第102話 人口知能リューグー

ここからは見えないが、カチャカチャと何かをリリスは操作している音が聞こえる。


たまに。


「あぁ!もう!」とか。


「パスワードこれじゃったか?」とか。


ブツブツ何か言っているのが聞こえる。


俺達は、それを見守る形だ。


やがて、準備が整ったようだ。


「では、起動準備に入る。リューグーよ……起動せよ。」


『お久し振りです。マスターリリス。起動開始しました。』


「うわ!なに?!女の人の声が聞こえた」


少し電子音のような機械的な声だったけど、たしかに女性の声だった。


すると、声がまた聞こえる。


『はじめまして。私はリューグー。この空中艦リューグーの人口知能です。』


人口知能リューグーの声が聞えてきた。


スピーカーなどどこにもないが、不思議と聞こえてくる。


「どこから声が出てるんだ?人口知能って言ってたけど……。」


「そうじゃ。人と同じレベルで思考できる機械じゃ。」


「そ、それって……。」


あれか!?乗り物が喋る系のあれか!?


トランス・〇ォーマーとかか!?


ナ〇トライダーか!?


あんな感じか!?


俺は持前の知識をフル動員して、無理やり自分を納得させた。


「なるほど、すげーな……。」


「凄い、ヤマト。いきなりリューグーを理解したの?」


「う、うん。まぁ予備知識があるから。」


俺は前世で、乗り物が喋る系の映画やアニメを見たことがあるからな。


日本人なめんなよ!


「予備知識って、あなた7歳くらいでしょ?」


リーランが首を傾げる。


「……その辺り色々あって。ごめん、リーラン。後でまとめて説明するよ。」


「そ、そう……わかったわ。」


しかし、驚いた。


いわゆるAIみたいなものだろう。過去の龍人族ってどんだけハイテクなのよ……。


(すでに空中艦とかで異常だけど……。)


すると、また艦内に音声が流れる。


『ご理解いただいたようで何よりです。ちなみに、立体映像として私「リューグー」を表示可能ですが……出しますか?』


「え?そんなこと出来るの!?」


リリスとリーランの二人が、俺に向かって忠告をしてくれた。


「あくまで、想像した人格映像じゃぞ?」


「そうよ。リューグーはあくまでロボットのようなものよ?」


「でも、見てみたい。顔とかがあると話もしやすいし。」


「じゃそうじゃ。リューグー出せ。」


『イエス。マスターリリス。立体映像表示します。』


俺はリューグーが、美少女なのを想像した。


ブン……。


ホログラムのような映像が現れる。


俺の目の前に現れたのは、美少女だった……。


顔だけが……。


「おい……なんで体だけマッチョ男なんだよ!」


『え?』


戸惑うリューグー。口元に手を当ててポーズを取るあたり、芸が細かい。


体と顔のギャップが凄い。


正直キモい。


「何戸惑ってるんだよ!キモい!」


俺がツッコミを入れると、リーランが庇った。


「酷い!ヤマト!リューグーを虐めないでよ、かわいそうでしょ。ね?リューグー?」


『龍人リーランの仰るとおりです。私は深く傷つきました。』


ショボン…と、うつむいてショックを表現するリューグー。


顔だけ見れば可憐だ。体がマッチョ男なだけで……。


「おま!調子に乗ってんじゃねーよ!」


「ちょ、ヤマト!いい加減にしなさい!」


「そうじゃ!リューグーを虐めるな!」


責めるようなリリスとリーランの視線が痛い。


「なんでぇ!?なんで俺が悪者なの!?」


俺が叫んでいると、リリスがリューグーに話しかける。


「リューグーよ。ヤマトには後で言っておく。今は立体映像は不要だ。音声のみでいい。」


『はい、マスターリリス。そのクソには強めに言っておいてください。』


「な!てめ!」


リューグーがペコリとお辞儀をすると……。


ブン……


顔が美少女、体がマッチョ男の不快な映像が消えた。


「な、何て腹の立つ……。」


俺が憤っていると、リリスが叫んだ。


「まずリューグーを緊急発進させるのじゃ。平行して現状報告をするのじゃ。」


『了解、マスターリリス。緊急発進プログラムを起動させます。目的地を教えてください』


「西方向への周回モードを命じる。目的地はない、期間は3年じゃ。」


『2500年以上停止状態だったため、各機関のチェックに時間を要します』


「すぐやれ。どれくらいかかる。」


『チェック自体は55秒で完了予定、問題なければ起動と浮上準備に入ります。』


「うむ、承認する。やれ。」


『了解、マスターリリス。内部チェックプログラムを起動します。』


フィィ――ン……


耳に心地良い電子音が、艦橋を満たした。


艦橋全体に配置されているモニターが慌ただしく光り何かを映している。グラフだの数値っぽいものだの色々だ。どうも浮上しようとしているようだ。


『チェックが完了しました。報告します、マスターリリス。』


「うむ」


『主エンジンが修復不可。主兵装が使用できません。補助兵装は使用可能です』


「そうじゃの……魔王の奴にやられたからのぅ……。」


『補助エンジンで起動と移動航行は可能です。』


「他の機関は問題ないか。栽培エリアなど自給エリアは?」


『他の各機関修復済。問題なし。起動準備に入りますが如何でしょうか」


「やれ」


『長期間停止していたため、浮上まで3分ほど要します。また補助エンジンをフル稼働させたとしても、航行スピードは10%ほどまで減少いたします』


「かまわん、移動できればいい。続けろ。」


『了解、浮上プログラムに入ります。』


数千年以上経過して3分で起動と浮上までするところに驚きだ……。すごい技術が集まった戦艦だということは判るが、オーバーテクノロジーじゃね?  


とても、人口生命体が下で自転車をブン回しているものとは思えない……。


「リューグーよ。」


『はい、マスターリリス』


「その間、リューグーの歴史などを説明してやれ。」


『はい、マスターリリス。』


リューグーが、自身の開発経緯を説明しはじめた。


『開発の発端は、マスターリリスの弟、ランクー・ドラガラム氏の話から入ります』


「リリスの弟!?」


リューグーが語り出した……。



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