第97話 空から落ちて来た少女

【ヤマト・カリアース】


ヤマト・カリアース。龍人族史上最強の男。


彼の経歴には謎が多い。


龍人族でありながら、過去のどの龍人よりも巨大な魔力を保有し、古代魔法や禁術に長けていた。


出生から幼少期までが一切不明で、リリス・ドラガラムが戦地でポツンと立っている幼いカリアースを拾ったとされている。


余談だが、戦地でヤマトを拾った際にリリスが飛竜に乗せて、王国へ帰る途中、リリスが居眠りをして落としてしまったことは有名である。


途中で、賢いリリスの飛竜が、自ら空中でキャッチしたので大事にはいたらなかったが、その際、「居眠り運転!ダメ!絶対!」と、ヤマト・カリアースの怒りようは半端なかったらしい。


戦闘能力は、まさに鬼神のごとくであり。大戦時にも、リリス他龍人は神に押されていたが、ヤマト・カリアースのみ神と互角以上の戦闘をしていた。


彼が最初に注目されはじめたのは、軍に入ってからである。メキメキと頭角を現し、最年少で軍総司令補佐に着任。指揮官としても有能で、作戦立案から実行まで、まるで「絵を描くように」組み立てていく。知能も高かったようだ。


すべての属性の魔法適性があり、また組み合わせて混合魔法も開発し、操るという魔法使いとしては天才であった。


先に述べたように術式は不明だが、禁術にも長けており。神との最終決戦の際に、さしものカリアースでも苦戦するシーンが多々見受けられ、禁術は多用されていた。


剣術、格闘技全般にも長け、巨大なステータスを誇り。タイタン(巨人)と戦った際にも力負けしなかったという、その細い体のどこに筋肉があるのかと皆不思議がった。


大戦時に神々の策略にはまり死亡するが、純粋な戦闘や戦略シーンでは神々を押していた。享年250歳である。この年齢は人間でいうと20歳ほどであり、若すぎる死であった。その若さで軍の実質最高指揮官である、司令官補佐までいくという異例すぎる人物であった。(最高司令は、王でもあるリリスだった)


知能、魔力、身体能力など最強の人物であったが。知性のほうは疑問視される。というのも、彼の自室には「開いたら呪われる」という箱があり、その箱には、人族の青年が喜びそうな本が大量に保管されていたという。いわゆるエロ本である。また、美人とみると鼻の下を伸ばしていた。


そのようなことをするからには、容姿が劣っていたかというと、決してそのようなことはない。神話に出てくる天使のような容姿で両性具備の美しい顔立ちと、スラリと高い長身であった。女性にも大層人気があったというから、何故そのような本を収集し、美人に媚びていたのかは不明だ。


幼馴染みのリーランとは仲が非常に良く、また従順であった。


というのも、リーランは姉のような立場でカリアースの面倒をよくみていた。だらしないカリーアスの私生活や、女性問題などがあると介入されて怒られ。頭を殴られていたというから、リーランには頭が上がらなかったらしい。

「少女が空から落ちてくる!」


俺が叫ぶと、横にいるリリスも空を見て驚く。


「桃色の髪……。まさか……。あれは!?リー……いや、そんなはずが。」


リリスは茫然としてる。


「え?知り合いか??」


「……。」


リリスに返事がない……。冷静なリリスが、先ほどから動揺しっぱなしだ。


「な、なんで雲の隙間から女の子が落ちてくるんだ?」


「……。」


リリスはその少女を遠目に見つめたまま動かない。


「リリス……!お前さっきから変だぞ!しっかりしろよ」


「……う、うむ。……すまぬ。」


(……なんで空から少女が。)


位置的にかなり遠いところに落ちていっているように見える。落下速度は驚くほど緩やかだ。あの少女のところまで、俺の足なら間に合いそうだ。


(と、とにかくあの少女の落下地点まで迎えにいこう!落下速度がかなりゆっくりだから間に合う!)


「リリス!あの少女のところまで行くぞ!腕に入っていろ!」


「う、うむ!」


シュン!!


リリスが腕に格納されたことを確認すると、俺は足に強化魔法をかける。


「むぅぅ!」


ズァ!


両足に十分な魔力が満たされたのを確認すると、俺は膝を曲げて勢いよく伸ばす。


「はぁ!」


ドン!!


土煙をたてて俺はロケットのように走り出す。目標は少女の落下地点だ。


「良し!いい感じだ!待ってろシー◯ァ!」


(だから。何なんじゃ、その名前は!)


ドン!ドン!


地面を蹴り上げるたびに、地面がえぐられていく。速度がどんどん上がっていく。


周囲から見れば、まるで風のように見えたかも知れない。


落下地点に入り、俺は急停止。


土煙を上げて、俺は完全に停止させると上空を確認した。


「はぁ!はぁ!よし!間に合ったぞ!きた……落ちてくる……。」


少女がフワフワと落ちてくる。


まるで綿毛が空を舞っているようだ。日本のアニメ映画を思い出す。


「うわわわわ……。」


俺は両手を前に出してフワフワ落ちてくる少女を抱きとめた。


フワリ……。


まるで綿毛のように軽かった。しかし、その刹那。


ズン!!


重力を突然帯びたのか、少女の重さが俺の両手にかかる。


「うわ!」


とっさに両腕に力を込めて抱きとめる。


「ふぅ……あっぶね……。」


俺は両手をゆっくり地面におろし、少女を地面に寝かせる。


「この子はいったい……」


少女を観察してみると、髪の色はピンクカラー。目を閉じている顔は妖精のように美しかった。年齢は16か17くらいだろうか……。肌は透き通るように白く、見ているだけで吸い込まれそうだ。

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