第66話 スキル訓練
リリスと散々言い合った。
リリスの主張としては、
「魔獣の森に留まって捕食をするべし!」ということだ。
確かにスキル吸収と他ステータスの上昇は、目を見張るものがある。ここで取れるものを取らないのは勿体ないらしい。
だが、俺は猛烈に反対した。
「嫌ぁぁぁ!絶対に嫌ぁぁぁ!!」
「ええい!うるさいわい!オヌシの今後のためじゃ!」
結局、リリスは譲らなかった。
言っていることは正論なため、俺も渋々了承するしかなかった……。
森に留まると言っても、危険になれば森から出る。
要はギリギリまで修行するということだ。
ちなみに今後は拠点も移動する。
森の奥へ奥へと進みながら、より強力な魔獣を倒してスキルをゲットする作戦だ。
いずれにしても、数年単位で森に居る可能性が高い……。大変なことになってしまったものだ。
「くそぅ……早く森から出たい。」
リリスは苦笑いをするしか無かった。
「オヌシためじゃ!我慢じゃ!」
「俺は我慢と努力が一番嫌いなんだよ!」
「ダメ人間か!」
などと、さんざん悪態をついたが……。
ここは前向きに考えるしかあるまい……。
リリスのいうとおり、スキルとステータスを上げまくれば当然生存率が上がる。
それは結果として、俺の身の安全を保証をするものだ。
しかし、ここで数年過ごすにしても物資が足りない。とくに服だ。
それ以外は、この森で調達可能なのだが……。
服だけはどうしても手に入らない。
「もう、この服。臭くて……。いくら川で洗濯しても限界があるんだよ。」
「だからと言って宿場町まで戻れば、両親に発見される可能性があるぞ?」
「う……。」
「いずれ、この森でも冒険者に出会うじゃろう。そやつと交渉して服を手にいれるか、買ってきてもらう他あるまい。」
「そんなこと可能なのかなぁ……。出会ったときには、物言わぬ冒険者ってこともあり得るぜ?」
この森は危険過ぎる。生半可な冒険者では生きて帰れない。
「まぁ、服については後ほど考えよう。それよりも、スキルじゃ!捕食じゃ!」
リリスは、やる気まんまんだ。
はっきり言って、こいつは俺の生活レベルなど気にしていない。健康であればオッケー!というタイプだ。
「はぁ……。」
服のことは諦めた俺は、ボロボロの服と靴を履いて、やるからには一生懸命修行してやることにした。
「ところで、何でクラーベアーは捕食できなかったんだろう。」
デビルウルフは出来た。しかし、2回目に遭遇したクローベアーはできなかったのだ。
「おそらく、捕食する相手に得るスキルやステータスが無いと発動せんのじゃろう。」
「つまり……。」
「格下は相手にしないのじゃ。」
「好き嫌い激しいな、あのシャークヘッド。」
俺はシャークヘッドが出てきた自分の胸のあたりをさする。あれが出て来たなどと信じられない。
「これも予測じゃがな。」
次の日……。
俺はまずは覚えたスキルをちゃんと習得することにした。
ゲールクロー『疾風爪』にしても、まったく使えない状態だ。これは勿体ない……。
さらに、新しいスキル『瞬転』についても発動はした。
試してみたのだが。
シュン!と……。距離が50cmくらいしか移動できなかった。
「あれ……?」
「ヤマト、チョビっと瞬間移動したぞ?」
俺とリリスは顔を見合わせた。
何回か発動して気がついたのだが、瞬間移動でも何でもなく。ただの”超高速移動”だった。早過ぎて瞬間移動に感じるのだ。だから途中に障害物があると、普通に衝突する。
しかし、これを極めればデビルウルフみたく自由自在に高速移動できる。これは絶対体得したい。
ということで、今日は2つのスキルを重点的に練習している。
これから魔獣と戦うのにもスキルを体得したほうが楽に倒せるはずだからだ。
やり方?やり方は簡単だ、ゲールクローは木の前に立って“ひたすら撃つ”。
瞬転については、ただ発動を繰り返して距離を伸ばす。
そして今は、ゲールクローの練習中。
大木に向かって。
「“撃つべし” “撃つべし” “撃つべし” “撃つべし”!」
しかし、 ヘロヘロ〜っと光る爪が発生。それが木まで3mも届かないという情けないレベル。
届かないで消えてしまう。シャボン玉のほうが、3m届くよね?
しかし、今日の俺は気合が違った。
「“撃つべし” “撃つべし” “撃つべし” “撃つべし”!」と。
何回も何回も撃った。
100回くらい“撃った”だろうか。その辺りから、形がはっきりしてきて、木に届くようになってきた。
(お?ちょっと変わった?)
練習が形になってくると、俄然やる気が出てくる……そういうものだ。
幸いにも体力はバカみたいにあるので、俺はひたすら撃ち続けた。
200回くらいから、木に当たると「パシ!」って音がしてきた。
陽も暮れて、体力的にはまだまだあるんだが……。俺は気疲れした。
(はぁ。ここらで終了とするか……)
動きが止まった俺はリリスは不思議そうに見つめる。
「どうした?」
「疲れた……止めた。」
俺は木が背を向けて、洞窟に戻ることにした。
「根気がないのぅ……。まぁ良いが……。」
「うるせー!見てただけのくせに!」
「夕飯は、クローベアーのステーキか?」
「もちろん!」
2頭もクローベアーを倒したので、食料には困らない。
デビルウルフは焼いて食ってみたのだが、食えたものじゃなかった。
「あれは俺の選択ミスだ……。」
「本当に食うとは思わなかったわい。」
そうなのだ、せっかくデビルウルフを倒したのに食えたものではなかった。そのせいで、俺は味に飢えていた。
さすがに1週間同じ肉というのも味気ない。
「俺1週間近くクローべアーだけなんだけど……。」
「明日メシをいい加減調達するのじゃ。」
「動物いねーじゃん……この辺さ。どうせ明日も見つからないよ。」
俺が拗ねているとリリスが笑った。
「ふふふ。」
「なんだよ、気持ちわりーな!何笑ってんだよ……。」
「安心しろ、川があるじゃろ?あそこで魚を取ろう。」
「でも、いつも失敗するじゃん。」
「新しい漁法を見つけたのじゃ!」
「まじで?でかした!リリス!」
明日の楽しみが出来たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます