第65話 新たなスキルと称号

森に絶叫が、1時間きっかり響き渡る。

「はぁ、はぁ、はあ、ぜぇぜぇ……。」


1時間に及ぶ苦痛に耐え、汗びっしょりな俺。


リリスは、ワクワク!と言った顔をしている。


「ほれ!スキルを確認してみぃ?早く見てみたいのじゃ!」


「お、お前なぁ……。少しは休ませろ。」


リリスは興味津々という感じだ。人の苦労も知らないで……。


「ステータスを出すだけじゃ。休みながらで良いから見せるのじゃ!」


「はぁ。お前は良いよな、見てるだけだもんな。」


「まあ、見てるだけだから暇じゃったな。」


「暇!?いま暇って言った?」


「ああ、言ったが?」


まるで悪びれることなく俺に答えるリリス。


美少女じゃなかったら、殴っているところだ。


(この女……。視覚化していなければ、その大きい胸を揉んでやるんだが!こんな風に!)


俺はリリスの胸に手を伸ばして掴む動作をした。


むにゅ………。


「きゃ……!」


リリスが女性らしい声を上げた。


「あれ?おかしいな、感触があるぞ?」


むにゅ……。むにゅ…………。


「っあん!………………」


「たしかに、感触があるぞ?あれ?」


俺は顏が青ざめていくのを感じた。


リリスの顏を見ると、頬を赤くしてこちらを見ている。そして、段々と鬼の形相になっていく。


「も、もしかして実体化のほうだった……。ごめ……、視覚化だと……。」


「き………きさま!そこになおれーーー!!」


「まてー!!誤解だ!」

そのあと、俺はリリスにボコボコに殴られたた……。


ちなみに、およそ2000歳の女性の胸を揉んだ感触?


うん、普通に柔らかかったよ。


「お前、なんで実体化しているんだよ。」


「デビルウルフを倒したあたりからしてたわい!」


リリスの視覚化と、実体化は俺からすると曖昧だ。


他人からは見えるが、俺からすると常に見えているからだ。うっすら透明なんだけど、最近やけに濃く見える。見えるのは俺だけ限定だろうけど、とにかく見分けにくい。


しかし、あの胸は柔らかかったな。


「あ!いやらしい顔をしとる!このマセガキが!」


「し、仕方ないだろう!俺は前世では35歳だったんだから。」


「うぬぅ。今まで誰にも触らせなかったのに、迂闊じゃったわ。」


誰にも……?


確かにリリスは、前世では未婚で死んでいる。


もしかして……。


そこまで考えて、俺は頭から振り払う。今はこっちに集中しないと!


「ほ、捕食が済んだわけだけど。ステータスどうなったんだろう。」


「うむ。気になるぞヤマト……。出してみろ。」


「確かに……出ろ!ステータス」


目の前に現れたステータスは、リリスには見えない。


(捕食メッセージは見えるのに、不思議だよな。)


そう思いつつ、俺はリリスにステータスを読み上げる。


【ヤマト・ドラギニス】

『種族』龍人族・龍神族・精霊族(根源精霊)の混血。

『職業』魔法使い見習い。

『状態』良好。

『魔法Lv』身体強化Lv2。

『スキル』自己ステータス表示。捕食。ゲールクロー(疾風)。瞬転。

『称号』三つの龍を宿す者。捕食者。龍人王への無礼者。


<アラート>

スキル:瞬転(しゅんてん)を取得しました


何か増えてる……………。


「あの……リリス?これって……?」


「じゃな、やはり捕食するとスキルを身につけるんじゃな。」


「やっぱり?」


「うむ。今回の捕食ではっきりした。それは間違いないのぅ。」


「瞬転(しゅんてん)っていうのは、あのデビルウルフが使っていた高速移動スキルだな。」


「あれは相当に有用じゃ。」


「この称号『龍人王への無礼者』ってのは……。」


「さっき、ワシの胸を揉んだからじゃろう。」


リリスは少し怒ったようにそういった。


つーか、そうか。リリスは元々 龍人族の王様なんだよな。


無礼者って……。これ、どういう効果あるの?


「それに、おぬしのステータス。おそらく……とんでもないことになってるぞ。」


「そりゃ見りゃわかるって……。」


「いや、このステータスに表現されていないところがじゃよ。」


「身体基礎能力のところ?」


「ああ、今回の捕食で筋力、体力、瞬発力も相当に上がったはずじゃ。それに魔力も……。」


「魔力は昔からあるから、実感無いんだよな。」


「計測してみないとな……。基準じゃが、火魔法で言うと……。低位魔法5発で、中位魔法1発分じゃ。」


「ふーん。」


「おそらく、オヌシなら中位魔法100発は余裕でいけるじゃろう。」


「ひゃ……ひゃっぱつ……?」


「そりゃおかしい。中位魔法だって、Bランク魔法使いでも何回も発射できないと聞いたことがある、それを100発撃てる魔法使いなんて聞いたことないぜ?」


「龍人の戦士でも、5発がやっとじゃろう……。」


「なんで、俺そんなに魔力バカになっているんだ?」


「もともと、オヌシの魔力はすさまじい。捕食でどれくらい上がっているのやら……。属性が身体強化しかないのが惜しいのぅ。」


「うん……。俺も火魔法とか使ってみたいよ。」


「まぁ、かなりレベルアップしているのは間違いないじゃろう。」


「ということは、もう龍人の里を目指していいの?」


ステータスがそこまで上がっているのであれば、ここに留まる理由が見当たらない……。もう出発の時がきたのだろうか?


「……。」


「リリス?」


しかしリリスは迷っているらしい。


「言いにくいがのぅ……。このまま捕食を繰り返すか、森を抜けて龍人の里を目指すか迷っておる。」


「な、なんで?」


「捕食が謎過ぎているんじゃ……。」


「まぁ、謎スキルだよな。」


「うむ……。もし……もしじゃよ?捕食は幼年期限定じゃったらどうする?」


「え?」


俺はリリスの言っている意味が分からず問い返す。


「もし、もしじゃよ?この捕食という特殊技能は、オヌシが幼年期の間だけの特典じゃったらどうする?ということを質問しておる。」


「……だとすると今は、成長する千載一遇のチャンスだよな。」


「そう!そうなんじゃ!わかってくれるか!」


リリスは顔を、パァーっと明るくした。


俺は嫌な予感がした。


おそらく青ざめていたと思う。


「まじか……おい。お前まさか……」


「うむ……、数年は森で捕食するんじゃ!それがオヌシのためになる!」


「絶対いやだーーー!!!」

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