第79話 魔眼待ちゼナ
「いくつか質問して良い?」
「う、うん。」
何故か面接を受けるような気持ちになる。
(しかし、これから始まると言うことは……。つまり、まだ魔眼は発動して居なかったようだな。「萌え少女」とかバレていないで良かったよ……。あはは。)
「リリスさんも良い?」
「ワシも?……構わんよ。」
「感謝する。魔眼質疑をはじめる。飛竜隊斥候部隊長のルシナ。証人となるか?」
「分かった。飛竜隊斥候部隊長のルシナが証人となる。」
ゼナが俺の真正面に立ち、ルシナが俺たちの斜め前に立つ。
「では魔眼を使用する。」
俺はこくりと頷いた。
ゼナちゃんの瞳が俺とリリスを交互に見つめている。
「…………。」
何か魔眼が光るのかと思ったが、何も変化が無い。
しかし、きっとスキルが発動されているのだろう。
ここから先は嘘を言ってもバレてしまうのだな。
「……この森に来た理由は修行というのは本当?」
「本当だよ。」
「本当じゃ。」
「…………!」
何故か、ゼナちゃんの顔が強張る。
(あれ……。本当のことを言ったつもり何だけどな、森を抜けて龍人の里にいくのが目的ではあるけど、修行も本当だ。)
「つ、次の質問。その月の糸は奪ったもの?」
「違うよ。緑色のハイエルフに貰ったんだ。」
「そうじゃ。ワシも横にいたが間違いない。」
「…………っ。」
しかめ面のゼナちゃん。
何か様子がおかしい。一体どうしたんだろう。
ルシナが横から口を出す。
「ゼナ……?どうしたの?」
「読み取れない……。」
「え?」
驚くルシナと、ゼナちゃんの後ろにいる護衛兵士2名。
「読み取れない?」
「……確かに魔眼を発動した。2回の質問に対しての回答……、真理眼が無反応……。こんなこと初めて。」
「そ、そんな……。相手が魔王クラスや英雄クラスじゃない限りそんなことは……。」
護衛兵士も動揺している。
「バカな……ゼナ様の魔眼は絶対。」
「こんなことが……。」
何やらエルフ達がザワつきはじめている。
ルシナはルシナで、青ざめた表情を俺とリリスを見詰めている。
何?もしかして疑われてる!?
「お、俺達は何もしていないですよ?」
「そうじゃ。そうじゃ!質問に答えただけじゃ。」
怒られた小学生のような俺達2人。実際、何もしていない。
ゼナが懇願するように俺に語りかける。
「最後に一回だけ質問しても良い?」
「え?良いけど……。」
「では最後に試す……。」
またジッと俺を見つめるゼナちゃん。
俺もゼナちゃんの瞳を見詰め返す。
見ていた、ゼナちゃんの瞳を観察する俺。本当に綺麗な瞳だな……。
「しかし、本当に綺麗な瞳だな……。」
「……また!」
「あ!ごめ……。また口走って!」
俺が口を閉じるジェスチャーをすると、ゼナちゃんは後ろを振り返ってしまった。
(ヤバイ……。本当に嫌われてしまったようだ。)
「……もう無理。帰る。」
そういうとゼナちゃんは、スタスタと向こうのほうへ行ってしまった。
「あ!ゼナ様!」
護衛兵士達は、慌ててゼナちゃんの後ろについて行く。
俺とリリス。ルシナはそれを見送るしか無かった。
「…………行ってしまったね。」
何だったんだ。一体。
ミステリアス過ぎるだろ。ゼナちゃん……。
ルシナは呆けていたが、俺のほうへ視線を向けて決意したように詰問を始めた。
「ゼナの魔眼が効かないなんて……。ヤマト、君は一体本当に何者なんだ?」
「え?」
「……クローベアーをあっさり倒す子供。」
「……。」
「しかも、変な術も使って倒してたでしょ。」
「変な術?ああ……。あれは、その偶然で……。」
咄嗟に誤魔化す俺。
出来ればスキルや魔法は知られたくない。この年齢で魔法が使えることは異常だし、魔獣スキルを使えるなんて知られたら化け物認定されてしまうかも知れない。
「偶然?いーや!ボクは見たよ!風魔法みたいのと、瞬間移動するようなやつ!でクローベアーを引き裂いていたよね?少年!君は魔法使える!?」
俺はリリスに助けを求めた。
すると、リリスはため息を吐いた。
「はぁ……。ここまでバレてしまえば仕方あるまい。ある程度は本当のことを言え。ヤマト。」
「良いのかよ?」
「隠せばかえって疑いを招く。ルシナが王国へ報告するか否かは、あとで相談するとしよう。」
その合間に、リリスがテレパシーを送ってくる。このテレパシーはルシナに聞かれる恐れはない。
(ただし、身元と龍人族だということ。さらに転生ということは伏せておけ。)
(そりゃ判ってるって。)
身元を明かしたら、両親に連絡が入ってしまうかも知れない。それは
「……わかった。」
ルシナは、俺とリリスの会話に黙って耳を傾けていたが、頷いた。
「ボクは軍の人間だ。報告はさせてもらう。しかし、出来る限り君たちに悪いことが起きないようにさせてもらう。」
「それを願いますよ。」
「…………。」
ルシナは返答を待っている。
「まず。風魔法みたいなやつって言ってましたけど、あれはゲーリークロー『疾風爪』。スキルです。」
「ゲールクロー!?それってクローベアーのスキルじゃない!嘘言いなさい。」
「嘘じゃないですって。ほら」
俺は背を向けると、遠くの木に向かって疾風爪を発射した。
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