第77話 ルシナは見た ヤマト視点。

//////////ヤマト視点//////////


魔獣を探しに森にいったら、クローベアー2頭に出会った。


もうここいらにはクローベアーしか居ないのかよ……。


クローベアーは、捕食が出来ない。


食料としては優秀だが、今のところ間に合っている。俺はガッカリした。


しかし、そうも言ってられない。向こうからすると俺は食料。


俺から見ても食料。ん?食料対決?


(ヤマト。気を抜き過ぎじゃ。オヌシのパワーステータスは高いが、オヌシはまだ子供。防御力はそれほど無い。遠隔かスピードで攪乱させろ。)


(了解……。あ、気が付かれたぞ。)


「グオオォ!」


俺に気がついた、前に居た1頭がすぐに襲いかかってくる。


「!!」


気合一発、先手を打ってゲールクローを発動しようかと思ったら……。


リリスが警鐘を鳴らす。


「ヤマト!危ないのじゃ!」


ビュア!!


「うお!?危ね!瞬転!」


シュバ!!


奴は走りながら、ゲールクロー『疾風爪』を使ってきた。さすが本家。走りながら撃ってくるとは思わなかった……。


瞬転を使い。ゲールクローを間一髪避けると、俺は奴の後方に回りこむ。


一瞬で回り込む俺をクローベアーは見失った。


「こっちだよ。」


「グア!?」


真後ろに突然現れた俺に、クローベアーの反応が遅れた。


チャンス!


ブオン……。


俺は魔力を右足に込める。青白いオーラが右足を包む。


「よし!硬化」


さらに硬化魔法を発動させる。この間、1秒にも満たない。


「うらぁ!」


お得意の喧嘩キックを一撃。


ドウン!


バキバキ!


ゴムボールのように弾き飛ばされるクローベアー。


(よし!手応えありだ。)


蹴ったときに、奴の脇腹を砕く感触があった。奴はしばらく動けないだろう。


俺のステータスはバカみたいに上がっている。


さらに身体強化魔法だ。かなりの攻撃力。今なら岩だって蹴り割る自信がある。


実際、蹴られたクローベアーは苦しそうに地面に血を吐いている。


悶えて立てないでいる。かなりのダメージのようだ。


「グォォォ!!」


もう1頭のほうは、リリスに狙いをつけたようだ。


………そうはさせない。


「瞬転!」


「!?」


目の前に現れた俺に驚くクローベアー。


「ゲールクロー『疾風爪』!!」

その後、蹴りを入れたクローベアーを、クローベアーの連射で倒した。


俺……、結構強くなっているかも……。


この前の戦闘とは比較にならないくらい楽だ。


ステータス向上を確かに実感した戦闘だった。


もはや、クマ公は敵ではなかった!


「ふはは!食料ゲット!」


瞬転が優秀過ぎる。ゲールクローが秀逸過ぎる。


戦闘は終わった。


「一旦、持って帰るか。一応食料だし。」


「持てるか?ヤマト。」


「大丈夫。」


俺はよっこいしょ!とクローベアーを2頭担ぎ上げた。


「怪力じゃのぅ。成人した龍人と変わらんくらいじゃわい。」


その後、俺は穴ぐらにベアーを置いてひと息つく。


クローベアーを解体して肉をステーキにして、腹いっぱい食べた。


そして、その日は早々に寝てしまった。

ピー……。ピー!


俺の朝は早い。


朝を告げる小鳥の声で起きる癖がついてしまった。


超早起きっす。


どうも森に来てから起きるのが早くなってしまったようだ。夜もすることがないので早くに眠ってしまうからだろう。


超健康的。


「ふあぁぁ。朝か……、リリスいるか?」


すると、リリスが入口からこちらにやってくる。


「起きたか。」


「毎日見張りサンキューな?」


「問題ない。」


「実際、助かるよ。川で顔洗ってくるわ。」


「うむ。」


冷たい川の水で俺は何度も顔をこすった。


ここの水は、飲めるし。冷たいので飲用としては最高だ。


(他の拠点に行っても、こんな素晴らしい川なんて見つかるのかな……。)


そんなことを思いつつ、俺は穴ぐらに戻った。


「さて……。」


朝、俺の寝袋を干すことから俺の日課ははじまる。


この寝袋も、結構古くなってしまった。


今度、村にいくことがあれば新しいのを買いたい。いつ行けるか分からないけどね。


この森での生活も、そろそろ1ケ月になろうとしている。俺も新生活(原始人生活)に慣れてきた。


「さぁ!爽やかな朝だ!」


「うむ。昨日のクローベアーは残念じゃったな。」


「意味の無い時間を過ごしてしまったな……。」


「では、新しい魔獣と同時に新しい拠点を探すのじゃ。」


「今日は南東の山を登ってみよう。高いところから見れば、良い拠点が見つかるかも知れない。」


「うむ、では出発じゃ。」


「了解!」


俺とリリスが、元気よく森へ進もうとしたときだった。


「ちょーと!少年!!」


「うわ!ビックリした!!」


俺は突然に後ろから話しかけられ、驚いて振り返るとそこにルシナがいた。


「何が爽やかな朝だよ!ちょっと昨日の戦闘みたよ!何であんな強いのよ少年!!」


「え?見てたの?」


「見たよ!2頭を瞬殺!あり得ないでしょ!」


「えへへへ……。」


「照れないでよ……もう!普通の人間の子供が魔獣倒せるわけないのよ。どうなってるの!教えなさい!教えて!」


ガクガクガク!


ルシナは俺の肩をもって激しく揺らす。


「ちょ、ちょっと止めて。ルシナさん……。目が……、目が回るって。」


俺がルシナに振り回されて目が回っていたころ。


ルシナの後ろから声がかかる。


「その人がルシナの言ってた人?」


ん?誰だ?

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