第56話 メッセージ
光る選択肢が現れた。
【魔のコアを確認しました、捕食しますか?】
【する】or【しない】
俺とリリスは顔を見合わせる。
「な、何だよ……。これ。」
「空中に文字が浮かんでおる。」
「リリスにも見える?」
「ああ。見える。見えるぞ。」
俺達は、そのメッセージを見たまま固まっていた。
まるでゲームのメッセージボードのようだ。現実世界で再現すると、こんな感じなのだな……。
そんなことを思っていると、クローベアーに異変を感じる。
「リリス!クローベアーの死体から何か出てくる!」
「こ、今度は何じゃい!?」
クローベアーの背中から黒い球体が飛び出してきた。
直径10cmほどの球体だ。
「クローベアーから何か飛び出してきよった!」
「見れば判るって!」
球体はフワフワと空中に浮いている。
何だが、オーブを思い出す。
リリスは驚いたのと同時に興味津々な顔をしていた。まじまじと球体を観察している。
「あ、あんまり近づくなよ。リリス。」
「いや、珍しくてのぅ。何じゃろう。これ……。」
この現象に俺は俺で、心臓が飛び出るかと思うくらい驚いていた。
「このメッセージもそうだけど、不思議現象が連発で眩暈がしそうだよ。」
フワフワと俺の前に、3Dホログラムのように選択肢が浮かんでいる。
「なんじゃ?これは鑑定魔法とも違うぞ。」
「ホログラムみたいだな。」
リリスは首を傾げる。
「ホロ……それはオヌシのいた世界のものか?」
「うん…。あとで説明する……。それに選択を聞いてきてるぞ?」
良く見れば、チカチカと選択肢のところが光っている。結構、親切設計だ。
「捕食をする、しないか?聞いたことがないぞい。」
「どうする?……なんかイエス ノー聞いてきてるが……。」
俺とリリスは、迷った末に結論を導きだした。
「危険じゃが……。今のオヌシは体力も少ない。この先、食料を手に入る可能性が低く、このままだと餓死まっしぐらじゃ。捕食というくらいだから、何かプラスに働くはず。賭けてみよう。」
俺も同意した。
「俺もそう思う。もはや、動物が現れても俺は狩る体力も魔力もない。」
「うむ。オヌシのスキルじゃろう。何かメリットになるはずじゃ。」
「では……。やるぞ………。選択するにしてみる……。」
「うむ……。」
俺は【する】の選択肢に右手の人差し指をもっていくと、トン、と押してみた。
すると、クローベアーの黒い球が動きだした。
「く、黒い球が動きだした!」
「まるで風船のようじゃ。」
黒い球がシャークヘッドの口に前までくると……。
バクッ!
と、シャークヘッドは大きな口をあけて食べた。
「た、食べた……。」
そして、シャークヘッドはクローベアーの黒い球を飲み干す仕草をする。
ゴクン………。
「あ、飲み込んだ。」
「芸が細かいのぅ……。」
すると、シャークヘッドが俺の胸に戻ってくる………。
「うわわわ!戻ってくるぞ。」
俺が慌てるのと関係なく、シャークヘッドが俺の胸に吸い込まれていった。
すると、俺の体に変化が現れた。
「!?」
体中に激痛が急激に発生したのだ。
「ぐ、ぐああああ!!」
「ヤマト!?」
「ギャァァ!!」
リリスも慌てた。予想外にマイナスに働いたようであった。
「選択を間違えたか!!」
リリスは自分の思慮浅さに後悔した。
「ぐ、ぐぐぐ!ギギギギ。」
歯を食いしばって痛みに耐えるが、気を失いそうになる。
それくらい、痛い!痛すぎる!
なんつーか、耐えられない痛みっていうの?例えるなら、歯の神経を触られるときの感覚?それの100倍痛い!痛みが全身をかけめぐる。
「ぐ…。ぎぎ……。こ、これは、耐えられる痛みじゃねー!まじで死ぬ!ぐあああ!」
「ヤマト!しっかりするんじゃ!」
「そ、そんなこと言っても………。ぐあああ。痛い痛い!痛いって!」
「……意外と大丈夫そうに見えるぞい……。」
・
・
・
…………1時間経過…………
・
・
・
この状態が1時間も続いた。
「はぁ、はぁはぁはぁ。ぜぇぜぇぜぇ。」
「ヤマト!大丈夫か?!」
「し、死ぬかと思った…………。」
1時間くらい経ってから、急激に痛みがなくなった。
今はまったくだ、何だったのだろう?
「今は何ともないのか?」
「うん、全然平気。むしろ調子がいい。」
「ちょ、調子がいい?あれほど苦しんでいてか?」
「うん、不思議なんだけど………。空腹感がなくなっているんだ。あんなに、お腹が空いてすきまくっていたのに……。」
「むぅ………。捕食………。」
リリスは何か答えを導こうとしているかのように悩んでいた。
「リリス、それに体中から力がみなぎる。」
「ふむぅ?」
「うん、全然。このまま3日は寝ずにいけそう。」
「………ステータスを表示してみぃ?」
「わかった。」
【ヤマト・ドラギニス】
『種族』龍人族・龍神族・精霊族(根源精霊)の混血。
『職業』魔法使い見習い。
『状態』良好。
『魔法Lv』身体強化Lv2。
『スキル』自己ステータス表示。捕食。ゲールクロー(疾風)。
『称号』三つの龍を宿す者。捕食者。
<アラート>
スキル:捕食。ゲールクロー『疾風爪』を取得しました!
称号 :捕食者を取得しました!
俺とリリスは、ステータスを見て顔を見合わせた。
「な…何これ……。」
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