第78話 魔眼:真理眼
ルシナの後ろに誰かいるらしい。声がした。
「あ!ゼナ!この子よ!」
ルシナが後ろを振り返りながら答える。
ゼナと呼ばれた子の声だけが聞こえる。
「思ったよりも子供……。」
可愛らしい声だ。しかし、感情をあまり感じない声でもある。
(子供の声?)
俺は肩を揺らされながら、そのゼナって呼ばれた子を見るために、背伸びしてルシナの肩越しを見やる。
「失礼、こちらからいく。」
すると、ゼナと呼ばれた子が前に出てきた。
(うわ……美幼女。)
見ると、お人形のような顔をした小さなエルフの女の子が立っていた。その後ろには護衛?の兵士が槍を持って2人控えていた。
兵士はピリピリと警戒している。何か粗相をしたら、襲いかかってきそうだ。
すると、ルシナが笑った。
「この兵士達はゼナの護衛だから。気にしないで?」
「う、うん。」
気にするなと言われても、何か睨まれてるし。
しかし、ここは危険な魔獣の森だ。護衛もかなりの手練なのだろう。そうとう強そうな気配を感じる。
それは、置いておいて。
ゼナの年齢は俺と同じくらいに見える……。輝くようなシルバーカラーの腰まで届くロングへアーだ。
(この子の瞳……。)
俺はそのエルフ少女の瞳に注目した。
瞳の色が特徴的なのだ。瞳色がうっすら金色だが、ほとんど透明だ。
パっと見。瞳がないように見えてしまう。
この女の子の容姿がすばらしく美しくなければ、「白目!?」と、ギョッとしてしまうかも知れない。
だが、それが美しい。
俺が好きだった某アニメのヒロインが、こんな瞳の美少女だった。軽く感動……。
とにかく目がクリクリで大きくて可愛い。アニメに出てくる美幼女そのままだ。俺はロリ〇ンでないが、単純に美しいと思った。将来どんだけの美少女になるのよ。この子……。
(む、むちゃくちゃ可愛いな。でもまだ幼い……。)
おそらく年齢的には俺と大差ないんじゃないだろうか。
背丈は俺と同じくらいか、少し小さいくらいかな……。
とにかく小さくて可愛い。俺は認定した。
「萌え少女」と……。
しかし、一方で彼女はとても知性的な子だと分かる。
彼女の目を見つめていると、とても知性を感じる。なんでも見通してしまうかのような……。深いものを見ているような……。そんな幻想的な雰囲気を出している。
ジー……。
ゼナと呼ばれた子は、俺のことを見つめていた。
俺は思ったことを言ってしまった。
「何て綺麗な瞳………。」
「!」
少女の表情が変わった。
驚き……、困惑……。何て言えば良いのだろう。
普段、無表情な子が感情に芽生えた?
そんな印象を受けた。
「き、綺麗?……」
「あ。ごめんね。思わず口から出てしまって……。突然、そんなこと言われたら驚くよね。」
俺は焦った。
(馬鹿か、俺は……。何故口走った!?そんなこと言われたら変態男認定されちまう!やばい……。いきなり嫌われてしまったかも知れない。)
「貴方……。怖くないの?」
「怖い?何が?」
俺は首を傾げた。
「この目……、真理眼と言う。見た目が悪い……。だから忌み嫌われる。」
「見た目が悪い?ちょっと言っている意味が分からないんだけど。まるでクリスタルの宝石のように美しいじゃないか。」
俺の回答に、何故か衝撃を受けた顔をするゼナちゃん。
(あれ……さらにマズったかな?)
俺が動揺していると、リリスが横から口を挟む。
「ほう……。真理眼持ちか。珍しいのぅ。」
「リリス……。真理眼?」
「ああ。真理眼とは、魔眼の一種じゃ。特殊スキルがあってのぅ、相手の心の内が読めるのじゃ。」
「心の中が!?すご……。」
と、同時に俺が「萌え少女」とか思ってしまったのが、読まれてしまったのか。
それは嫌われてしまったかもな……。マズったな。
「少し違う……。読めるのは、私が質問をした回答について「真実」か「嘘」かを見分けるだけ。大した力はない。」
「それだけでも大したものじゃわい。そこのルシナもそうじゃが、エルフは凄い人物を抱えておるのぅ。」
感心したかのようなリリス。
ゼナは、リリスのほうも見つめている。そして不思議そうな顔をしていた。
俺は挨拶がまだなことに気がついた。
「こ、こんにちは。ゼナちゃん?俺はヤマト。」
「……ゼナ……ちゃん?」
「あの……?」
ゼナは無表情に俺に応える。
「”ちゃん?”」
「あれ?まずかったかな。俺と同じ歳くらいに見えたから……。」
「あなた、いくつ?」
(無視かよ……。)
「5歳だけど……。」
「じゃあ、私より2つ下。」
ほとんど変わらないじゃん。そう思ったけど、大人なので言わなかった。そして、ゼナちゃんは俺に向かって、ためらうかのように質問をしてきた。
「怖くなった?」
「は?」
「心が読まれる能力待ち。それにこの白い目。嫌悪の対象。怖いでしょう?」
「全然?」
「何故?普通は怖がる……。」
この少女は、ポツポツと話す癖がある。ちょっとミステリアス。
「いや?普通に綺麗だと思うし。その能力は素晴らしいと思うよ。」
「素晴らしい?」
「うん。綺麗だし。クールだ。魔眼なんて憧れちゃう。」
実際、アニメでも魔眼持ちのキャラクターに憧れていたころがある。
あ、またそのまま回答しちまったよ……。嫌われ確定かな。こりゃ。
「……!」
ヨロヨロと後退。さらに衝撃を受けた表情のゼナちゃん。
(これは相当に嫌われてしまったな。あはは。)
ルシナがコホン……。とワザとらしい咳払いをした。
「ゼナ。この子が例の子よ。見定めて。」
ゼナはコクリとうなづくと、改めて俺の瞳を覗きこんだ。
「私の名前は、ゼナ・オブ・トールスナ。トールスナ家の末っ子。」
「あ、改めまして。ヤマト・ドラギニスです。」
「リリスじゃ。」
「…………。」
「(む、無反応かよ)」
しかし、心なしかゼナちゃんの顔が紅くなっているような……。調子悪いのかな。
俺が心配していると、ゼナちゃんは話し出した。
「真理眼を使う。いくつか質問をしたい。良い?」
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