第72話 ルシナの目的

精霊と会話する俺に、仰天するリリスとルシナ。


「精霊と意思疎通とは。一体……ヤマト。お前は……。」


「ヤ、ヤマト。君は何者……。」


俺は俺で別のことで驚いていた。


「ス、スカートめくりに同意してくれる精霊って……。」


「「そこかい!!」」


2人同時に、ツッコミを入れてきた。


「おぉ。ハモッた!」


そんな俺の様子に二人は頭を抱えていた。


「はぁ。もう……。」


実際、ルシナとリリスは、かなり驚いていた。


(そ、そんなに凄いことなのかな。まぁ、俺も初体感だけど。)


ルシナはかなり長い時間呆気に取られていたが、仕切り直しが必要と感じたのか、咳払いをした。


「コホン……。聞きたいことは山ほどあるけど。今は契約中だ。じゃ、じゃあ魔法陣の上に立ってくれるかな?ヤマト……君。」


そう言うと、自ら魔法陣に足を踏み入れるルシナ。


「ヤマトで良いですよ。」


「ワシもリリスで良い。」


「じゃあ。ヤマト、リリス。ボクのこともルシナで良い。」


「わかりました。ルシナ。」


「了解したのじゃ。ルシナ。」


「じゃあ、はじめるよ?二人とも。」


俺は精霊に対しての恐怖心が大分和らいだが何だか嫌だった。得体が知れない……。


「あの……今さら言うのも何ですが、やっぱり止めることって可能です?」


ズっこけるルシナ。 


おぉぉ……。コントのノリ!?


「な、何言ってるの!?いま拒否したら、精霊に殺されるよ!?」


「え!?まじで……!?」


「もう……問答無用。契約はしてもらうよ。」


「なんて勝手な……。」


「勝手じゃないし!だから、ボクは「やるか?」って聞いたのに……。」


何だか必死なルシナ。


結構、良い人なのかも知れない。


これ以上、迷惑かけるのは悪いな。


「わかったよ……やりますよ……。」


俺は観念することにした。


「はぁ……何で面倒くさそうに言うかな……。」


ルシナは呆れていた。


リリスは苦笑いを浮かべ、俺にテレパシーで話しかけてくる。


(大丈夫じゃよヤマト。やましいことは何もない。普通に儀式をしてやれ。)


(わかったよ……。)


まぁ、リリスが大丈夫というのだから大丈夫なのだろう……。


特段やましいこともないので、俺は覚悟を決めて大人しく魔法陣の中に入った。


俺が魔法陣に入ると、ルシナはリリスに顔を向けて魔法陣に入るように促す。


「ワシもか?」


すると、ルシナはコクリと頷く。


「貴女も信用できない」


「やれやれ……わかったわい」


リリスは首をすくめて、リリスも魔法陣の上に乗った。


ブン!!


「うわ!?」


俺とリリスが魔法陣に入った途端、魔法陣は著しく輝きだした。


エルフは指を交差させたものを胸の前においた。


「了解してくれてありがとう。それでは誓いの儀式を始めるよ?」


どうも、この指を交差させたポーズは人族で言うお辞儀のようなものらしい。


独特なポーズだ。


「は、はい……どうぞ。」


俺は精霊が気になってチラリと目を横にやると、透明な「何か」はじっと見つめている。その様子が気味が悪くて仕方ない……。


早く終ってくれ……。これ、本当に精霊なの?こえーよ。


「ヤマト。リリス。ボクがこれから質問することに正直に答えると誓いを立てて。」


「……はい、誓います。」


「誓うのじゃ。」


すると、ルシアはにこりと笑うと質問をはじめた。


「この森に居る間は、エルフの敵でないと誓えますか?」


「……はい、誓います。」


「誓うのじゃ。」


「この森に居るのはエルフに敵対したり。森を傷つける目的ではないと誓えますか?」


「はい、誓います。」


「誓うのじゃ。」


「この森に居る目的は何ですか?」


「修行です。」


「修行なのじゃ。」


「…………最後に、ボクは美人だと思いますか?」


「え?……は、はい思います。」


「お、思うのじゃ。」


「はい……終了です」


「これだけ?」


最後のは良く分からなかったが……。


「うん。ボクが知りたいことはこれだけだ。十分だよ」


そういうと、ルシナは片腕を上げた。


シュン……。


魔法陣が跡形もなく消え、そして透明な「何か」はゆらりと揺れると霧散していった。


「き、消えた……。」


ルシナは、先ほどまでの尖った雰囲気から一変して柔らかい雰囲気になった。


「これでもし誓いと違うことがあったら、魔法契約違反になる。」


「なるほど……。あの宣誓に嘘はつけないってことですね。」


「そう。ありがとう。これで安心して喋れるよボク。」


「そこまでしないと信用できないものなの?」


俺は少し不満を漏らした。


「他族は信用できない。」


「あらま……はっきりとまぁ……。」


俺は人間不信なエルフに呆れた。


まぁ、いいけどね。魔法契約が終わったからもう信用できるでしょ?


「ごめんね。エルフ族は過去に何度も騙されているから……。」


ルシナは本当に申し訳ないような顔をして謝ってきた。おとぎ話に出てくるような美人に謝られると、一気に怒りが覚めてくる。我ながらチョロいもんだ。美人は正義だ。仕方ない……。


「わかった。いろいろ過去にあったんですね。もう信用できるでしょ?僕らは誓いをしたわけだから。」


「うん。信用できる。ありがとう。」


「さて……どうしよう。俺たちは、ここで修行をしているんだけど。ルシナは何をしに?」


「うん。ボクの今回の任務は、この魔獣の森の山火事の調査さ。」


「山火事……?」


「そう。その調査に軍の中でも力のあるボクが選ばれたのさ。」


俺は、その回答に軽い違和感を覚えた。

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