第85話 魔の者達の蠢動
魔眼を発動するラスター。
ズア!!
魔眼:ベルゼアイ
この魔眼にかかると、相手の魔力の性質。残量を見分けることが出来る。さらに数十km
先のものも見えるようになる。後者は視力強化にすぎないと言えば過ぎない。
ラスターは、その魔眼ベルゼアイの所有者だった。
「これは……!?か、神レベルの魔力!?」
驚くラスター。
見間違いかと思い、再度ベルゼアイを起動する。
「やはり……あの少年からは神レベルの魔力を感じます。」
考えられるのは、神と人間のハーフだった。
(どういうことだ……なぜここまで。隣の女はどうでしょう……)
ベルゼアイにより、リリスの顔が物理敵にクローズアップされる。
「リ、リリス!!」
驚きのあまり、ラスターは空中から落ちそうになる。
「死んだはずでは……。ありえない!」
何度も見ても少女の顔はリリスである。見間違うはずがない。ラスターは魔王ベルゼブブより、永遠に近い命を与えられており、龍魔大戦に参加していた経験があるのだ。
「もし、リリスだとすると一大事です。これは。」
考えれば考えるほどわからなかった。
しばらく監視し、リリスとヤマトがしばらく南へ向わないのを確認したラスター。(この時は、ヤマト達はまだ森を抜ける決断をしていない。)
「……ふむ。これはベルゼブブ様に一度報告に上がる必要がありますね。」
冷や汗を浮かべたラスターは、黒い翼を展開させる。
バサァ!! シュン!!
そして、ラスターは地上界から姿を消した。
しかし、ラスターは少年を見張っていたようだが。
そのラスターも見張られていたことに気がついていない。
その者は、ラスターよりもさらに上空に浮かび、ラスターを見下ろしていたのだ。
その者は、悪魔だった。
強大な力を持つ悪魔。それは魔界においても、魔人の上位種族として認識されていた。
悪魔の名は、バフォラット。
羊の頭と、人間の体を持つ悪魔。背中には大きな黒い翼が生えていた。
「ほう……。魔人め。何をしに?まぁ良い。ついでに目標を見つけた。オステリアの言いなりになるのは癪だがな。」
悪魔は、翼を動かし滑空した。
//////魔界///////
ここは、蠅の王ベルゼブブの王宮内。
ラスターは、玉座の前で報告を続けていた。
「何……?神レベルの魔力を?ばかな。」
ベルゼブブはラスターの報告に驚いた。
「私も驚いたのですが、本当です。この魔眼ベルゼアイで確認いたしました。」
「むぅ……。」
ラスターは嘘をつくような性格ではない。
魔眼の能力も熟知しているベルゼブブは唸った。
「……で?その小僧がオステリアの探し人か?接触は?」
「はい、使い魔達からの報告では未だ接触出来ていないようです。」
「一体、あの女神め。何を狙っているのだ?」
「さぁ。そこまでは……。」
ラスターは玉座の前に顔を伏せている。
「この役立たずが。」
こみかみ(ベルゼブブにそのようなものがあればだが)に血管を浮かばせながら、彼はラスターを殺してしまいそうになる欲求に耐えた。
「それともう一点、気になる点が……。」
「なんだ?」
「彼の横にリリスがいました。」
「なにぃ!?」
玉座から立ち上がるベルゼブブ。
リリスとは、龍魔大戦知っている存在である。顔を忘れるはずがないラスターであった。
「間違いありません。」
「それを先に報告せんかぁ!!」
「も、申し訳ありません!私も自分でも信じられなくて……。」
「すると、その小僧は龍人なのか?」
「神とのハーフのようでもありますが……可能性はあります。」
「どういうことか?」
「はい。どちらかというと血に侵食されているような。なんか言い方が難しいんですが。」
「……。」
ラスターが悩んでいる。これはベルゼブブから見ても驚くべきことだった。
ラスターの魔眼ベルゼアイは、すさまじい能力を持っている。
一発でその者の性質を見抜くことが出来るのだ。そのラスターが分類すら悩んでいるのだ。通常あり得ないことだった。
これは大きな何かが絡んでいると、ベルゼブブは直感した。
「……。よし、ラスター。」
「は!」
「その小僧は、魔獣の森から南へ向かっているんだな?」
「はい、少なくとも私が見た限りでは。」
「ならば魔人をいくつか竜のトンガリ山へおろせ、神界に悟られぬように慎重にやれ。小僧を捕らえろ。」
「え?魔人落としを?そんなことしたら神界に……。」
「だから、数体で良い。鼻の利く魔人を数体放れ。」
「だったら私が!男の子は大した戦闘力は持っていません。あの男の子くらいでしたら赤子の手を捻るようなものです。しかし、リリスであれば私レベルではないと対処出来ません。」
「お前がそこまで動くと目立ちすぎる。下級魔人にやらせるのだ。最悪、我々は知らなかったで通せばよい。」
「しかし……。」
グア!!
「!!」
一気にベルゼブブの魔圧が高まるのを、ラスターは感じた。
「は、はい。分かりました。」
ラスターの額には冷や汗が浮かんでいた。
ラスターはすさまじい力をもつ魔人として有名であるが、ベルゼブブにかかれば「赤子」。力の差は歴然であった。
こうして竜のトンガリ山に魔人が放たれた。
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