第86話 竜のトンガリ山
俺とリリスは、とうとう竜のトンガリ山に到着した。
山と言うから、魔獣の森にあった青々とした山を想像していたのだが……。
そこは巨大な火山だった。
山肌は岩でゴツゴツしていて、とても生物が居るとは思えない。
ただ中盤までは緑が多少ある。
「しかし、バカ高い山だなぁ……。」
標高は凄く高そうだ。麓から中腹までは緑が多少あるが、中腹から上は雲に隠れていて見えない。どんだけ巨大な火山なのよ。
「う、迂回出来ないの?」
俺がビビってそう言うとリリスが苦い顔をした。
「迂回出来るには出来るが、麓にそって地竜が待ち伏せしておるのよ。ウジャウジャいるぞ?ここは真っ直ぐ、速やかに登りきって、山を越えるのが安全じゃ。」
「はぁ……。どうか地竜に出会いませんように。」
「うむ。ここからは慎重にいくぞい。ヤマトよ、スキルのホーク・アイズ(鷹の眼)を、1kmごとに使って周辺に気を配れ。」
「り、了解!」
俺は即座にホーク・アイズを発動。
このスキルは、距離にして2km弱まで見えるようになる。物の形だけであれば3kmはカヴァー出来る。
ただし、近くが見えなくなるので常時発動は出来ない。
「うん。周辺に魔物や魔獣は居なそうだ。」
「うむ。じゃが、気配隠蔽スキルは常時発動しておけ。進むぞい。」
「分かった。イレイス・サイン(気配隠蔽)!」
ブン!
俺の周囲に何か霧が渦巻く。俺からすると明らかに霧なのだが、周囲から何も見えないようだ。
これで、俺は第三者に発見される可能性が低くなった。
イレイス・サイン(気配隠蔽)は万能では無い。もろに視線に入ったり、目の前で音を立てればバレる。
しかし、横を素通りしたとしても音さえ気を付ければ、相手に認識されない超有能スキルだ。
これって、青い動物型ロボットがもっていた不思議道具にあったような……。
それはともかく……。ポイントは視線に立たないこと。音を立てないことだ。
ちなみにリリスは視覚化だけしたので、周囲から見れば全く空気。
「さぁ、行くぞ。」
「お、おう……。」
俺はビビりながら山入りした。
麓の樹海は大変危険ということで、俺達は急ぎ足で進んだ。
中腹まで来ると身を隠すものはない。
しかし、スキルのおかげで周囲からは見えないはずだ。
俺は周囲をキョロキョロして観察する。
ドヨン……とした雲、山肌に広がる暗雲。どうみても魔界への入り口に見える。
急ぎ足で俺達は進む。
空には、見たこともない魔鳥が飛び交っていた。
「リリス……ここが竜のトンガリ山?」
「そうじゃ。」
「どー見ても、【魔王の住む山】なんですけど!ぜんぜん、雰囲気違うんですけど!!ちょー怖いんですけど!?」
「うむぅ。おかしい。ここまで魔素に満ちているとは…………。」
リリスも驚いていた。
「昔は違ったの?」
「ああ。岩山だったのは変わらないが、ここまで魔素が濃くなかったわい。」
山々は高く、天頂がまったく見えない。つーか、霧がかかってて視界最悪だ。
「雰囲気最悪だよ。全然登山している気分じゃねーもん。」
「うるさいわい。この山を登らんと龍人の里には行けんぞ」
「わかったよ。いくよ……行けばいいんだろ」
半分投げやりな俺。リリスは意味深な言葉を吐く。
「しかし、この禿げ山では、出会ったら戦闘は避けられぬのぅ……」
「え?戦闘?だ、大丈夫だよ。俺のスキルで認知されないはずだから。」
「このあたりは、昔たしか龍族の転移門があったはずじゃ。龍族に鉢合わせする可能性もある。」
「龍族!」
昔は龍人族が居て、龍族の存在は第2位という位置にいたが……。龍人族が滅亡したため、現時点で地上界最強とされる種族だ。
「そうじゃ。龍族であれば、オヌシのスキルを見破るかも知れん。」
「……、しかも地竜もいるんだよね?」
「うむ。地竜、飛竜がいる。それらは大丈夫じゃろう。ヤマトのスキルは、そうそう破られん。」
「もう帰りたい……。」
「魔獣の森へか?。」
「う……」
……いやだなぁ……それはそれで嫌。
「ほれ、急ぐぞ。」
乗り気でない俺を無視して、ズンズン先に進むリリス。
「はぁ……なんでこんなことに……。」
俺は気合を入れてさっそく登山を開始。体力はあるので順調に登っていくわけなんだが……。
ひと際高い岩壁を超えると若干緩やかになり。平坦な光景が目に入る。
「おぉ……。こんな場所があったの?」
周囲を見渡すと麓から見たものとは違う光景が目に入る。
禿げ山かと思っていたのだが、木々や林。緑が点々とある。
川もある。思ったよりも生物などもいそうな感じ。
それにいたるところに洞窟みたいのがある。一つ一つが、めちゃくちゃデカイ洞窟だ。
(あれ、何だろう……。)
俺は洞窟マニア?として気になって仕方なかった。
「あ、あれってさリリス……。」
「飛竜の寝床じゃな。あまり声を出すな見つかったら襲われるぞ。」
「ま、まじかよ……。」
あの洞窟の中に地竜がいる可能性もあるので、ホーク・アイズ(鷹の眼)を使って探ってみた。
「だめだ……。洞窟の中は暗すぎて中にいるか分からない……。」
「見つからないことじゃ、見つかったら全力で逃げるぞい。」
「……帰りたい……猛烈に帰りたい。」
そして、俺達は進み続けた。
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