後ろに立ち、二太刀。


その二太刀で、襲撃者は絶命した。


ドサ……。ドサ……。


刹那二人が一刀両断にされ、腰から上から切断され上体がズリ落ちる。


残った襲撃者は目をむいた。手練れ中の手練れである味方が、瞬きする間に2名も殺されたのだ。しかも、まるでバターを斬るように切断された。


「くっ!?なんというスピードだ。何者だ、こいつ。」


「………こい。殺してやる」


「く!舐めるな!!」


襲撃者も応戦するが話にならない、一撃で一人一人を両断されていく。尋常ならざる力であった。襲撃者は30秒とかからず全滅させられた。


男はランク―のほうへ走りよる。


「ランク―さん!!」


ランクーは、その人物の顔をみて安堵する


「ヤマト、きて……くれた、のか」


ランクーは、その男がカリアースだと確認すると、安心したのか崩れ落ちる。


「ランク―さん!!その傷は……。」


カリアースはランク―の傷跡をみて驚いた。傷の数だけで数十はある。この傷を受けてなお立っていた精神力にカリアースは、ランク―の気迫を感じた。


「ランクーさん!ランクーさん!今、治癒魔法をかけるから!」


「そ、それよりも子供達は…?無事か?……」


いま、まさに死を迎えようとしているランクーは子供達のことを心配していた。


「無事だよ!子供達はランクーさんのおかげで傷一つないよ!」


「そ、そう…か、よかっ…た…。」


すでに、カリアースは上位治癒魔法を発動しているが、とても間に合うタイミングではなかった。


「子供達が無事で良かった。リリス姉者に伝えてくれ……。ランクーは子供達を…龍人族の未来を守りましたぞ、と……、」


ランク―はそういうと息絶えた。


「ランクーさん………!!」


最後まで子供達を守ろうとしたランクー。この姿は、カリアースの目に強烈に焼きつけ、鮮烈な印象を残した。


「男の死はこうあるべきだ」と、カリアースの生涯の指針となる。


カリアースは、事実をリリスに伝えると直ちに関係者は調査の上、依頼主も突きとめられ処断された。


隠れ里、保護施設の限界を感じざるを得ない事件だった。身内に裏切りものがいては守りようがない


しかし、リリスは当件の問題点をすぐに分析。解決案を提示した。弟のような悲劇を二度と作らない。その決意からの提案書である。それは………。


「リューグー開発プロジェクト」である。


「里を廃し、超大型高速移動機を作る。そこに住処をつくり、幼龍を育てる。位置が、龍人にも誰も把握できない状態にするため、基本無人ランダム飛行とする」


計画をあげ、多くの反対もあったが、結果それは採用された。採用に至るまで、幾人もの血が流れたが、リリスは政敵も、ここで倒していく。


この動きが、リリスを龍人王としての地位を一層確立するきっかけになった。


空を翔び、雲と同化する。かつ巨大な船体をもち、そこで多くの子供達の安全を守り、生活を可能とする「動く街である」いうコンセプトで作られた。


その高速空中移動艦「リューグー」という。


いまヤマト達が乗っている船である。


※※ランクーの物語終わり※※

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