第69話 ボクッ娘エルフ

エルフはひどく動揺しているように見える。


どうも、俺が子供ってところにビックリしているようだ。


(確かに、こんな森の中に子供が居たら驚くわな……。)


俺は警戒させないように声をかけた。


「説明させて欲しいのです。まずは弓をおろしてください。」


リリスも口を出す。


「ふむ、ワシらは敵ではない。安心せぇ。」


暗闇の中からリリスも顔を出す。彼女は実体化しているのでエルフにも見えるはずだ。


「ど、同族!?エルフがなぜここに?」


なんか盛大に勘違いしていないか?リリスをエルフとか言い出したぞ。でも、言われてみればリリスはエルフっぽい感じはする外見だ。耳なんかも若干だが尖っている。


そういや、俺の耳も若干だが尖っている。


龍人族ってそうなの?


俺はエルフに話しかけることにした。


「僕らは敵じゃないです。こちらこそ聞きたいくらいです。なぜエルフが1人で魔獣の森に?」


魔獣の森に冒険者エルフが居てもおかしくは無い。だが、1人でこの森にいることに違和感は感じる。


「……怪しい子供だ。親子?ではないようね。何者なの?!」


「説明させて下さい。本当に敵じゃないんです。ほら?!武器なんか持っていないでしょう?」


俺は両手を上げたままクルリと1回転してみせた。


「……。」


エルフはどうしようか迷っているようだ。


「エルフっていうのは、丸腰の子供に弓を向けたまま会話する習慣とかあるのですか?」


俺がそういうと、エルフは「仕方ない……。」といった感じで弓を背中に戻した。


そして、エルフ女が近づいてくる。


顏立ちが分かってくる。月明かりにも分かる美形だ。少し幼い顔立ちで、唇の色とかも赤くふっくらしている。目元はキリリとしていて、意思の強さを感じる。瞳は、まるで明るい月のような美しい金色の瞳だ。


エルフって美しいっていうけど、噂どおりだ……。


これは、びっくりだわ……絵心あったら描きたい美しさだ。


い、いかん。何か言わないと……。


「り、理解してくれてありがとうございます。エルフさん。」


「随分しっかりとした口調の子供だね。それに整った顔だ。君もエルフなのかい?見たことない顔だけど……。」


エルフは身長175cmくらいだろうか……。


かなりの高さに見える。実際、この世界の平均くらいだろうが、体の線が細いせいかスーパーモデルのようだ。


胸は……うんが。エルフらしいと言えばらしい!少し小さめ……。


「な、何か失礼なこと考えていない?キミ?」


「いえ!そんなことは……!あなたはスーパーモデルみたいですね。」


(び、びっくりした……勘が良くない?このエルフ。)


(あほ……エルフは皆が勘が鋭いわい。)


そういうと、エルフはキョトンとした顔になる。


「スーパー……?」


「あ、いえ……。こちらの話です。僕の名前は、ヤマト・ドラギニス。こっちはリリス。あ!ちなみに俺もリリスもエルフじゃないです。」


リリスはさらに前に出て自分の姿を晒した。月明かりにリリスが浮き上がる。


「リリスじゃ。」


エルフはリリスを見て驚いている。


「こ……こんな美しい女性がいるのか……。確かに、よく見るとエルフではないな、耳の形が微妙に違う。それに君も。」


どうやらエルフから見てもリリスは綺麗なようだ。


たしかにリリスは見た目は美しい。神話に出てくる女神みたく綺麗だよな……。


「ボクの名前はルシナ。エルフ軍の飛竜偵察部隊よ。」


「ぼ、ボクッ娘!?」


「え?」


俺が過剰に反応するので、驚くエルフ。


「いや……こっちの話です。」


俺は慌てて話をそらそうとする。


エルフは顔をしかめた。そして俺が傷つく一言を呟く。


「変な子……。」


「う!?」


(早々に変人認定されそうじゃが……。)


(うるせー。)


俺はエルフに質問することにした。


「ところで軍って言ってましたが?」


「そうだよ。ボクはエルフの軍属さ。」


どこか誇らしげにエルフは応えた。どうやら、軍に所属していることはエルフのプライドらしい……。


「なんで軍の人が、この森に?」


「ブルーサファイア王国の領土は、この魔獣の森までよ?おかしくないでしょ?」


「(あ……そういうことね)」


そうだった、忘れていたが……。この魔獣の森は、エルフ国であるブルーサファイア王国と、人族の国であるラスタリス王国の火種の種なのだ。


なぜなら、


お互いが魔獣の森は「自国の領土」と、主張しているからだ。


そのため、ルシナの主張は人族からいわせると荒唐無稽となる。魔獣の森は人族の領土という主張だからだ。


(そこには触れないほうが良さそうだな。)


(そうじゃな……スルーしろ。ヤマト。)


(ラジャー!)


「随分遠くから来たんですね。」


話題をズラす俺。しかし、ルシナは首を傾げた。


「そうでもないけど?」


いや……もの凄い無理があるだろう。距離的に1月以上はかかるはずだ。


「なに?疑ってるの?」


「いえ……別に……。」


「……。」


無言になる俺達……


(な、なんか気まずいな……。)


「あの……。」


俺が話の流れを変えようとしたときだった。


ルシアというエルフは、溜息をついた。


「はぁ……色々疑っているよね。ボクもそうだ。これだと話が進まない……。」


「え?はぁ……まぁそうですかね?」


俺がそういうと、エルフは指を一本立てて提案のポーズを取った。


「魔法契約を交わさないか?」


「契約?」


俺とリリスは顔を見合わせた。

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