第64話 再び捕食

ドサ……ドサ……。


俺の投石で、6頭を仕留めた。


残り4頭。


うまくいった……。


目くらまし&投石で遠隔攻撃。


習ったばかりの硬化魔法と、俺の魔力が無ければ出来ない芸当だった。


「思ったより、俺の投石が通ったな……。防御力が無い?」


「良い作戦じゃった。あのような、ふざけた魔法はオヌシしか使えん。」


「はは……、良かったろ?」


「まさか、砂掛け攻撃とは……。」


「公園で、モブオナと砂場で遊んでいるときを思い出してさ。」


元気でやってるかな……。モブオナ……。


最後に殴ってしまった想い出しかないけど……。


「子供の遊びからヒントとは……。」


俺は話しながらもウルフ達から視線を逸らさない。


俺は足元をチラリと見た。集めた石礫はまだ残っている。あの攻撃はまだ使える。


(勝ち筋が見えた。)と、思い。俺は足元の石を拾う。


「よし!じゃあ、もういっか……!」


そのとき、デビルウルフ達に変化が出た。


ウルフ達の体が光ったと思ったら、デビルウルフの速度が目に見えて早くなったのだ。


……ていうか、早くなったというより3メートルくらい瞬間移動するようになった。


シュン!シュン!! 


3mの範囲限定で超音速で動く。


一瞬止まるんだが、すぐ音速移動するので目まぐるしい。


「こ、これは……。」


俺はリリスをチラリとみる。俺の頭では理解出来ない。


「また魔獣がスキルを………。見たこともないスキルじゃ。」


リリスが驚くところを見ると、初めて見るスキルらしい。


しかし、現実に持っている。


何故、この森の魔獣はスキル持ちが多いのだろう。魔獣の森がおかしいのか。それとも、それが常識なのか……。


俺は焦った。


「くそ!もう1回だ!」


再び、砂掛け作戦を実行。


しかし、試したものの。


それ以降まったく当たらない………。


降ってくる土砂を何なく避けるし、瞬間移動するから石礫の狙いがつけられない。


「やばいぞリリス。デビルウルフの奴ら。むしろ体力が整ってきている?」


「スキルを使っているから、体力はほとんど使っておらんのじゃろう。」


スキルの良いところは魔力を使わないところだ。それに体力もほとんど消耗しない。そのメリットをデビルウルフは目いっぱいに使っている。


「さ、策をくれ。ヤバイかも……リリス。」


「ならぬ、これは訓練じゃ。オヌシで考え実行するのだ。」


「ケチー!人でなし!」


「もともと人族ではないわ。」


「じゃあ龍でなし?」


「たわけ。しかし、どーするんじゃ?ヤマト。考えるのじゃ。魔法や体力もありあまるお前は有利なんじゃぞ。考えよ」


「わ、分かってるよ。」


(しかし参ったな、デビルウルフのあの能力は厄介だ。まったく当たらないし、あれで攻撃されたら避ける自信がない。)


考えろ、考えないで戦っても次がない……。常に考えろ。


デビルウルフの動きに何か解決口があるかも知れない。


俺が石礫を投げるとき、奴らは必ず俺の手の位置を確認している…………。


そこから予測しているんだ。


つまり……手を出さなければ、出すタイミングと向きがわからないはずだ。


「よし……。ならば……。」


俺は両手を後ろに組んだ。


「これならば、見えないだろう?」


それを見たウルフ達は、動きを止めてこちらを注視している。やはり手をみていたか。


「うつけ……。どう攻撃するのじゃ」


「ふふふ、まぁ見てろ!ぬん」


俺は両足に魔力を込めた。


「なるほど……。両手で石を投げ、両足で蹴るのか。しかし、出来るか?そんなこと

…。」


リリスは驚いていた。しかし、俺は魔力操作にはある程度自信をもっていた。


4つを同時にやるわけではない。同時に見せるだけだ。高速で交互に発射すればできるはず!


「よし!開始!」


まず、両手から普通に今までどおり二匹のウルフを狙う。


すると、ウルフは手の位置から推測して、超速度で瞬間移動回避。


ここまでは予測通りだ。


「よし!そこだ!」


その瞬間、足元に置いておいた石を蹴る!


ドン!ドン!


「ギャン!」


「ギャオン!」


2頭同時にウルフ直撃!仕留めた!!


リリスが感心したような声をあげる。


「おぉぉ。なんちゅー器用な奴じゃ。」


「ふふふ。いくぞー!」


ふはははは!!作戦勝ちだ。残りもやるぞ!


「あれ?………」


と思ったら、残り二匹は颯爽と逃亡していた。


もはや遠くに行ってしまっていた。


「やるのぅ……、敵わないと判断したのじゃろう」


「引き際も鮮やかだな……。純粋にすげーなデビルウルフ。」


俺もデビルウルフの狩りのセンスに賞賛を送った。


「さて……。」


デビルウルフ8頭の死骸に近づいた。


もちろん、あれを確かめるためだ。


すると、それはすぐに反応した。


「!」


「!」


クローベアーのときのように、ウルフの体から黒い球体が浮かび上がる。


そして、それに呼応するように俺の胸からシャークヘッドが飛び出してきた。


【魔のコアを確認しました、捕食しますか】

【捕食する】【捕食しない】


でた!選択肢!やっぱり出た!!


リリスも2回目とはいえ、目を見張っている。俺は恐る恐るリリスに確認をする。


「や、やるしかないよね、リリス?」


「無論じゃ!やるのじゃ」


「簡単に言ってくれるよ……。捕食したときの激痛が怖ぇーよー。やらなきゃダメなの?」


「腹をくくれヤマト。生き残るためじゃ。」


「でも捕食している間、無防備よ?俺ってさ。」


「大丈夫じゃ。この騒ぎで動物どころか魔物も寄ってきていないわ。」


「……くそ!どうにでもなれ!」


俺はやけっぱちになり、【捕食する】を選択した。


……そして地獄が始まった。


「ギャーー!」

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