第98話 リーラン

「なんて美しい子だろう……。」


俺は少女の美しさに驚き、そう呟いた。


目元は長い睫毛が太陽の光で輝いており。眉目のラインは、まるで国から依頼を受けた名工が10年の時をかけて削り出したかのような美しさだ。


細い顎は、全体バランスを失っておらず、すべてが完全な配置に美のバランスを保っていた。


(い、いかん。見惚れている場合じゃない。)


「リリス!出てこい!」


シュン!


腕から出てくるリリス。顔は驚いていた。


「や、やはり……!リ、リーラン!」


「え!?」


俺はその単語を聞き、地面に寝ている少女を改めて見つめた。


(リーラン……あの?)


「な、何ということじゃ……リーラン……生きておったのか。」


「さっきから、リーランって……まさか、あの?」


リーランは、リリスの養子だった人だ。


リリスの話では、リリスがリーランだけでも逃すために次元結界に封印したと聞いている。


その後、リリスは殺された。


ラスタリスの伝承によれば、さらにその後、レシータ巫女がリーランの封印場所に魔王を封じたとされている。


そのリーランさん?


「うむ……しかし、死んだと思ってばかりいたが生きておったとは……。」


リリスはかなり動揺している。


「魔王が出てきたと同時に、この子も落ちてきたよな……。まるで一緒に封印されていたかのように。レシータ巫女の伝承は本当だったんだな。」


「むぅ。巫女と言うのは名ばかりで、とんでもないことをする女じゃな。そのレシータは。」


リリスは、本気で怒っているようだ。


「ん……。」


少女が口を開き、くぐもった声を出した。


「あ……リリス、気がついたようだぞ。」


そして、リーランと思われる少女は、ゆっくりと目を開いた。


俺は警戒されないように極力おちついた様子で言葉をかける。


「……大丈夫?」


俺を見た少女は、俺の顔を不思議そうに見つめた。そして腕をあげて俺の頬を撫でる。


「な……え?」


頬を撫でられた俺は動揺を隠しきれない。


「カ、カリアース……いいえ?違うわ……貴方は誰?」


そう呟いた少女の顔は驚きと期待に入り混じっていた表情だった。


横からリリスが飛び出してくる。


「リーラン!ワシじゃ!わかるか!?」


リーランと呼ばれた女の子はリリスを見る。そして、ただでさえ星のように大きい目を開いて凝視した。


「は、母上?!」


「リーラン……!」


お互い見つめ合う二人。


リーランは、ペタペタとリリスの顔に触れる。目からは涙が零れている。


リリスも、表情は驚いているが、目からは涙があふれている。


俺はそれを見て、もらい泣きしそうになってしまった。


「母上……死んだとばかり。」


「うむ。死んだ。」


「え?」


訳がわからないといった様子のリーラン。


「母上……それはどういう……」


「説明が長くなるんじゃ、あとでゆっくり話す。」


リーランは頷く。


「はい。もちろんです。」


「そうじゃな……龍人の里に乗ってからじゃな。すべては。」


リーランが口を挟む。


「魔王がまだ近くにいる可能性があります。母上、はやくリューグーへ。」


リリスは、思い出したかのように焦りだした。


「そうじゃ!いかん!早く。早く里に乗るのじゃ。」


「乗る?里に?どういうこと?」


俺は首を傾げた。


「安心するのじゃヤマト、あそこを降れば門がある。その門がすでに龍人の里リューグーじゃ。」


「え?え?……どういうこと?里だろ。里の名前がリューグーなのか?」


俺は謎ワードである「リューグー」の説明を求めた。


「まぁそうじゃ。里とリューグーは同義じゃよ。」


「でもどこにも里なんてないぞ?」


「そりゃ、そうじゃ。リューグーは地中に埋まっておる」


「ち、地中に!?」


「そうじゃ。封印されておるから起動せんとイカン」


フリーズし、暫し起動に時間がかかる俺。


「リリス、もしかしてだけど。里って、村みたいなものをイメージしていたんだけど?もしかして……。」


「龍人の里とは、巨大空中戦艦のことじゃが?つまりリューグーじゃ。」


俺は口をあんぐり。


「早く言えよ!!」

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