第57話 捕食スキル

俺とリリスはステータスを覗き込み。


唖然としていた……。


多分、二人そろって間抜けな表情をしている。


「リリス、お前面白い顔しているぞ……、」


「オヌシもな……。」


くだらない会話を繰り広げつつ。


改めてステータスをリリスに説明する。


ステータスはツッコミどころ満載だ。


「状態が飢餓から良好に変わっている……、それにスキルを取得してる。」


「…………むぅ。」


リリスは真剣な顔をして俺のステータスを覗き込んでいる。


そして何か気がついたかのような表情をした。


「リリス?何か気がついたのか?」


「うむ、これは推測じゃがな。」


「うん、推測でいいから、考えを聞かせてくれ。」


「もしかするとじゃ。今回の捕食で相手のスキルを奪った。いや、吸収した…。そういうことなのかも知れん。」


「スキルを吸収?」


「そうじゃ。」


「スキル吸収とかって、そんなこと出来るものなのか?」


「出来るわけあるまい。そんなことが出来たら世の中変わってしまう。」


「そんな大げさか?」


「そうじゃ、スキルとは種族や血に由来することが多いが、絶対的優位性を持つ才能の一つじゃ。それを譲ったり、吸収できる性質のものではないのじゃ。」


しかし、現実に俺はスキルを身につけてしまっている……。


「……ということは、スキルを奪えるのはチートスキルみたいなものか補食って。」


「……チートの言葉の意味がワシには分からないが、現段階では異常能力じゃ。ちなみに誤解のないように言っておくが、相手のスキルを奪う「ロベリー『強奪』」というスキルは、あるにはある。」


「なんだ………あるじゃん。」


「最後まで聞け、スキル ロベリーには発動条件が何重も、そして強い代償が必要じゃ。それに超レアスキルじゃ。世界に1人しか確認されておらん。」


その世界に一人って奴が気になるな……。それはあとで聞こう……。


「補食はその強奪ってスキルに近いと?」


「いや、補食はまったく違う。さっきも言ったが強奪スキルは代償スキルじゃ。何かを差し出して、その代わりにスキルを奪える……。」


俺は代償だの何なので頭が混乱してきた。


「ちょ、ちょっと待て。簡単に言ってくれ。頭が追いつかない」


「うむ。つまり……。何のリスクなしにオヌシはスキルを吸収したことになる。普通は何か代償を払う。そういうことじゃ。」


「いや、すげー痛かったぞ……。」


「そんなものじゃないわい。代償スキルを発動すると、寿命が削れたり、視力を失ったりする。」


「そ、そうなんか。たしかに結果的に俺が失ったものは何もない。」


「魔獣の命以外はな………。メッセージにあったが、魔のコアが対象なのかもしれん。」


「どういうこと?」


「つまり、補食できる相手は魔物限定なのかも知れん………。それにしても、とんでもない能力じゃ。」


「そ、それってすごいことだよな?」


「異常じゃ。スキルは先天的に身につけているか、厳しい訓練を得て偶然的に得るものじゃ、それを奪うなどと………。」


「どうした?リリス?」


そこまで言って、リリスはハッとした表情に変わった。顎に手を当てて考えるような仕草をしている。


「…………まさかカリアースも?」


シーン………。


リリスは、その後黙り込んでしまった。カリアースも補食持ちではないかとリリスは思い至ったらしい。


俺としては、空腹がなくなったので大満足だ。


ただ、あの激痛は勘弁して欲しい……。


相手のスキルを吸収できるということは、どうも異常なことらしい。


うーん……、考えてもわからない。


とにかく俺は捕食により、ゲールクロー『疾風爪』というスキルをゲットした。それは間違いなさそうだ。


(ん?でも変じゃないか?)


考え込むリリスに俺は話しかけた。


「ゲールクロー『疾風爪』って、熊が使っていたあれだよな?捕食したからゲットしたんだよな。」


「うむ、恐らくそうじゃ。」


「でもさ、変じゃないか?」


「何がじゃ?」


「魔人を倒したときには、さっきみたいなメッセージ……つまり捕食が出来なかったぞ?」


「たしかに……!」


「……魔物や魔獣限定なのかな?」


「わからんな……。これ以上は推測の域を出ん……。」


「俺って何者になったんだろうな。」


「………魔人に対して何故捕食出来なかったか?これについてはある推測が出来るが。」


「?」


「前回と今回で大きく違いがあるのじゃ。それは、今回はヤマト…。オヌシが自力で魔獣を倒したのじゃ。」


「いや……、前回だって俺が倒しただろ?」


「違う、あれはオヌシというより「無意識」に「何か」操られるように倒しておる。」


「あ、たしかに。」


「ワシの見立てでは、オヌシの中に二つ力があるように見えるのじゃ。一つは何か強い存在の力。そしてもう一つは純粋なオヌシの力じゃ。」


「俺の中に二つ……。」


「これは推測じゃが、オヌシの力で魔物を倒すと補食ができる。と思っておる。」


「……。」


「まあ、いま考えても仕方あるまい。」


「あれ?」


「どうした?」


「右拳が痛くない……。」


「何じゃと!?」


俺は砕けたはずの右拳を、グーパーして見た。


不思議なことに痛くも何とも無い。


「全然痛くない。」


「状態異常回復は、傷をもリセットするのか……。」


「すげーな……。超便利。」


「オヌシ。軽いのぅ。これがどんなに凄まじいことか……。」


「いや、俺もすごいとは思うけど。もう麻痺してきているっていうか……。」


「そうじゃな……。」


……………整理すると……………………


■俺は捕食スキルを持った。

■捕食すると相手のスキル吸収。

■捕食すると状態異常が傷を含めて全回復する。

■俺の中に別の力がある?(推測)

■その別の力で倒した魔族は捕食できない?(推測)


ということらしい………。うん、謎が謎を呼ぶね!

リリスは諦めたように口を開く。


「とりあえず、もう夜になった。ここにいるのは危険じゃ。このクローベアーを拠点に持ち帰ろう。色々調べたい。」


「了解!どんな味か楽しみだな!」


「食うのか!食ったら大変なことになるぞ……。」

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